第938話、わたくし、聖なる夜に、奇跡も魔法も有ったのですの♡

ちょい悪令嬢「──メリーメリー、クリスマース!!!」




メリーさん太「………………………は?」




ちょい悪令嬢「おや、メリーさん、どうしたのですか? ──さあ、ご一緒に!」


メリーさん太「え、あ、あの──」


ちょい悪令嬢「メリーメリー、ハッピー、クリスマース♡♡♡」




メリーさん太「いや、クリスマスはもう終わったし、前回ちゃんと【記念座談会】をやっただろうが⁉」




ちょい悪令嬢「──そんなこと、どうでもいいんですよ!」




メリーさん太「ええーっ⁉」




ちょい悪令嬢「クリスマスなんて、自分自身がクリスマスと思えば、その瞬間がクリスマスになるのです!」


メリーさん太「……あ、うん。確かにあたしたち、年中ミニスカサンタコスをさせられているしな」


ちょい悪令嬢「そうです、その長らくの苦労が、ついに報われたのです! 神は我らのことを、見ていてくださったのです!」


メリーさん太「か、神って?」


ちょい悪令嬢「クリスマスプレゼントを頂いたのですよ! ──それもこの上も無く、最高の!」


メリーさん太「……な、何だと?」




ちょい悪令嬢「およそ二ヶ月ほど前、老衰と痴呆の急激な悪化によって緊急入院した、本作の作者の父親が、何といきなり快復したのです!」




メリーさん太「──なっ⁉」




ちょい悪令嬢「信じられません、もはや会話もろくにできない有り様だったというのに、ほぼ元通りと言ってもいい状態に戻るとは!」


メリーさん太「まさか! 肉体的な衰弱はともかく、精神的な痴呆が、快復するなんてことがあり得るのか⁉」


ちょい悪令嬢「ええ、実は本作の作者自身もほとんどあきらめかけていたのですが、急にここ一週間ほど会話が明瞭になり始めて、しかもいきなり父親自身が、『早く退院したい』とか言い出したのですよ!」


メリーさん太「退院て、確か『要介護レベル』が、かなり高めに判定されていたんじゃ無かったっけ?」


ちょい悪令嬢「ええ、上から二番目の、『要介護4レベル』です」


メリーさん太「それじゃ、退院──すなわち、『自宅療養』なんて、到底無理だろ⁉」




ちょい悪令嬢「それが、主治医の先生直々にていただいたところ、やはり順調に快復しており、少々条件付きではあるものの、退院は十分可能とのことでした」




メリーさん太「──ホントかよ⁉」




ちょい悪令嬢「いやあ、やはり真面目に頑張っていれば、こうして素敵なクリスマスプレゼントを頂けるほど、神様は見ているんですねえ」


メリーさん太「……頑張っているって、父親本人では無く、本作の作者のことか? あいつが一体、何をしたって言うんだ?」


ちょい悪令嬢「何言っているんですか? まさにこの【座談会】ですよ」


メリーさん太「へ?」




ちょい悪令嬢「こんな非常事態だというのに、この二ヶ月近くもの間、連載をほとんどとぎらせなかったではありませんか?」




メリーさん太「うっ、た、確かに………………………いやいやいや、ちょっと待て! それってむしろ、本来作者自身が介護すべきだった父親を、病院で預かってもらっているからこそ、小説作成の時間がいつもよりも多くとれただけじゃ無いのか⁉」




ちょい悪令嬢「失礼な、まさか本作の作者が、父親のことを病院に任せきりにして、自分のほうは遊びほうけていたとでも思っているのですか?」


メリーさん太「……違うのかよ?」




ちょい悪令嬢「基本的にほとんど毎日病院に面会に行って、必要な日常品の不足分を買い足したり、洗濯物があったら家に持ち帰って洗ったりして、大体これだけでその日の午後が完全に潰れます」




メリーさん太「え、洗濯なんて、病院でしてくれないの?」


ちょい悪令嬢「その場合、一回につき七百円ほど、料金がかかります」


メリーさん太「──高っ! それだと自分でやったほうがいいよな⁉」




ちょい悪令嬢「もちろん午前中においても、場合によっては父親が完全に前後不覚の状態になってもいいように、実家に関する『権利関係』を徹底的に調査するとともに、『在宅介護』を行う場合もちゃんと想定して、あらかじめその仕組みのすべてを完璧に研究しており、今回急に退院が決まったというのに、別に慌てる必要は何も無かったりするのです!」




メリーさん太「家に関する権利関係って、何だよ?」


ちょい悪令嬢「特に、実家の土地と家屋における、『登記』関係ですね」


メリーさん太「はあ? 登記って……」




ちょい悪令嬢「歳の離れた姉はとっくに他家に嫁いでいるので、何かあれば本作の作者が実家を引き継ぐことになるのですが、それには『財産目録』を事前に作成しておく必要があり、そのためにも登記簿を調べて、現状との『差異』の確認や、特に相続に必要な『地番』や『家屋番号』と言うものを、把握しておかなければならないのです」




メリーさん太「……何だよその、地番や家屋番号って?」


ちょい悪令嬢「言ってみれば、土地や家の『固有番号』のようなものであり、現時点で最も正確なものが『登記簿』に記載されているのですよ」


メリーさん太「へえ、そんなものが有ったのかよ」


ちょい悪令嬢「それが調べて正解でした! 何と、登記簿上の『誤り』を見つけたのです!」


メリーさん太「ええっ、それって大丈夫なの⁉」


ちょい悪令嬢「そんなに大したことでは無く、少々費用はかかりますが、数日で修正可能です。──しかし、父親にもしものことがあった後で発覚していたら、相続関係等において、とんでもなく面倒になるところでしたよ!」


メリーさん太「……へえ、ちゃんとやることはやっているんだな? ──それで、もう一つの『在宅介護の研究』ってのは、何なんだ? そもそも父親は入院時においては少なくとも数ヶ月間ほどは、ずっと入院させておく必要が有ったんだろう?」


ちょい悪令嬢「いやだなあ、これぞ本作の作者最大のモットーである、『リスク管理』の実践ですよ!」


メリーさん太「リスク管理、って?」




ちょい悪令嬢「事実、たった今メリーさんがおっしゃったように、数ヶ月ほど入院を続けるはずだった父親の容態が急に快復して、突然在宅介護に切り替わることになりましたけど、果たしてまったく準備をしていなかった場合、本作の作者はこうしてのんきに、小説を作成することなんてできたでしょうね?」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「どうです? 政治や経済や国防というものは、常に『最悪の事態』を想定して行うべきだと言う、本作の作者の言葉は嘘では無かったし、本人もちゃんと自ら実践していたことが、今回如実に証明されたでしょう?」




メリーさん太「……まあ、今回の場合、『最悪の事態』と言うよりも、『思わぬ僥倖』と言うべきだけど、本来とは想定外の事態が勃発したということには、変わりは無いよな」


ちょい悪令嬢「──このように、常に父親の介護を優先して考えて、現在のことどころか将来の予測不能なことに対してまでも、万全の備えを怠ることの無かった本作の作者こそ、『親孝行の体現者』と申しても、過言では無いでしょう♫」


メリーさん太「親孝行は結構なことだけど、午前から午後までのすべてを、完全に親の介護の実践や将来の準備のために使っていて、小説の作成なんかは、いつやっているんだよ?」


ちょい悪令嬢「それはもちろん、、ですわ」


メリーさん太「はあ?」




ちょい悪令嬢「毎日親との面会を終えて帰宅したら、食事と風呂とアニメ鑑賞等を行った後で、6時か7時頃に就寝し、真夜中の0時頃に起床して、それから朝食の時間に至るまで、全力で小説づくりを行っているのです」




メリーさん太「──本作の作者は、親孝行であるだけでは無く、もはや『Web小説家の鑑』だな⁉」




ちょい悪令嬢「以前もこの【座談会】で述べましたが、自分の力を過信したり、他者とのコミュニケーションを排除してひきこもったりせずに、地域社会の力を借りて、自分自身もしっかりと勉強し、常に将来のリスクに注意し続ければ、年老いた親の介護であろうが十分やりこなした上で、Web小説作成やアニメ鑑賞等の『自分の時間』もちゃんと確保できますので、皆様もどうぞ臆すること無く、親御さんの介護等に是非ともチャレンジしてみてくださいませ♡」













ちょい悪令嬢「──ほんと、神様はおられたのですね、心から感謝いたしますわ、メリークリスマス!」


メリーさん太「……いや、確かに作者の父親が快復したのは、結構な話だけど、別に絶対にあり得ない話でも無いし、神様と言うのは、少々オーバーなのでは?」


ちょい悪令嬢「それでは、言い直しましょうか?」


メリーさん太「言い直すって、どんなふうに?」




ちょい悪令嬢「『奇跡も、魔法も、あるん○よ!』」




メリーさん太「──やかましい!」




ちょい悪令嬢「冗談はともかくとして、わたくし痴呆とは、『アイデンティティ的な死』だと思っておりますの」




メリーさん太「……アイデンティティ的な、死、って?」




ちょい悪令嬢「痴呆がどんどんと悪化して、自分の子供どころか、自分自身が誰かさえもわからなくなり、ろくにコミュニケーションがとれない状態となれば、ある意味『これまでの自分であることの死』を迎えたとも言えて、もはや作者にとっては『己の父親』では無く、単なる『物理的な介護の対象』でしかなくなるわけですよ」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「そういう意味では、以前通りの父親との生活をすっかりあきらめていたのですが、まさかここに来てほぼ以前通りのレベルに快復するなんて! 特にちゃんと『意思表示』してくれるだけでも、『介護』においてそんなに苦労は無くなるので、もう手放しで万々歳です!」




メリーさん太「……うんまあ、コミュニケーションがほとんどとれなくなったら、確かに人と人との『関係上での死』も同然だし、それがいきなり快復して以前とほぼ変わらないくらい意思疎通できるようになったと言うのなら、神様に感謝してもし足りないだろうな」




ちょい悪令嬢「そういうわけで、まさしくこれぞ『神様のくれたチャンス』と心得て、これからは全力で『親孝行』をしたいかと存じますので、もしも小説の作成等に影響がございました場合、どうぞご容赦のほどよろしくお願いいたしますわ♡」

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