第369話、わたくし、たとえ【外伝】であろうと、その登場人物たちにとっては、唯一の【正伝】だと思いますの。(後編)

ちょい悪令嬢「──あれってやっぱり、そういうことだったんだ!」


メリーさん太「見え見えだったじゃん、あの『本塁打』って名前の子なんか、実は『ほむ○む』のもじりだったりするんだし」


ちょい悪令嬢「……あのクソ作者、本塁打と書いて、『ほーむらん』と読ませるつもりだったのか……ッ」




メリーさん太「実は、本塁田さんはその存在自体が、アグネスちゃんが実験場そのものの【魔法令嬢編】を、何度も何度もループさせていることを暗示していたの。どの世界線においても、常にアグネスちゃんがあなたと親密になりながらも、最後には裏切って敵となって襲いかかってくるものの、かいめいじゅうになったメイに退治されて、あなたに痛烈なるトラウマを植え付けるという、繰りエンドレス・返しホーム・ランなわけ」




ちょい悪令嬢「……ああ、なんか、アグネスちゃんそっくりな、本塁田さんや量産化人魚姫セイレーンの皆さんのみならず、アグネスちゃん自身までもが、わたくしに対して陰謀を巡らせているようなシークエンスが、何度もあったように思えたのは、構成上のミステイクではなく、最初からの『仕様』だったのか」


メリーさん太「何せこの【魔法令嬢編】自体が、単一の世界線で構成されているわけことは、何度も言及してきたものねえ」


ちょい悪令嬢「しかし、そんなに何度も何度も同じことを繰り返しているというのに、どうして同じ過ちばかり犯してしまうのかねえ。……結局人間というものは、失敗から学ぶことができないのかしら」


メリーさん太「……あー、まだ、そういう認識でいたんだあ」


ちょい悪令嬢「な、何よ、またそんな、いかにも人のことを、あきれ果てたような眼差しで見て! わたくしが何か、間違ったことでも言ったわけ?」


メリーさん太「やれやれ、仮にも主人公さんが、そんなんじゃ困るわよ? 本作の基本原則としては、『ループと言っても、本当に世界を繰り返しているわけでは無い』というのが、お約束だったでしょうが?」


ちょい悪令嬢「あっ」




メリーさん太「つまり、ループを体験した子たちって、実のところは、何らかの形で集合的無意識とアクセスを果たすことによって、別に時系列なんか関係無しに、すべての世界線の『記憶』を、丸ごと一気に与えられているだけなのよ」




ちょい悪令嬢「……ちょっと待って、『ループに含まれるすべての世界線の記憶』を、すべて最初から与えられているって言うことは、『ほむ○むがま○かちゃんを救うことのできた世界線』の記憶も、すでにほむ○むに与えられていると言うことでしょ? それなのになぜほむ○むは、失敗ばかりを繰り返しているわけ?」


メリーさん太「だったらあなたは、現代日本における最難関の大学の入試用の、数学の参考書を手に入れるだけで、その瞬間全問正解できるようになるとでも言うの?」


ちょい悪令嬢「あ、そうか、ただ単に記憶を与えられたとしても、それをちゃんと活用できるかどうかは、別問題ということか」




メリーさん太「……まあ、そうは言っても、あると無しとでは大違いだから、さすがに『まど○ギ』においても、ほむ○むは他の魔法少女たちに比べれば、よほどうまく立ち回れていたって次第なのよ」




ちょい悪令嬢「でも、あくまでも本人にとっては、実際に同じような世界を繰り返しているつもりなんでしょう? そのうち現在目の前にある世界に対しても、『現実感』が無くなってしまうんじゃないの?」


メリーさん太「ふふん、この【魔法令嬢編】が『実験のようなもの』だと聞いて、あなた自身もすっかり現実感が失せて、これ以降、とても真面目にやってられなくなったとか?」


ちょい悪令嬢「──ギクッ! し、しかたないでしょう? きっと読者様だって、すべてが『実験』に過ぎないのだと判明した今では、真剣に取り合ってくれなくなってしまっているんじゃないの?」


メリーさん太「ほんと、何度言ってもわからない子ねえ? まさにそれこそが、すべての異世界系Web小説の主人公の、『根本的な勘違い』だって、これまで口を酸っぱくして言ってきたでしょうが?」


ちょい悪令嬢「……ええと、今度は一体、何の話でしょうか?」




メリーさん太「──だからさあ、Web小説って、主人公が異世界において転生した後も、自分が現代日本人であったことを引きずり続けているでしょう? それが根本的に間違いだって言っているの! 何度も何度も述べてきたように、『かつて日本人であった』というのは、集合的無意識を介して与えられた『偽りの記憶』であり、言うなれば妄想のようなものに過ぎないのであって、一度異世界で生を受けたからには、生粋の異世界人以外の何者でも無いの! Web小説の主人公たる者は、現に己が存在している異世界が、剣と魔法のファンタジーワールドであれ、戦国時代そのものであれ、乙女ゲームモドキであれ、そここそを自分自身にとっての『唯一絶対の現実世界』と見なして、現代日本のことなんか忘れ去って、全身全霊をもって生きていくべきなの!」




ちょい悪令嬢「そ、そうか、それも本作における最重要基本原理の一つだったわよね。確かにほむ○むだって、『どうせ今回も、無限のループにおける、一つの世界線に過ぎないのだ』なんて軽く考えていたら、いつまでたってもま○かちゃんを救うことができないから、『世界を繰り返すことができるなんて、私の妄想に過ぎないんだ。現在のこの世界こそが、私にとってのたった一つの現実なんだ。ここでこそ必ずま○かを救うつもりで臨まないと、永遠に彼女のことを失ってしまうんだ……ッ』ってくらいの、覚悟で取り組むべきだよね」


メリーさん太「そういうことなの。きっと元祖『まど○ギ』原理主義者の皆様こそが、納得していただける理論だと思うけど、だからこそ反省していただきたいの!」


ちょい悪令嬢「へ? 元祖『まど○ギ』原理主義者の皆様が、何を反省する必要があると言うのよ?」




メリーさん太「『まど○ギ』原理主義者の皆様は、外伝と言うことで『マギ○コ』を軽く見て、何かと否定的な意見ばかりおっしゃっているけど、主人公の『い○は』ちゃんを始めとして、『マギ○コ』オリジナルの魔法少女たちにとっては、『マギ○コ』こそが唯一絶対の『本物の世界』であり、単なるゲームでは無いのはもちろん、『まど○ギ』の外伝なんかでも無いの。それはま○かやマ○さんたち見○原の魔法少女たちも同様で、元祖『まど○ギ』の視点では『マギ○コ』はあくまでも、ほむ○むが経験した無数の世界線の一つのようなものかも知れないけど、一度『マギ○コ』の中に登場すれば、見○原出身の彼女たちにとっても『唯一絶対の現実世界』となるのだからして、何事においても本気で取り込まなければ、場合によっては命取りにもなりかねないの」




ちょい悪令嬢「確かにねえ、『マギ○コ』オンリーのファンからしたら、『まど○ギ』同様に、『マギ○コ』だって十分魅力のある、大切な作品なんだしねえ」


メリーさん太「特に今回のアニメ化は、『まど○ギ』シリーズ全体にとっても、新規ファンを獲得するための、絶好のチャンスなの。それなのに、真のファンを自認する『まど○ギ原理主義者』たちが、事もあろうにアンチ活動をして、新たなるファンを排除してしまったんでは、まさしく本末転倒なの!」




ちょい悪令嬢「うんうん、まったくその通りだよね! 真のファンなら、外伝だからって頭から否定せずに、むしろ新旧ファン一体となって盛り上げるべきよねえ! つまり今回は、『外伝』や『スピンオフ』と言っても、その作品単体で見れば立派に『本編』であることを、量子論や集合的無意識論に基づいて証明して、現在の『原典や第一作』厨の過激な排他主義的な有り様ムーブメントに、一石を投じたというわけね? なかなか有意義な試みじゃないの!」




メリーさん太「……何を他人事みたいに言っているのよ、これはあなた自身の問題でもあるのよ?」




ちょい悪令嬢「へ? 『マギ○コ』が実は単なる外伝なんかじゃ無いってことが、どうしてわたくし自身の問題でもあるわけなのよ?」




メリーさん太「あなたは、現在の【魔法令嬢編】が、実は『実験みたいなもの』だと判明して、すっかり気を抜いているみたいだけど、今回述べたように、実際に作中に存在しているあなたにとっては、唯一絶対の『現実世界』であるとともに、けして番外編でも作中作でも無く、立派に『本編』でもあるわけなのよ?」




ちょい悪令嬢「なっ⁉ このどう見ても、実験作そのものの【魔法令嬢編】が、主人公であるわたくしにとっては、『本編』そのものですってえ⁉」




メリーさん太「まあ、その辺のところについては、近いうちに嫌というほど思い知ることになると思うから、せいぜい楽しみにしておくことね♡」


ちょい悪令嬢「ちょっと待ってよ! 散々『マギ○コ』のことを語っていると見せかけて、最後の最後で本作の話に持ってくるなんて、反則でしょうが⁉」




メリーさん太「──それでは、読者の皆様におかれましても、次回から乞うご期待と言うことで、よろしくお願いいたすま〜す♡」




ちょい悪令嬢「ちょっ、人の話を聞け! 勝手に終わるな!」

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