第453話、わたくし、オキナワの『狼』少年、ですの。(その11)
……軍艦擬人化少女だったら、我が国における数千万人規模の、『コミー思想の洗脳状態』を、一気にすべて解除することができるだって?
突然自分のことをかつての戦艦『大和』の擬人化少女だと名乗った、見かけ上は10歳くらいの幼い女の子が、すでに日本人の約三割に対して施されている、異世界『中つ国』の『コミー思想の洗脳』を無効化することができるなどと言い出したものだから、思わず耳を疑ってしまった、僕こと『オキナワの少年』の
「ふふふ、異世界『中つ国』のオーク兵の現場指揮官とあろうお方が、そんなに驚かれる必要も無いでしょうが? 洗脳と申しても、こちらの世界のコミー国家あたりが行っているような、物理的な拷問まがいの行為すらも辞さない、人格改造そのままな『洗脳』とは違って、あなた方異世界人がこの国の方々に行った『異世界コミー思想のインストール』は、集合的無意識と常時アクセス状態にして、異世界のコミー思想を脳みそに常に刷り込み続けているようなものに過ぎず、言わば『リアルタイムに催眠術をかけ続けている』みたいなもので、私のような集合的無意識との『
……ああー、そうかあ。
この世界の『洗脳』が、文字通りに脳みそを洗い直すようにして、完全に人格をねじ曲げてしまうのに対して、集合的無意識とのアクセス方法のほうは、対象人物にずっと『夢』を見せているようなものに過ぎず、夢から覚めれば洗脳も解けてしまうというわけか。
『──いやいやいや、ちょっと待て! それってあくまでも「
いかにも納得がいかないといった面持ちでまくし立ててくる、異世界からの先遣隊の隊長オーク殿。
……うん、そう言われてみれば、確かにそうだな。
まあ僕自身は、いまだ『集合的無意識とのアクセス』とやら自体が、一体どういうものであるのか、良くわかっていないのだが。
「──どうしても何も、軍艦擬人化少女
『「……はい?」』
──あ、いけね。
驚きのあまり、ついうっかり、『中つ国』のオーク野郎なんかと(以下略
『な、何だその、「軍艦擬人化少女だから」、ってのは⁉』
「……あのですねえ、皆さんもはや『当たり前』のように思っていらっしゃるみたいですが、こんな小柄な人間の女の子に、第二次世界大戦時の軍艦の攻撃力や防御力を始めとする、様々なポテンシャルが詰め込まれているなんて、よほどの『論理的基盤』が存在していなければ、科学考証を重んじるSF作品では絶対に認められず、ある程度許容力のあるファンタジー作品でさえも、ほとんど見受けられないと思うんですけど、そこら辺のところは、どうなんですかねえ」
『「あ」』
──いけね。
驚きのあまり、ついうっかり、『中つ国』のオーク野郎なんかと(ry
──と、『天丼』は、いい加減このくらいにして、
……そうか、そうだよな。
もはや我が国(の特にオタク界隈)においては、女の子が軍艦の力を持っていても、別に驚きもしないという、『異常極まる状態』となってしまっているよな。
いや、本当に大丈夫か、日本人。
沖縄の人間としては、『基地問題』よりも、遙かに心配になってきたぞ?
何か最近では、軍艦擬人化少女が派手なスポーツカーに乗っていたり、あまつさえ本物の(鈴○)サーキットでレースクイーンになったりと、「もはやおまえ、軍艦じゃないだろう⁉」とでも、言いたくなるような状況となっているからな。
──あ、これって日本の『オリジナル』のほうのやつじゃなくて、大陸方面の『フォロワー』作品のほうだったっけ。
『……つまり、その「論理的基盤」、と言うのが?』
「そうです、集合的無意識との、『上位のアクセス権』なのです」
『──ッ』
「攻撃面においては、何も無い空間に突如として大砲や機関砲を現出させたり、防御面においては、小柄な女の子のサイズでありながら、必要に応じて軍艦そのものの質量を発揮させたりするためには、そもそも軍艦擬人化少女の肉体自体を、かのクトゥルフ神話で高名なる不定形暗黒生物の『ショゴス』によって構成させておいて、集合的無意識を介して自身の肉体や周囲の大気を始めとするあらゆる物質を、自由自在に
──なっ⁉
つまりそれって、軍艦擬人化少女なら、世界そのものすらも、改変できるってことなのか⁉
いやもちろん、一瞬にして数千万人規模の洗脳状態を解除することをなし得るなんて、ある意味世界の改変そのものとも言えるけれど……。
──しかしそうなると、僕としては、どうしても疑問に思わざるを得ないのであった。
「……どうしてなんだよ?」
「えっ、何がですか、提督」
「──だからどうしてそんなふうに、僕のことを提督と呼んだりして、まるで忠実なる家来か
そうなのである。
どうやら彼女は、第二次世界大戦時の出来事に関して、沖縄自体に何らかの負い目があるようだが、たかだか平成生まれの平凡なる一少年である僕に、こんなに親密に関わってくる必要は無いかと思われるのだ。
「何度も申していますように、あなたが異世界において『勇者ミハエル』であり、私自身もそのパーティメンバーだったから──と言うのでは、理由になりませんか?」
「……それは、時系列としては、逆だろ? あのオーク隊長の話だと、僕が勇者として異世界へ行ったことへの復讐として、この沖縄に乗り込んできたそうなんだから」
「この世界と異世界とでは、時間の流れに前後関係は無いので、時系列については、まったく考慮に入れなくてもいいのですけどね。………そもそも、オークの国である『中つ国』そのものが、すでに私たち勇者パーティによって、完全に滅ぼされているのですから」
──ちょっと、最後にこっそりと、下手したらすべての前提を覆しかねない、重大な話をつぶやいたりしないでよ⁉
「……ていうか、どうして君はわざわざ異世界に転生してまで、僕の勇者パーティに参加して、ずっとアシストをしてくれていたんだ?」
あまりにも執拗なる僕の疑問の言葉に、とうとう根負けしたかのように、その少女は大きくため息をつきながら、本日最大の『爆弾発言』を炸裂させた。
「だって当然ではないですか、提督こそがある意味、『沖縄そのもの』とも言えるのですから」
………………………へ?
「そうなのです、あなたとあなたのお母様こそが、現在沖縄内に在住なさっている、『琉球王家』本流の血を引かれる、最後のお方なのですよ」
──‼
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