第887話、わたくし、『東京ガチャ』に当たったところで、『苦労の量』は変わらないと思いますの⁉(前編)
ちょい悪令嬢「……ったく、今回の事件ほど、自分の至らなさを痛感したことはありませんよ」
メリーさん太「──おい、のっけからどうした⁉ あんたが自己反省だと? ………それに、『今回の事件』て?」
ちょい悪令嬢「先日の痛快極まる『正義が勝って悪が滅びる』衆議院選挙の結果発表と時を同じくして勃発した、『某鉄道事件』ですよ」
メリーさん太「よりによって、それかよ⁉ 大丈夫なのか、そんな危ないネタを取り上げたりして⁉」
ちょい悪令嬢「大丈夫です、何よりも本作の作者自身が、己の考え方を心から反省し、読者の皆様に『的確極まるアドバイス』を行う内容となっておりますので、問題となり得る発言なぞ皆無かと思われます」
メリーさん太「いやまずは、その『的確極まるアドバイス』とやらが、いまいち信用できないのだが?」
ちょい悪令嬢「それでは、某事件が発生する以前に考案していた、(すでに没となった)『的確極まるアドバイス』のほうを述べてみましょうか?」
メリーさん太「そうだな、とにかく言ってみろ」
ちょい悪令嬢「『若者は一度は東京に行け』とか言われているけど、このスマホ&ネット全盛時代においては、『情報』を始めとして、もはや東京と田舎とではそれ程『差』は無いから、むしろ『デメリット』ばかりの東京に行って苦労するよりは、田舎でのんびりと暮らしたほうが、十分『勝ち組』になれますよ♡──と言った内容でしたの」
メリーさん太「ほう、本作の作者ならではの『逆張りそのままな突飛さ』だけど、『一理』あると言えば言えないことも無いな?」
ちょい悪令嬢「……しかし、今回の某事件の子細を聞き及んで、考えを108度改めたわけでございます」
メリーさん太「180度って、つまり真反対だから、『田舎の若者は、一度くらいは東京に行ってみるべき』、と言うことか?」
ちょい悪令嬢「──そうです、それによってこそ、『東京暮らしの人たちの苦労』のほどを、思い知るべきなのです!」
メリーさん太「……あれ? 『東京に行って夢を叶えろ』とか、『東京でしかできない貴重な体験をしろ』とか言った、話じゃ無いの?」
ちょい悪令嬢「それに関しては、現時点においては、東京以外の田舎のほうでも、ほとんど実現可能ですしね」
メリーさん太「ううむ、たとえそう言われても、ほんの十数年前だったらまったく信じられなかったけど、確かに『情報』こそは、東京と田舎との垣根すら越える、『絶対的価値』を与え得るし、そしてそれを実現してくれるのが、どんなド田舎だろうが、東京どころか全世界のいかなる都市とも一瞬で繋いでくれる、『インターネット』なのであり、本当にどんな田舎にいようが、東京とまったく同じ『ライフスタイル』を送ることすらも、けして不可能じゃ無いからな」
ちょい悪令嬢「何せスマホさえ持っていれば、東京だろうがド田舎だろうが、まったく同時に『最新情報』を知ることができますし、更にはネットショッピング等を使いこなせば、大概の物は手に入りますしね」
メリーさん太「後は本人のセンス次第と言うことになるけど…………ここら辺でこそ、やはり東京の渋谷や原宿辺りと田舎の地方都市とでは、何らかの差異が出てしまい、その差は簡単には埋められないんじゃないのか?」
ちょい悪令嬢「それならそれで、構わないし、むしろ『望ましい』とも言えるのですよ!」
メリーさん太「はあ?」
ちょい悪令嬢「まずですねえ、どんな田舎であろうとも、ネットで最新のファッションセンスを取り入れようとしている若者の数は、けして少なくは無いと思われるのですが、するとどうなると思います?」
メリーさん太「……え、もしかしたら、東京とかの都会と変わらない、若者ファッションムーブメントが成立するとか?」
ちょい悪令嬢「いえいえ、先程あなた自身がおっしゃった通り、他の都市圏の『情報』を完璧にトレースすることなぞ、理論上不可能なのです」
メリーさん太「……つまり、田舎と都会の『
ちょい悪令嬢「と申しますか、『差異』と言っても、『格差』では無く、あくまでも『区別』なのです」
メリーさん太「へ?」
ちょい悪令嬢「各地方都市の『ファッションリーダー』を中心にして、各個人がお互いに影響し合い、ライバル同士で新しい『情報』を貪欲に取り入れて競い合っていくことによって、総体としてどんどんとファッションセンスが磨かれていって、けして都会のトレンドの『猿真似』でも『劣化コピー』でも無い、その地方の若者『独自』のファッション文化が生まれつつあるのですよ!」
メリーさん太「……なるほど、それはあり得るかも知れないな」
ちょい悪令嬢「確かに日本は『東京一極集中』によって大発展を遂げてきましたが、昨今の『情報の全国画一化』によって、地方が独自の発展を遂げ始めたのは、むしろ『健全な在り方』とも言えるのでは無いでしょうか?」
メリーさん太「それぞれの地方が活性化すれば、当然のごとく、日本全体の発展にも貢献するしな」
ちょい悪令嬢「地域によっては、外国の『情報』を独自にダイレクトに取り入れて、下手すると東京以上の発展を見せたりもしてね♫」
メリーさん太「……ああ、北海道、新潟、神奈川、北部九州、それに何と言っても沖縄あたりだと、大いにあり得る話だよな」
ちょい悪令嬢「──と言うわけで、現在においては、大都会に憧れがちな若い世代の皆様におかれましては、『情報的』にも『物質的』にも、わざわざ東京に出ていく必要なぞ無く、それぞれにちゃんと『メリット』の多い、地方都市で暮らし続けるべきだという結論に達したのです」
メリーさん太「……う〜ん、某ド田舎と東京の中枢部とを、両方共に経験している本作の作者ならではの、説得力の有るお言葉だよなあ」
ちょい悪令嬢「しかも『京都』という、大都会と田舎との『中間レベル』すらも知っているので、真に客観的な
メリーさん太「そうすると、やはり『もはや若者は東京に行く必要は無い』と言う結論になるわけか?」
ちょい悪令嬢「いえ、実は本作の作者にしては、うかつにも『見落とした』ことが有りましたの。──そして、それを気づかせてくれたのが他でも無く、『某鉄道事件』というわけなのです」
メリーさん太「『情報的』にも『物質的』にも、今や東京と劣らぬようになった、地方ライフに関して、『見落としていた』ことって?」
ちょい悪令嬢「──東京への『憧れ』や『コンプレックス』と言った、人の『感情』あるいは『幻想』ですよ!」
メリーさん太「感情?………………………それに、幻想だと?」
ちょい悪令嬢「……残念ながら、そこら辺のところは、現在においても何ら変わっていなかったのです」
メリーさん太「そうか、『東京幻想』、か……」
ちょい悪令嬢「まさしく、『メディアの弊害』ってやつですよ。殊更東京の──特に、『若者文化』の有り様を、いかにも『これぞ流行の最先端!』といった感じで全国に垂れ流すものだから、たとえ各地方もそれなりに発展を遂げていようとも、昔ながらの『東京幻想』は、いまだくすぶり続けているのです」
メリーさん太「まあ、あれだけTVのニュースや情報バラエティやドラマとかで、東京ならではの『世界トップクラス』の若者文化の有り様をアピールしているんだから、田舎の若者たちの『憧れ』を無くすことは不可能だよな」
ちょい悪令嬢「──最近における、その最たるものが、他ならぬ『ハロウィン』なのですよ」
メリーさん太「おっ、ちゃんと話が、今回の『
ちょい悪令嬢「……何を今更、これって他でも無く、メリーさんご自身が初登場なされた、『初めてのハロウィン記念エピソード』にて、ちゃんと述べておいたではございませんか?」
メリーさん太「え? あの時って、『都市伝説』であるあたしの登場と、『異世界人の憑依現象』以外に、何か注目すべきトピックがあったっけ?」
ちょい悪令嬢「毎年『渋谷』で行われている日本最大規模のハロウィンイベントですけど、主な参加者は渋谷区民や東京都民どころか、そのほとんどが都外の周辺地域の住民だと、暴露してしまったではないですか☆」
メリーさん太「あ」
(※後編に続きます)
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