第331話、【まだまだ座談会中】わたくし、『ソロモンの狂犬』には、二つの意味があると思いますの。(後編)

ちょい悪令嬢「──な、何と、あのあからさまな『ゆうだちハロウィン限定グラ』パロと思われていたシーンに、そんな超弩級の隠しネタが仕込まれていたなんて⁉」




メリーさん太「……もちろん、わかる人にはわかると思うけど、発表時の時代性を鑑みるに、大部分の読者様は、この種明かしをお聞きになってもなお、何のことかわからなかったりしてね」




ちょい悪令嬢「仮にはらじゅん先生のファンの方であったとしても、代表作の『はみだしっ』ならともかく、『ルーとソロモン』まではチェックしていないかも知れないしね」


メリーさん太「『……何でここで、元タレントのオバハン議員の話が出てくるんだろう?』とか、思われていたりしてねw」


ちょい悪令嬢「いいですか、皆さん、三原『順』先生ですよ! 『順』の後に、『子』とか『男』とか言った、余計な文字は付きませんからね!」


メリーさん太「これで、『ソロモン』というワードにひっかけて、『犬』のコスプレをしていたのは、何も『艦○れ』だけに準拠していなかったことが、実証されたってわけなの♫」


ちょい悪令嬢「──ぐっ、た、確かに」


メリーさん太「しかも、『ソロモン海戦』自体が史実であったことだし、今回のあたしの変身シーンは、それほど目くじらを立てて批判される必要は無いってことよね?」


ちょい悪令嬢「まあ、『ギリギリ』のラインであることは、間違いないけどね」


メリーさん太「と言うわけで、この辺で話を進めることにいたしましょう」


ちょい悪令嬢「ううむ、完全に納得はできないけど、いつまでぐだぐだ言ってても仕方ないしね。──それではお聞きしますけど、そもそも今回あえて『メリーさん』が、オリジナルの都市伝説とはまったく関係無く、狼だか狂犬だかに変身したのは、どうしてなの?」


メリーさん太「それはもちろん、昨年のハロウィンエピソードとの、『差別化』をはかるために決まっているじゃないの?」


ちょい悪令嬢「差別化って……」




メリーさん太「去年は、無数に現れた『あたし』たちが、幼い女の子の姿のままで、渋谷のハロウィンパーティに集まった人々を、語るもおぞましい残虐なやり方で、なぶり殺しにしてしまったじゃない? 作者としてはお得意の『ギャップ萌え』を狙ったんでしょうけど、冷静に考えればあまりにもヤバ過ぎたことを反省して、今回は大幅に路線変更をしたって次第なのよ」




ちょい悪令嬢「……ああ、確かに、いくら何でもあなたのような幼い女の子に、人間を生きたままむしゃむしゃさせるのは、やり過ぎってものよねえ」


メリーさん太「それに、今年の現実の渋谷においては、別に大きな事件は起こらなかったこともあるしね」


ちょい悪令嬢「……ったく、関東周辺の『田舎者』どもときたら、不甲斐ないったらありゃしない。ハロウィンこそは、年に一度だけおまえら『田舎者』が、憧れの渋谷ではっちゃけるパリィナイトなんだろうが? ここで『田舎者』としての根性を見せなくてどうする? 大体『警備費』なんていう、『相場』が有って無きに等しいものは、予算を組む時にあれこれと小細工ができて、役所や業者にとってもいろいろと『おいしい』というのに、今回あまり事件が無かったせいで、来年度の予算が縮小してしまったら、どう責任取るつもりなんだ? 役所や癒着業者を敵に回すと、後が怖いぞ?」


メリーさん太「──だからあんたは、むやみやたらと全方面に対して、ケンカを売るんじゃないよ⁉」


ちょい悪令嬢「でも、あなただってそのせいで、わざわざ舞台を異世界に移して、狼だか野犬だかに変身しなければならなくなったわけなんでしょう?」


メリーさん太「そうでもないの、そんなことなんかよりも重要なのは、あの場面で変身後の『あたし』たちが、ことのほうなの」


ちょい悪令嬢「あー、そうそう、そうだった! どうして、あんな幕切れにしたのよ? 完全に『尻切れトンボ』じゃないの!」


メリーさん太「だってこれも、『あたし』たちを変身させた、理由の一つですもの」


ちょい悪令嬢「え、それって……」




メリーさん太「もし仮に『あたし』たちが、いかにも非力な幼い女の子のままなら、実際に残虐行為を描写しなければならなかったところだけど、いかにも凶暴な狼や野犬となったのならば、その後の展開はほぼ予想可能だから、無駄に読者様を不快にさせるシーンを、描写する必要は無いってわけなのよ」




ちょい悪令嬢「……驚いた、あのアホ作者、そこまで考えて、メリーさんを狼だか野犬だかに、変身させていたの?」


メリーさん太「どんなにアホでも、一年以上も連載を続けていれば、それなりに成長するということなの」


ちょい悪令嬢「まあ、そういうことなら、あの尻切れトンボのラストも、納得できないこともないわね」




メリーさん太「──と言うわけで、この作品は、むやみやたらと『パロディ』をやっているわけではなく、ちゃんとそれなりにいろいろと熟考して行われていることを、読者の皆様におかれましても、是非ともご理解いただけると幸いでございます♡」











ちょい悪令嬢「……う〜ん、そうは言っても、やはりちょっとばかり、パロが多めじゃないかなあ、この作品って」


メリーさん太「──しっ! せっかくあたしが綺麗にまとめたのに、余計なことを言うでないの!」


ちょい悪令嬢「……まあいいです、それよりもとっとと、話を進めることにいたしましょう」


メリーさん太「え? あたしの登場シーンにまつわるエピソードで、他に何かあったっけ?」




ちょい悪令嬢「うん、特にメリーさんがどうしたとか言うわけじゃ無いんだけど、あなたが今回の【番外編】で最初に登場した現代日本のシーンで、うえゆう氏から、『他の世界に勝手に干渉したりしたら、それは本来なら絶対不可能とされるはずの、世界の物理的な改変に当たるのではないのか?』って言われていたじゃないの? そこのところはどうなのよ」




メリーさん太「……ああ、確かにそんなことを、言われていたっけ」


ちょい悪令嬢「──軽っ⁉ いやいや、これって、本作の作者のこれまでのセオリーを完全に覆しかねない、ゆゆしき事態と思われるんですけど?」


メリーさん太「大げさなの、別にあたしのやったことは、世界の改変でも転覆でも何でも無いの。むしろ、『必然の結果』でしかないの」


ちょい悪令嬢「……は? 無数の野獣に変身して、世界そのものを食い尽くすことが、必然の結果ですって⁉」


メリーさん太「本当に世界を食い尽くしたかどうかについては、別に確定はしていないの。あの場面に存在していた、聖レーン転生教団から見て『不穏分子』に当たる者だけを、一掃したかも知れないの。そういう『幅を持たせる』ためにこその、『あえて獣化形態ビーストモードになった後での、尻切れトンボ』のラストだったの」


ちょい悪令嬢「たとえそうだったとしても、あなたが本来の自分の世界以外の世界に干渉した事実は、変わらないじゃないの⁉」


メリーさん太「それについては、この座談会においても、すでに回答を示しているの、都市伝説であるあたしのような『概念的存在』は、世界の枠組みに囚われること無く、フリーハンドであらゆる世界に物理的影響を与えることができると」


ちょい悪令嬢「だからそれって、世界の改変に当たるんじゃないかって、言っているのよ⁉ それでなくても、今回の【番外編】の作者と言うことになっている上無祐記氏に対する、『越権行為』と見なすことができるわけだし」




メリーさん太「──そんなことは無いの、あの段階では、上無祐記氏は物語の顛末を確定していなかったし、むしろあたしの行動こそが、物語を確定したとも言えるの」




ちょい悪令嬢「なっ⁉ 都市伝説のいかにも常軌を逸した行動こそが、他者の手による小説のストーリーを確定させて、あまつさえそれと対応する本物の異世界の未来を決定させたですって⁉」




メリーさん太「まだ決まっていなかった未来なんだから、都市伝説だろうが何だろうが、決めてしまった者勝ちだし、後から文句を言われても知ったこっちゃ無いし、少なくともすでに確定していたものの、『改変』には当たらないの」


ちょい悪令嬢「で、でも、いくら何でも『作者』の意向を無視するのは、まずいんじゃないの? 例えば上無氏が後から、メリーさんの行為とはまったく異なったストーリー展開を書き記せば、そっちのほうが『正当なる物語セカイ』になるのでは?」


メリーさん太「ところがどっこい、あの場面で、本来ならあの世界においては『異分子』であるはずのあたしが現れて、強引に『すべてを無かったことにする』といった、小説等にとって最大級の『反則技』を行ったのは、むしろ『自然な流れ』とも言えるの。──なぜなら、最初に『反則』を犯したのは、『作者』である上無氏のほうなのだから」


ちょい悪令嬢「『作者』が反則って…………あ、そうか!」




メリーさん太「番外編のそのまた番外編に過ぎなかった今回の【ハロウィン記念企画】エピソードに、いきなり【シリーズ本編】のクライマックスともなりかねない、重大なるシーンを投入してきた上無氏の行為こそ、まさしく物語の世界観そのものをぶち壊しかねない暴挙と言い得て、あたしのような『世界の抑止力』が自動的に発動して、すべてを元の木阿弥にしようとするのも、言うなれば『当然の理』に過ぎないわけなの」




ちょい悪令嬢「た、確かに……」


メリーさん太「実際、上無氏が自作の続きを書こうとしたところで、似たような展開にしかならないと思うわよ? 異世界ファンタジーのはずが、いきなりメインキャラが現代日本人に変身してしまうなんて、ストーリー的にも無理があり過ぎるし、いわゆる『境界線の守護者』たちが、黙っちゃいないでしょうよ」


ちょい悪令嬢「でも今回については、『なろうの女神』やホワンロン三王女や内藤芽亜やミルク次官といった、『境界線の守護者』たちではなく、都市伝説であるあなたが聖レーン転生教団の依頼を受けて、事態の収拾をはかったわけなんでしょ?」


メリーさん太「忘れてもらっちゃ困るけど、今回の【ハロウィン記念企画】はもちろん、【魔法令嬢編】そのものが、聖レーン転生教団が主宰している『実験場』みたいなものだから、すべてが教団の監視下にあるのは当然のことなのであって、何か教団にとって不都合な事態が発生すれば、『境界線の守護者』がどうこうする以前に、教団自体が遅滞なく『修正』のための処置を執ることになり、たまたま今回はあたしに『実行者』としての白羽が立っただけの話なの」


ちょい悪令嬢「……だったら、いくら『作者』とはいえ、あんな強引なストリー展開なんて、最初から無理な話だったってことじゃないの?」




メリーさん太「おそらくは上無氏も、最初から納得済みで、あえてあのような突発的なストーリー展開を行ったものと思われるの。──つまり、あえて真に自分の望む『掟破りの展開』にすることによって、最大の『阻害要因』である教団が、どんな反応を示すのか、試してみたんじゃないの?」




ちょい悪令嬢「……はあ、たかが番外編の番外編である【ハロウィン記念企画】なのに、そこまで各陣営の思惑が絡み合っていたとはねえ」




メリーさん太「むしろ、番外編だからかも知れないの。【本編】では間違ってもできないような思い切ったストーリー展開でも、『実験』であれば気楽にやることができるしね」




ちょい悪令嬢「ほんと、この作品の作者ときたら、たとえ【ハロウィン記念企画】のエピソードといえど気が抜けないんだから、読者の皆様も大変よねえ」

















メリーさん太「……ていうか、単にプロットを全然立てずに、常に思いつきでストーリーをひねり出している、弊害なだけだったりしてw」


ちょい悪令嬢「──せっかくわたくしが綺麗にまとめたのに、どうしてそんな、すべてをぶち壊すようなことを言うのよ⁉」


メリーさん太「さっきの仕返しなの。──まあ、読者の皆様におかれましては、これに懲りることなく、これからも本作のご愛読のほど、どうぞよろしくお願いいたします♡」

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