第340話、わたくし、軍艦擬人化美少女の、真の恐ろしさを痛感いたしましたの。(その3)
──未明深夜の魔導大陸沿岸部に広がる、結構大規模な市街地の上空、およそ3000メートル。
満月の光に照らし出されながら低速飛行をしている、特設空軍極地偵察部隊『ブラウェク』所属の、最新鋭ジェット機Me262A−1a/U3。
眼下の街並みは、すでにそのほとんどが瓦礫と化し、所々に重戦車を始めとする装甲車両の残骸も確認できて、大規模な戦闘が行われたことを物語っていたが、奇妙なことにも、これほどの派手な戦争行為において当然存在すべき、いまだ健在なる『勝利者』あるいは『敵軍』の姿が、まったく見受けられなかったのだ。
その代わりに、どうにか視界に捉えることができたのは、何と『場違い』にもほどがある、周りの惨憺たる状況に一切興味を示すこと無く、一人粛々と歩き続けている、小さな全裸の幼女の姿であった。
「──こちらブラウェク2。
『──こちら管制、ブラウェク1。航空機による、爆撃あるいは機銃掃射は、可能と思われるか?』
「──駄目です、
『──ブラウェク1、了解!
「全個体を──つまりは、量産型『
『──貴君の危惧するところは、理解できるが、もはやこちらもお手上げ状態なのだ。特設陸軍はすでに、全部隊を撤収済みだし、後は我ら空軍と海軍との全兵力をもって、飽和攻撃を仕掛けるしかないのだ!」
「……くっ。わかりました、ブラウェク2、これより帰投いたします!」
──そうして、天翔るジェット偵察機すらも、無力感に打ちひしがれながら撤退する中にあって、ただひたすら黙々と、
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
「……量産型『
長年の悪友にして、魔導大陸特設空軍次官でもあられる、エアハルト=ミルク元帥閣下が宣った、とんでもない『新事実』の内容に、一瞬大けがを負っていることすら忘れるほどの衝撃を受ける、私こと、聖レーン転生教団直営魔法令嬢育成学園初等部教師にして、魔導大陸特設防衛軍作戦部長である、ミサト=アカギ。
「あら、そんなに驚くことも無いじゃない? これも、『いつものこと』でしょうに」
「いつものこと、って……」
更に意味深なことを言い出す目の前の巨乳元帥に対して、怪訝な表情で問い返す、腐れ縁の
「もちろん、集合的無意識とのアクセスによる、ほぼすべての『超常現象』の実現よ」
──結局、またそれかよ⁉
「いや、ちょっと待って? 集合的無意識というのはあくまでも、いろんな世界の存在の『記憶と知識』が集まってきていて、文字通り『記憶操作』的に、異世界転生やタイムトラベルや未来予測や読心等の、いわゆる『
「うん? 改変するのはあくまでも『情報』なんだから、別に絶対に不可能というわけでは無いでしょう?」
「へ? 情報、って……」
「さっきも言ったじゃないの、『量産型
「集合的無意識を介することで、女の子の肉体を構成する量子の形態と位置の情報を、すべて書き換えるですってえ⁉」
「そもそも『記憶や知識』は情報そのものなのだから、集合的無意識によって、別の世界の別の存在の『量子の情報』をインストールする形で、肉体を改変することだって、けして不可能とは言えないでしょう?」
「また、すごい屁理屈だなあ? あのアホ作者ときたら、これまで散々、『物理的改変は、絶対に不可能だ』とか何とか、言い続けてきたくせに、今になって集合的無意識を『免罪符』にして、むちゃくちゃなことを言い出すんじゃないよ! 百万歩ほど譲って、仮に論理的に正しかったとしても、あんな小さな女の子が、軍艦そのものの力を持てるように、改変できたりするものですか!」
「……うわあ、こいつったらまたしても、『軍艦擬人化美少女ゲーム』を、全否定しやがったよ」
「やかましい! それはあくまでも、
「『作者』とか言い出しておいて、完全に『おまゆう』状態なんだけど、確かにこの【魔法令嬢編】においては、現代日本同等の『物理法則』が適用されることが原則となっていたっけ。──でもあなた、肝心な点を忘れてはいないかしら?」
「え?」
「彼女たち量産型
──‼
「『何にでも』と言うことは、言い換えれば『何でもアリ』なんだから、オリハルコンやミスリル銀等の、現代日本にはあり得ない、ファンタジー物質にもなれるわけで、人間の幼い女の子程度の大きさでありながら、旧日本軍の駆逐艦相当の攻撃力や防御力を有することだって、十分可能なのよ」
「い、いや、いくらショゴスだからって、物理法則の支配下においては、自ずと制限が加えられることになるはずで、人間の女の子がそう易々と、軍艦になれたりはしないのでは?」
「……あきれた、あなた、今回の騒動が起こった切っ掛けが、何だったか忘れてしまったの?」
──っ。
そ、そうだ、そうだった!
「……聖レーン転生教団による、現行の
「──そうよ、実はすでにこの世界は、まさしく『異世界』の名にふさわしい、剣と魔法のファンタジーワールドそのものへと、変貌しつつあるの」
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