第818話、わたくし、パラリンピックの開会式は、全人類が見るべきだと思いますの♡

ちょい悪令嬢「──いやあ良かったですね、『東京パラリンピック2020』の開会式!」




メリーさん太「うん、これに関しては国の内外を問わず、諸手を挙げての大絶賛だったよな」




ちょい悪令嬢「やはり、『JOC』──ひいては日本国は、『やればできる子』だったんですね!」


メリーさん太「何よりも今回は、『テーマ』を統一していたのが良かったな。しかも、『私たちには翼がある』だっけ? 『パラリンピック』自体の理念とも合致していたし、むちゃくちゃ感動ものだったよな!」


ちょい悪令嬢「──そうなのです! 最大のポイントは、『パラリンピックだからこそ可能であった』ことなのです!」


メリーさん太「……へ? な、何だよ、『パラリンピックだからこそ可能であった』、って?」




ちょい悪令嬢「本作の作者にとっての最重要のモットーは言うまでも無く、『表現の自由の絶対堅持』であり、どのような『対象物』であっても、創作の『題材モチーフ』にするのを否定することなぞ、断じて許すつもりは無いのですが、この世には様々な『社会規範』というものが存在し、しかもそれは年々厳しくなって行くばかりであって、どんどん創作に対する表現規制が幅をきかせて行っております。──その中において特に力を入れているのは言うまでも無く、『ハンデキャップに関する表現規制』なのでございます!」




メリーさん太「──ああっ、そうか、そういうことか⁉」


ちょい悪令嬢「もちろんこれは非常にデリケートな問題ですので、一つ間違えば国際的な大問題ともなりかねませんから、扱いに慎重になるのは十分理解できるのですが、何から何まで一緒くたに『臭いものに蓋をする』というやり方には、どうしても賛同できないのですよ」


メリーさん太「……と、言うと?」




ちょい悪令嬢「日本においては歴史的に、主に『大道芸』と呼ばれるジャンルの中に、ハンデキャップの方々を文字通り『見世物』にしてきた伝統があるのです」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「もちろんこれは、日本の文化史における『負の側面』であるのに間違いありませんが、だからといって『全面的に否定する』ことが必ずしも正しいと言えるのでしょうか? ──事実、いまだ人権意識や互助システムの乏しかった時代においては、『見世物興行』くらいしか、ハンディキャップの方々が生きていく術が無かったのですよ? しかも『大道芸』といえども、立派な『プロによる芸』なのです。彼らの興行も長い歴史の中で、ひとかどの『芸術』として昇華されていったことは、今回の『パラリンピック開会式』をご覧になれば、一目瞭然でしょう?」




メリーさん太「……ああ、そればっかりは否定できねえな。今回の開会式の基本演出ベースは間違いなく『前衛劇』だったが、普段のいわゆる『マイナーさ』はすっかり影を潜めて、国内どころか国際的にも十分通用する、一大エンターテインメントに昇華されていたよな」




ちょい悪令嬢「それはもちろん、今回の舞台が『パラリンピックの開会式』という、『ハンディキャップの方々が主役』の催しであり、どのような演目を行おうが、世界的に『容認される』ことになるという、『甘々な立ち位置』にあり、更には先程も申しましたが、『しっかりしたテーマ』に基づいてすべてが統一されていたことも、大いに貢献しておりましたが、わたくしといたしましては何よりも、『前向き』であったことこそが、最大のポイントかと思っておりますの」




メリーさん太「前向き、って?」


ちょい悪令嬢「実はこれこそが、本作の作者が『表現者』として、今回の『パラリンピック開会式』に対して完全に『負け』を認めた、最大の理由でもあるのです」


メリーさん太「──ま、負けを認めたって、あの『唯我独尊』そのものの作者がか⁉」




ちょい悪令嬢「まず何と言っても、『表現ジャンル』として完全に劣っております。単なる文字情報ONLYの小説と、今回の様々な表現手法の集合体である『パラリンピック開会式』とは、最初から勝負にならないでしょう。──だがしかし、それよりも完膚なきまで本作の作者を叩きのめしたのは、『パラリンピック開会式』が自分と同じことを述べながらも、圧倒的に『前向き』であったことなのでございます!」




メリーさん太「『同じこと』、だと?」




ちょい悪令嬢「ほら、以前本作において、『LGBT』や『フェミニズム』や『ヘイト条例』等をテーマにした折に、『差別は誰の身にも存在している。人生は差別との闘いの連続だ。だから闘い続けている限りは差別は問題にならない。自分は差別されているとわめき立てているやつらは、人生において闘うことをやめた負け犬に過ぎないのだ』と、言っていることの是非はともかくとして、かなり『ネガティブ』なことを申していたではありませんか? ──実は今回の『パラリンピック開会式』における『コンセプト演劇ドラマ』では、この『差別』を『ハンデ』に言い換えて、基本的に同じことを語りながらも、この上なく『前向きポジティブ』に昇華してくださったのです!」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「ここで試しに、以前わたくしが『差別』について語ったことを、すべて『ハンデ』に言い換えてみますと、以下のようになるでしょう。




 ──この世の誰にも、『ハンデ』は存在している。


 それはけして目に見えるものに限らないが、人生においては、ずっと『ハンデ』を背負い続けなくてはならない。


 人によっては、自らの『ハンデ』の重さに、挫けそうにもなるだろう。


 だが、『ハンデ』を背負っているのは──人生を闘い続けているのは、あなただけでは無いのだ。


 挫けてしまっては、そこでおしまいである。


 間違ってはならない。


 もはや『ハンデ』は、有って当たり前のものなのであり、


 誰もが『ハンデ』を背負いながらも、なおも『夢』を見て、その実現に邁進しているのだ。




 ──あなたの夢は、何ですか?




 もしかしたら、ハンデがあるからと言って、夢を見ることをあきらめていませんか?


 たとえハンデがあろうとも、誰だって『夢』を見る権利があるのですよ?


 むしろあなたは、自ら夢を見ることを、あきらめていませんか?


 ──ハンデを、努力をしないことの、『言い訳』にしていませんか?


 もう一度、言います。


 この世の誰でも、ハンデを抱えているのです。


 それでも、誰もが自分の夢を実現しようと、闘い続けているのです。


 ……今回のパラリンピックに参加している選手の一人に、若くして大事故に遭われて、身体の自由をほとんど奪われて、一度は人生をあきらめた方がおられました。


 それでも彼は、辛いリハビリの日々の中で、再び希望を抱き始めました。


 なぜなら、ある障害者用の競技との出会いが、彼を変えたのです。


 彼は再び、闘い始めました。


 努力に努力に努力を重ねていきました。


 今度こそ彼は、あきらめませんでした。


 なぜなら彼は、明確なる『テーマ』を手に入れたのですから。


テーマ』を手に入れた途端、彼にとってハンデは、『言い訳』では無くなりました。


 そして彼は、オリンピック出場という、栄光を手に入れるとともに、


 もはや不可能になったかと思われていた、幼い頃からの『真に人の役に立つ職業に就きたい』という願いすらも、実現できたのです!(ビバ、ピ○ポくん♡)




 もう一度、言います。




 何度でも何度でも、言います。




 誰にでも、『ハンデ』はあります。


 人生とは、自分のハンデを認め、ハンデと共に生きていくことなのです。


 自分だけの『夢』を叶えるために、飽くなき闘いを続けなければならないのです。




 ──さあ、あなたも、あなたの夢を叶えるために、ハンデなんかに負けずに闘い続けましょう!」













メリーさん太「……おお、確かにこれって、この前本作において『差別』について語ったことと、内容的にはほとんど同じだけど、こうして『差別』を『ハンデ』に言い換えるだけで、真反対と言っていいほど『前向き』になってしまったじゃないか⁉」




ちょい悪令嬢「もう、本当にね、まさしく本作の作者の完敗ですよ」




メリーさん太「そんなに今回の『東京パラリンピック2020の開会式』って、素晴らしかったのか? こりゃあ一人でも多くの人に、『見逃し配信』を視聴なされることをお勧めしないとな!」




ちょい悪令嬢「もちろん大いに推奨したいところですが、実際にご覧になってどのように感じるかは、人それぞれでしょうね。当然何も感じない方もおられるのではないですか? ──でも、それでも一人でも多くの人に、何かの『切っ掛け』になることを願って、今回の作品を作成したといった次第なのですよ」




メリーさん太「巷には、『パラリンピックを児童に強制的に観戦させるのは好ましくない』とか言っている輩もいるけど、本作の作者自身今回の開会式を見ることによって、完全に手のひらを返して『絶賛派』になったくらいだからな。多感な子供たちにこそ、実際にその目で確かめることによって、何かを感じてもらいたいものだよな」

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