第374話、わたくし、ソビエト空軍の偉大なるSS大佐ですの。(その5)

 ──まず最初、高度一万メートルの超上空において、




 ──無数の烏が、忽然と現れて、




 ──それがおのおの数十羽ずつ合体したかと思ったら、それぞれが巨大な禍々しい烏の姿となって、




 ──更にそれが、まさしくドイツの伝説において知られる、災厄をもたらす凶兆の大烏『フッケバイン』の異名を持つ、ドイツ第三帝国最後の超高性能ジェット戦闘機、Ta183となってしまい、




 ──それを目の当たりにして、迎撃に出動していたわたくしたち、魔導大陸特設空軍ジェット戦闘機部隊『ワルキューレ』のJS女子小学生パイロット五人は、戦慄してただ見守るばかりであったのだが、







 この異常なる状況は、その程度のことでは、済みはしなかったのだ。







『──な、何だ、あれは⁉』


『星……しかも、赤い星って』


「えっ、それって、ソビエト空軍? でもあれって、旧ドイツ空軍のTa183なんでしょう?」


『あっ、見て! まるで顎のように垂れ下がっていた、機首のジェットエンジンが、本体に吸収されたわ!』


『……特徴的なT字型の尾翼も、極普通の十字型に変形したし、これじゃまるで──』




『『『『「ソビエト空軍の、冷戦初期の超傑作機、MiGー15⁉」』』』』』




 そうなのである。


 さっき、化物烏からジェット戦闘機になったかと思えば、そのまま今度は、別の戦闘機に成り変わってしまったのだ。


 普通なら、「まったく無駄な、意味不明な行動」とか、「だったら最初から、MiGー15に変身すればいいじゃん」などと、悪し様に言われるだけであろう。




 ──しかし、一見不可解なこの現象には、ちゃんとそれなりの理由があったのだ。




『……や、やはり、そうだったのか』


『ああ、これで決まったな』




『『『『「結局、ソビエト空軍のMiGー15は、旧ドイツ空軍のTa183の、複製品パクリだったのよ!」』』』』




「いや、そもそも、誰の目から見ても、明らかでしょう?」


『ソビエトの戦後すぐの、ジェット機やジェットエンジンの開発状況から推察しても、ドイツの技術をそのまま利用していたのは、明白な史実なんだしね』


『それなのに、今更になって、否定的意見を述べている人がいることが、信じられませんわ』


なんか、ロシアの科学者だか歴史学者だかが、「MiGー15は間違いなく、ソビエトの独自開発だ!」なんて、むちゃくちゃなことを言い出しているそうだぞ。自分の祖国の技術力に、誇りを持ちたい気持ちはわかるけど、それはあまりにも「無理筋」というものだろうが?』


『「後退翼であることや、ジェットエンジンの配置を始めとした、全体的なシルエット等の漠然とした共通点は認めるが、細かい点を列挙すればすべてにおいて、ソビエト独自の技術が使われているのじゃ!」とか言っているらしいけど、おいおいそれって、「箇条書きマジック」そのものじゃないんか?』


「あの当時のジェット機って、何よりも後退翼であることこそが最大の特徴であるけど、ドイツ第三帝国がすでに第二次世界大戦中において、後退翼を持つジェット戦闘機であるMe262を実用化していなかったら、後退翼の戦後における採用については、史実よりも5年から10年は遅れていた可能性があることは、ソ連を始めとしてアメリカやイギリスをも含む、すべての国が認めているというのにねえ」


『ソビエトは戦時中からすでに、先進的な軸流式ジェットエンジンの「TRー1」を開発していたから、ちゃんと技術力はあるとか主張しているけど、大戦中においては実用化のめどはまったく立っておらず、ようやく戦争が終わってから、ドイツの最先端の軸流式ジェットエンジンの各種資料や技師自身を、大量に「略奪」して祖国に持ち帰って、共産党員のリューリカ技師の手柄にしようとしたけど、その複製パクリすらも満足にできず頓挫して、結局当時は一応先端技術だったけど実はドイツの軸流式に比べれば遙かに劣っている、イギリスの遠心式ジェットエンジンを、大戦中はイデオロギーを超えて対独同盟を結びヨーロッパ中を力を合わせて荒廃させたよしみから、何とロールスロイスのアホ企業から最新のジェットエンジンの実物と設計を譲ってもらえるという、アメリカあたりからしたら寝耳に水のトンデモ横流しが秘密裏に行われて、当然それをソビエトお家芸の『複製パクリ』によって、どうにかMiGー15用のエンジンである「TRD/VKー1」をでっち上げることができたという、体たらくだしね』


『そうやって複製パクリに次ぐ複製パクリでその場を凌いでおいて、やっとリューリカにドイツのジェットエンジン技術をマスターさせて、ソビエトオリジナル(w)の軸流式エンジンであるTRー1の開発に成功したなどと喧伝しているのだから、始末に負えませんわよね』


『そもそも、ソビエト最初の正式ジェット戦闘機の2機種の両方共が、ドイツ生まれのジェットエンジンであるJumo004とBMW003をそのまま利用しているのに、「MiGー15だけは、パクリじゃないんだ! 偉大なる共産主義国家技術によるオリジナルなんだ!」とか、どの面下げて言い張ることができるのだ?』


『例のロシアの歴史学者や、その支持者である日本の赤軍マニアどもが、顔を真っ赤にして擁護しているけど、「パクリ」こそがソビエト軍の最も優れた点であることを、何らわかってない単なる「モグリ」やでえ? ──そう、言うなればソれんこそが、元祖「パクレン」なんや!』


「──ちょっ、ちょっと、ユーちゃん、言い方! 『元祖』とか言ったらまるで、どこかに別の『パクレン』が存在しているみたいじゃないの⁉」


『いいのよ、「あいつら」は現在、アニメ版「企業という名の艦船」を巡って「内ゲバ」状態になっているから、他のことに気を回す余裕なんてまったく無いんだしw』


『本当ですわ、ほんのつい最近まで、信者どもの巣窟である某雑談w○kiにおいて暇をあかせて、自分たちのゲームではいまだ実装されていない「大和やまと」を、史実をガン無視してまで故意に過小評価して貶めたり、日本のIT事情を、ほぼ風評被害レベルで愚弄したりと言った、「おまえら一体どこ国籍?」と問い詰めたくなるような暴言をほざいていたくせに、そのような同じコクセキの狢でありながら、SNSにおいて「信者とクレイマー」の間で骨肉の争いを始めたかと思ったら、何と運営に絶対の忠誠を誓っていた信者のほうが、「神運営様」wによって背中から撃たれてしまって、「今や色情シキカンは大混乱☆」って有り様ですものね』


『……絶対に許せないよな、本作の作者が純粋な日本人として唯一と言ってもいいほどに、「アニメ版アズ○ン」の絶対的支持者だと言うことは、この作品においても何度も何度も表明してきたというのに、肝心の原作ゲーム勢が、アニメ版を全否定するようないちゃもんを言い出したかと思えば、何と運営自身がそれを受け入れて、原作ゲームからアニメ版の要素を削除するといった暴挙を行うなんて。これって運営が正式に、「アニメ版については、今後一切原作ゲームから斬り捨てます☆」と宣言したようなものではないか⁉ 一応いまだに放映中なんだぞ! おまえら、アニメ版のファンに対して、そんな仕打ちをして許されると思うのか⁉』


『まさにこれぞ、本作の作者のような、「新規加入予備軍」を、自分からシャットアウトするようなもんだし、コンテンツとしては、絶対やってはあかんことや。…………終わったな、「アズ○ン」』


「……残念です。今回の『第8回ネット小説大賞』と『カクヨムコン5』における作者のメインテーマは、まさしく『軍艦擬人化美少女作品の、新たなる地平を切り拓け!』であり、及ばずながらすべての『軍艦擬人化美少女』作品の、更なる発展に寄与しようと思っていたのに」


『まあ、いいじゃないの。作者にとっては本命である「艦○れ」のほうは、むしろ今や絶好調なんだし』


『それに、たとえ運営自体に否定されようが、己自身が「アニメ版アズ○ン」を素晴らしいと思った「気持ち」まで、失ってしまうわけでは無いのです。作者としても、「アニメ版アズ○ン」から学んだことを、これからも自分の作品で生かしていけばいいだけの話で、他人が生み出したコンテンツに対して、「全肯定か全否定か」の極端な評価しかできない、単細胞の「エセ論客」どものことなんか、気にする必要なぞありませんよ』


『そうだ、最初はたとえ「模倣」であっても、構いやしないが、要はそこから先、自分自身の「オリジナル」を創れるかどうかなのだ。それがわからず他人の二番煎じばかりしながら、それをあたかも自分の手柄のようにして、周囲にケンカを売ってばかりいると、そのうち自然淘汰されて消え行く運命でしかないのだよ。──まさしくかつての「ソビエト社会主義共和国連邦」が、そうであったようにな!』


『それに何よりも、うちらのような現場の一兵卒は、難しいことなんか考えずに、ただ目の前の敵を討てば、それでいいんや!』


「……うん、そうだね。いつまでもこんなしょうもないことを思い悩んでいたんじゃ、『魔法令嬢』失格だよね!」


『そうそう、何せ放映前にあれだけアンチに叩かれていた、アニメ版「マギ○コ」なんかも、ただ今絶好調だしね♡ アニメ版「アズ○ン」だって、放送延期された最後の2話が、両方共むちゃくちゃ「神回」だったりして、評価が覆ることだって、十分あり得るじゃないの? そうなってから慌てて手のひらを返しても、遅いっつうの!』


『──さあ、そんなことはもうどうでもいいから、とっととあの、ドイツ軍機のパクリでしかない、低レベル遠心式ジェット機を、全機撃ち落としてしまいましょう!』


 そのように、わたくしたち『ワルキューレ隊』のJS女子小学生パイロットたちが気を取り直して、再び周囲のMiGー15のほうへと注視した、




 まさに、その刹那、




『『『『「──なっ⁉」』』』』




 何とくだんの鋭く後退した主翼の輪郭が、大きくブレ始めたかと思えば、


 機体全体が、漆黒の羽毛に、たちまちのうちに覆い尽くされていき、


 あたかも、無機物である戦闘機と、有機物である大烏とが、混在しているかのような、見るからに禍々しき姿へと、変貌メタモルフォーゼしてしまったのである。




『『『──グキュエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!』』』




 大きく開け放たれたくちばしから放たれる、雷鳴のごとき不吉な泣き声。




 ──そう、まさしくドイツの伝説において知られる、災厄をもたらす凶兆の大烏、『フッケバイン』そのままに。

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