第437話、わたくし、小説家なら、作品で語るべきだと思いますの!(後編)

ちょい悪令嬢「──どうです、これで前々回までのエピソードが、『某時事問題』とはまったく関係の無い、作者のオリジナル作品だということが、おわかりになられたでしょう?」




メリーさん太「……こええ、この作者が、心底こええ。どう考えても『某時事問題』をモチーフにしているくせに、屁理屈に屁理屈を重ねて、反論を完全に封殺しやがった。屁理屈を言わせれば、どこまで天才なんだよ⁉」


ちょい悪令嬢「すごい言われようですこと。……あのですねえ、別に前々回までのエピソードが、『某時事問題』をモチーフとした、何らかのイデオロギーが含まれた内容であったとしても、それはそれで別に問題は無いのですよ?」


メリーさん太「えっ、何その、いきなりのちゃぶ台返し的な、文字通りの前言撤回は⁉」




ちょい悪令嬢「そりゃあ、あれがすべてSNS等で表明した、『作者自身の個人的な意見』ならともかく、最初に申した通り、あくまでもフィクションに過ぎないWeb小説内の一エピソードなんですからね、誰からも文句を言われる筋合いは無いし、仮に特定の時事問題との関連性が感じられるところがあったとしても、たかが創作物にムキになって指摘したところで、誰からも相手にしてもらえず、馬鹿を見るだけなんですよ。だって前回この【座談会】において詳しく述べたように、どのような御指摘に対しても、すでに完璧に否定できる『理論武装』は済んでいるのですからね」




メリーさん太「……何と、あの前回冒頭での、『すべてはフィクションです』と言う決まり文句テンプレフレーズには、そんな意味が含まれていたわけなの?」


ちょい悪令嬢「意味と言うよりも、『決意』ですけどね」


メリーさん太「決意?」


ちょい悪令嬢「散々否定しておいて何ですが、本作の作者は別に、作品内で特定のイデオロギーを主張することを、頭ごなしに否定しているわけでは無いのです。──というかむしろ、己自身の主義主張を自信をもって行うのなら、SNSなんかよりも、己自身の小説の中でこそ行うべきだと、思っているくらいなのですよ」


メリーさん太「は? 小説の中で主義主張しろって…………まあ、確かにこの作者って、SNS上においては、自作の宣伝PR以外はしたことが無かったわよね」




ちょい悪令嬢「──つまりね、たとえWeb小説家であっても、いっぱしの創作者を自認するんだったら、SNSとかでごちゃごちゃ言わずに、『自分の作品で語れ』ってことなのよ」




メリーさん太「──‼」




ちょい悪令嬢「最近散々話題になっている、SNS上における各種の『扇動工作活動』なんて、もううんざりとは思いません? そもそもSNS上で『政治的意見』を述べること自体が、間違い無く『争いのもと』になるだけで、絶対に禁止すべき『誤り』でしかないのですよ。──もちろん、あくまでも『個人的意見』であれば、自由に述べて構わないと思いますが、それが許されるのは一般人のみで、創作家や芸能人のような、その発言に一定レベル以上の『社会的影響力』を持つ方は、個人的意見にしろ、確信犯的な煽動工作活動にしろ、厳に慎むべきなのです」




メリーさん太「い、いや、この国には憲法上、『表現の自由』というものがあってですね?」


ちょい悪令嬢「……ほう、あなたの言う『某時事問題』みたいに、有名芸能人等のSNS上での扇動的発言によって、世間に多大なる悪影響を及ぼすといった、看過できない現在の状況を、これ以上放置しておけとでもおっしゃるわけで?」


メリーさん太「──うっ」




ちょい悪令嬢「それにこれは、『絶対に意見表明をするな』と言っているのでは無く、SNS上のように、『世間に対して洒落にならない悪影響を与えかねない場所でやるな』と言っているだけなのです。さっきも申したように、小説家や漫画家やアニメ監督のような創作者なら、自分の作品の中で、学者や評論家等なら、ノンフィクションな著作の中で、歌手や俳優等のタレントなら、エッセイ等の中で、好きなだけ意見を表明すればいいのですよ。──ほら、SNSなんてむやみに使わなくても、ちゃんと表現の場はあるでしょうが?」




メリーさん太「……それを現在すでに本作等の自作内でやっているのが、この作者ってわけ?」


ちょい悪令嬢「もちろん、あくまでも『フィクション』としてね☆」


メリーさん太「……何でもかんでも、『これはあくまでもフィクションであり、実際の諸々とは関係はございません』とか言うのは、ある意味『逃げ』じゃないの?」


ちょい悪令嬢「逃げているのはむしろ、SNS上の各扇動者のほうよ」


メリーさん太「はあ?」




ちょい悪令嬢「──おい、そこのプロの小説家に漫画家にアニメ監督ども、おまえらの『主戦場』はあくまでも、自分の作品だろうが? それを何でSNSなんていう手頃な道具なんかに、『逃げている』んだよ? 自分の作品で自分の意見を語ることから逃げるくらいなら、創作をやめちまえ! それで何か、世間に貢献できたか? 自分の作品のイメージアップに結びついたか? いたずらに世間を騒がせて、無用な対立煽りを招いただけだろうが? それが元々の確信犯的な煽動工作なら言語道断だが、そうじゃ無いんだったら、二度とSNSに手を出すな。そんなことをしている暇があるのなら、少しでもいいから、自分の作品づくりに全力を尽くせ。ファンはおまえの意見なんか聞きたくは無いんだ、あくまでもにおまえの作品それ自体を、楽しみにしているだけなんだからな!」




メリーさん太「……確かに、『創作者だったら、自分の作品で語れよ!』と言うのは、至言だよな。──うん、最近あたしもSNSばかりにのめり込んでいたから、反省しなくちゃね!」




ちょい悪令嬢「──いや、メリーさんは、SNSなんてやっておらず、電話オンリーなんでしょうが⁉」


メリーさん太「それが最近では、あまりにも便利だから、LI○Eばかりやっていてさあ」


ちょい悪令嬢「もしもLI○Eでメリーさんから、『今、あなたの家の前にいるの』とかメッセージが来たとしても、極日常的な友人や恋人からの『現状報告』とでも、思われてしまうだけじゃないの⁉」


メリーさん太「うむ、むしろ時代がやっと、メリーさんに追いついたとも言えるの」


ちょい悪令嬢「そんな、無駄にSNSを使いこなしているメリーさんなんて、何か嫌だよ!」


メリーさん太「……うん、今回の話を聞いて、SNSの影響力の凄まじさを痛感させられて、さすがのあたしも反省したの」


ちょい悪令嬢「何か趣旨がちょっと違うような気もするけど、高名なる都市伝説を一人更生させたとなると、わたくしの熱弁も、どうやら無駄では無かったようね」


メリーさん太「いつも以上に熱く語っていたので、本人自身密かに恥ずかしいと思っているだろうし、あえてお茶を濁してやったの」


ちょい悪令嬢「それはどうも、ご親切に!(赤面しながら)」




メリーさん太「まあでも、某大統領も激怒しているように、SNSなんて便利であればあるほど、日本国内どころか、世界規模で悪影響を与えかねないんだから、有名人等の一定の影響力を持っている人たちは、もっと慎重なる利用を心掛けていくべきよね」














ちょい悪令嬢「──とか何とか言っているうちに、ここでニュースが飛び込んできました!」


メリーさん太「何と、某県において、新品種の苺の親苗の盗難が相次いでいるとのことです!」


ちょい悪令嬢「つまりこの苗を、例えば密かに異世界転移させれば、エルフの国等で無許可にて、日本の農家の方に一円もライセンス料を支払うこと無く、高価な苺の大量生産が可能となるという寸法なのですよ」


メリーさん太「……うわあ、例のエルフの女性タレントさん、大殊勲選手じゃん。SNSでたった一言二言つぶやいただけで、効果絶大だこと」


ちょい悪令嬢「うまいこと今回法案がポシャったから、次回以降に正式に法規制される前に、盗めるだけ盗んでやれって、ことなんでしょうね」


メリーさん太「──だったら完全に、あの扇動工作SNSのせいじゃないの⁉」


ちょい悪令嬢「これで非難するなと言うのは、厚かましいんじゃないですかねえ? もしも何かしらのご意見がお有りなら、創作活動等をお始めになって、ご自分の著作の中で述べられればいいし、何だったらいっそのこと芸能人なんかおやめになって、正式に政治家や市民活動家になられて、公然と己の主義主張を表明されて行かれればよろしいのですよ」


メリーさん太「なんか、某合衆国大統領閣下の、下手したら言論弾圧ともとられかねない、SNSに対する否定的ご意見こそが、正しいような気になってきましたよ」




ちょい悪令嬢「自由や民主主義と言うものは、けして永遠に保障されているわけではありません。真に日本国において、自由と平和と民主主義とを守るためにも、自由と無軌道とをはき違えたり、束縛の少ない民主主義であるのをいいことに、反自由主義勢力や諸外国に利する煽動工作活動を行って、人心や平和を乱しに乱して、結局国家統制の強化を招いて、自由と平和と民主主義とを失わせることの無きよう、一部の有名人の扇動SNSなんぞに惑わされずに、国民の皆様一人一人が、己の心を強く律していくべきかと存じますわ」







※上記のエルフの女性タレントとは、本作の『日本でこそこそエルフちゃん』編に登場した、エルフのワイドショーコメンテーターの『シャイン=マスコット』嬢のことであり、廃案となった法案とは、『アンチ転生法』のことなのであって、実在の人物や法律等とはまったく関わり合いはございませんので、悪しからず♡

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