第812話、わたくし、一次選考通過作品『三つ子の魂いつまでも』の解説を行いますの(後編)

ちょい悪令嬢「……もしもあなたがおっしゃる通り、『前世返り』が『多重人格』の一種だと見なすことができるのなら、異世界人にとっての『(すでに死亡している日本人への)前世返り』とも言える『異世界転生』も、『多重人格』に当てはまるのではないですか?」


メリーさん太「──異世界人視点に立脚すれば、『現代日本からの異世界転生』も、『多重人格』の一種になるだと⁉………………いや、待てよ。これって、まさか⁉」




ちょい悪令嬢「そうです、本作における『最重要セオリー』の一つである、『異世界転生』なんて、あくまでも生粋の異世界人が、『自分は現代日本人の生まれ変わりなのだ』などと言う、『妄想』に取り憑かれるだけのこと──そのものです」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「しかも何と、これまた『逆に言うと』、現代日本における普通の『多重人格』も、本人の『もっと理想的な人間になりたい』とか、『過去の有名武将みたいになりたい』とか、それこそ『自分が異世界の勇者様の生まれ変わりだったらいいのに……』とか言った、『妄想』や『願望』が高じて、『多重人格化』を発症していたりするわけですよwww」




メリーさん太「──なっ⁉ 『異世界転生』のみならず、『多重人格』すらも、ただの『妄想』に過ぎないだと⁉」


ちょい悪令嬢「言うなれば、今の自分以外の何者かに──すなわち、『真に理想的な自分』になりたいという、『妄想や願望』が人一倍強いだけなのです」


メリーさん太「……妄想や願望が、人一倍強いだけだと? そ、それって──」




ちょい悪令嬢「そう、まさにこれぞ、『集合的無意識とのアクセス』を実現するための、絶対必要条件でございます!」




メリーさん太「──ッ」




ちょい悪令嬢「すごいですねえ、『多重人格者』こそ、『集合的無意識とのアクセス』を果たして、自分の脳みそを量子コンピュータそのままに超計算処理させて、『別の人格』を創り出していたとはねえ。──こんなこと、本作の作者でも考えつきませんでしたよ」




メリーさん太「いやいや、この『三つ子の魂いつまでも』という作品て、本作の作者が創ったんだろうが⁉ ──って、待てよ? どうして『多重人格』を実現すれば、量子コンピュータそのままの超計算能力を獲得することができるんだ?」


ちょい悪令嬢「実はですねえ、この作品における集合的無意識って、非常に現実的なことにも、『夢の世界』だったりするのですよ」


メリーさん太「は?………………………夢こそが集合的無意識って、つまり、夢を見るだけで『前世返り』すらも含んだ、『多重人格化』を実現してしまうってことか⁉」


ちょい悪令嬢「人一倍『理想の自分になりたい願望や妄想が強い』人って、夢の中でまさにその『理想の人物』となって、その人生を丸ごとたった一夜の間で追体験することによって、目が覚めてからも脳みそにその記憶が完璧に刷り込まれていて、まさしく『別人格』として行動し始めるといった寸法なのです」


メリーさん太「単に夢で見ただけで、別人格になれるだと? 夢は夢に過ぎず、そんなものは本人の脳みそによって生み出されたものでしかなく、けして本物の『人格』なんかじゃ無いだろうが⁉」




ちょい悪令嬢「だったらお伺いしますが、もしもあなたの言う『本物の前世返り』が実現して、織田信長そのものになれたとして、それが本当に『本物の織田信長』であることを、どうやって証明するのですか?」




メリーさん太「──うっ⁉」


ちょい悪令嬢「夢の中の信長が、本物かどうかなんて問題では無いのですよ。それが本人にとって『理想的な信長』であり、何よりも自分自身で『生み出した人格もの』であれば、それでいいのです」


メリーさん太「……自分自身で生み出した人格もの、だと? 夢の中で偶然に、信長の人生を追体験したんじゃ無かったのかよ?」


ちょい悪令嬢「以前も申しましたが、集合的無意識とアクセスをしただけで、何でも『完全な情報』を欲しいだけ手に入れることができるわけではありません。──なぜなら、集合的無意識に存在しているのは、あくまでも『情報の雛型テンプレート』に過ぎないのですから」


メリーさん太「あ、そういえば……」


ちょい悪令嬢「例えば『織田信長』で言えば、学校の教科書とかドラマとか小説とか漫画等とかで描かれているような、『みんなが知っている共通認識としての信長』レベルに過ぎず、それをどのように『自分にとっての理想的な織田信長』にするかは、夢を見ている本人次第なのですよ」


メリーさん太「ええっ⁉ と言うことは、それ以外の『異世界の勇者』にしろ、『人格の入れ替わりの相手として望ましい(可愛い♡)クラスメイトの女の子』にしろ、それこそ自分が勝手に妄想している『理想の自分』にしろ、本物かどうかなんか度外視して、自分自身で好き勝手にでっち上げているってことなのか⁉」


ちょい悪令嬢「はい、そうですが?」


メリーさん太「そうですがって、本物か偽物かは置いておくとしても、何で単なる個人に、そんなことが可能なんだ⁉ 過去の偉人でも異世界の勇者でも『理想の自分』になりたい放題になれて、しかも異世界においては『現代日本からの異世界転生』まで実現できるなんて、一体どういう仕組みメカニズムなんだよ⁉」




ちょい悪令嬢「だからそれが、『集合的無意識とのアクセス権』を得ると言うことであり、『人間量子コンピュータ』になると言うことなのですよ」




メリーさん太「なっ⁉」




ちょい悪令嬢「一応お断りしておきますが、例え『雛型テンプレ』に過ぎないとはいえ、集合的無意識に集まってくる、『織田信長』や『異世界の勇者』や『クラスメイトの女の子』等の情報は、すべてなのです。しかもそれを基に『集合的無意識という夢』を見た者が、自分の頭で産みだした『別人格』も、例えば『パラレルワールドの織田信長』が『パラレルワールド』の数だけ無限に存在し得るように、れっきとした『本物の織田信長』と言えるのであり、もはや当人の脳みそは『織田信長一人分の人生』を算出シミュレート可能なほどの、量子コンピュータそのものと化していると言えるでしょう」




メリーさん太「た、確かに、夢を見ている間のほんの一夜にして、織田信長の一生分の情報を算出シミュレートすることができるなんて、量子コンピュータ並みの脳みそと言っても過言じゃ無いだろうよ。──ホント、人間て『妄想力』や『願望』が強ければ、集合的無意識とのアクセスを果たしたり、自分自身の脳みそを量子コンピュータ化させたりと、まさしく『無限の可能性を秘めた存在』なんだなあ……」




ちょい悪令嬢「そりゃそうですよ、人間とは『考える葦』であり、『無限の欲望の塊』なのですからね。それが誰よりも顕著な者こそが最も高度な存在となり、人類の叡知の結晶である『集合的無意識』とアクセスを果たし、量子コンピュータ化するのも当然のことでしょう」




メリーさん太「つまり、この『三つ子の魂いつまでも』という作品の中で、ヒロインの別人格が『名探偵』や『オカルト探偵』になって、どんな怪事件でもまさしく『名推理』によって解決できるのは、『多重人格者』ゆえの、量子コンピュータ並みの計算能力によるものだったわけか?」




ちょい悪令嬢「ホント、すごいですよね。SF小説やラノベでお馴染みの『多重人格』を、量子論や集合的無意識論によって完璧に論理づけるだけでは無く、ミステリィ小説ならではの『名探偵による名推理』のメカニズムまで解明してしまうとは。これはもう、SFファンのみならず、ミステリィファンの皆様におかれましても、必見でございますわね♡」













メリーさん太「……出たよ、『自画自賛オチ』。──でもまあ、この内容だったら、重度のSFマニアの方なら一見の価値はあるかもよ? 短編なのでそれ程時間がかからないと思われますので、(またしても)騙されたと思って、お暇な時にでもご一読くださいませ☆」

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