第457話、わたくし、オキナワの『狼』少年、ですの。(その15)
「──いやいやいや、それって『ターミ○ーター』が過去の世界からタイムトラベルしてくるようなものじゃないか? そんなんでストーリーが成り立つのか⁉ あんただって、僕が一度も異世界転生をしていない時点で、どうして自分の国が僕の転生体らしい、『勇者ミハエル』に危害を加えられると断言できると言うんだよ?」
唐突に繰り出された、異世界から転生してきたオークの支離滅裂な台詞に、当然のごとく猛抗議する僕こと、那覇市在住の
……まあ、剣と魔法のファンタジーワールドから来たらしいから、普通に『未来予測』とかができる、大魔導士や巫女姫なんかがいるかも知れないけど、それをやったらSF的には、『ターミ○ーター』よりも『タイムパラドックス』の影響のほうを、無視できなくなってしまうだろうが?
『おや、どうやら納得がいかないようだが、実はこのことは、そちらの「第二次世界大戦中の軍艦の生まれ変わり」を自称するお嬢さんが、なぜだか前世紀末のアメリカ映画について詳しいこととも、密接に関連してくるんだぞ?』
へ?
……何それ。
自称『大和』が、『ターミ○ーター』とかいかにもメタっぽいことを言い出したのは、ただのネタじゃなかったのか?
『おいおい、しっかりしてくれよ? おまえが「異世界転生」して「勇者ミハエル」となったのも、そもそもこの
──ッ。
「な、何だよ? 異世界のオークや軍艦擬人化少女の妄言そのものの主張が、この僕にまで関わってくるって?」
『……「妄言」か、確かに、おまえにとってはそうかもな。何せ私やそこの娘がしつこく主張しているものの、おまえ自身にはあくまでも、「異世界の勇者」なんかに覚えは無いんだしな』
「ああ、もちろん」
『だが、先程からのおまえの言動を聞くに、何やら「断片的」ではあるが、「異世界の勇者としての記憶」がおぼろげにあるようなことも、ちらほらと言っていなかったか?』
あ。
「た、確かに! あれって一体、何だったんだろう⁉」
僕は異世界なんて、行ったことは無いはずなのに!
……それとも、こいつらの言っているように、自分自身が忘れているだけで、本当は異世界転生していたりするのか⁉
「まさか、『主人公が(作者にとって)都合のいいところだけ記憶喪失になっている』という、駄目な『なろう系』小説のパターンじゃないだろうな?」
『記憶喪失か、それでも間違ってはいないと思うが、どちらかと言うと、まさしく断片的な、「夢の記憶」みたいなものじゃないのか?』
──!
「それだああああああああああああああ!!!」
まさにずっとモヤモヤと僕の中でわだかまっていた違和感を、的確に指摘してくれたオークの一言に、思わず大声を上げてしまった。
そうだ、そうだよ、夢だよ!
確かな記憶では無いものの、あまりにもおぼろげな、あるはずの無い『断片的な異世界の思い出』が、あるように感じてしまうのは!
『……そんないかにも、「今こそ世界の真理に覚醒したぞ!」みたいな反応を返されても、困るんだけど、これってむしろ「基本中の基本」なんだぞ? ──つまり、「異世界転生などというものは、とどのつまりは夢のようなものに過ぎない」ということなのさ』
「はあ? 異世界転生が、夢に過ぎないって……」
『もしも本当に、異世界転生とか転移とかタイムトラベルなんてものを実現したとしても、「なろう系」Web小説やSF小説みたいに、「前の世界」のことなんか、いつまでも覚えているわけが無いんだ。
──‼
「本当に異世界や戦国時代なんかに行ってしまった場合、元いた現代日本のことなんて、『夢の記憶』のようなものでしかなくなるだって⁉」
『実際おまえ自身も、異世界における勇者としての記憶が、あたかも断片的な夢のようなものに過ぎないのだろう?』
「──うぐっ」
そ、そう言われて、みれば。
『別に恥じることは無いぞ? 「なろう系」主人公のような元ニート連中とは違って、まだ年端もいかない小学生でありながら、それだけ真剣に「現実世界を生きている」という証しなんだし、そもそも異世界転生なぞという文字通りの「夢物語」を、単なる夢としか認識できないのは、むしろ正常そのものじゃないか?』
……うん、そうだね。
あんたはつまり、こう言いたいわけなんだよね?
──異世界とか戦国時代に、転生やタイムトラベルをしておいて、「やったー! ついに積年の夢が叶った! 現代日本の先進的な知識と、神様からもらったチートスキルとで、チーレム三昧でウハウハだぜ!」とか、「……おまえもう、それって一種の『現実逃避』だろうが? どこまでも『現在目の前にある、自分自身の世界』から逃げれば、気が済むんだ?」とでも言いたくなる有り様だし、下手するとまさにその『チーレム』の構成メンバーである、『俺サマの嫁w』たちを全員引き連れて、現代日本へと『凱旋』して、過去に自分を蔑みいじめていた連中に対して、盛大に『ざまぁ』をしようとするなんて、どれだけ拗れているんだよ? そういうのは、異世界内でやるからまだ許されるのであって、現代日本に戻ってきて、現実にはあり得ないチートスキルを使ったり、エルフとか獣人とかの『人外』すら含んでいる、ハーレムメンバーを見せつけるなんて、もはや異世界転生物語でもファンタジーでも──下手すると、
……うんうん、その見解で、おそらく間違っていないと思うよ?
──だからって、そのままズバリ言わずに、もっとオブラートに包み込めや⁉
全方面にケンカを売って、無駄に敵を作ろうとするような言い方はよせ!
『……何かね、これまで詳しく丁寧に解説してやったというのに、まだ納得いかないのかね?』
「──僕が納得するかしないかの問題では無くて、異世界に行った記憶が夢を見たようなものに過ぎないとか言い出したら、そこで話が終わってしまうじゃないか⁉」
そんな僕の至極当然なる抗議の台詞に対して、その転生オーク隊長殿は、
絶対に言ってはならないことを、平然と口にした。
『実はな、異世界や戦国時代に行った「記憶」がどうしたとか言う以前に、異世界や戦国時代そのもの──つまりは、今目の前にある現実世界以外のありとあらゆる「別の可能性の世界」自体が、夢のようなものに過ぎないのだよ』
──ちょ、ちょっと⁉
この自称『異世界から来たオーク』ってば、いきなり自分自身を全否定しやがった!
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