第310話、【PV13万記念】わたくし、偉大なるビッグ・マイナーに、哀悼の意を捧げますの。

ちょい悪令嬢「……さて、本来なら今回も前回に引き続いて、本作の『PV13万アクセス達成』を言祝ぐ記念座談会を行うところですが、事情により自粛させていただきます」




メリーさん太「本当なら、今回の【特別座談会】については、もっと早い段階に行う予定だったけど、国家的祝賀行事や、旧帝国海軍の空母の『』と『あか』が相次いで見つかるといった、慶事が続いたこともあって、自主的に先送りしていたのよね」




ちょい悪令嬢「とはいえ、本作の作者としては、これ以上放置しておくわけにはいかず、いっそのこと『PV13万アクセス達成』の記念座談会と、一緒に執りな行うことと相成った次第でございます」


メリーさん太「読者の皆様には、何のことやらおわかりになられないと存じますが、今回のタイトルに示している通り、作者にとって敬愛の念の絶えない、まさしく『ビッグ・マイナー』と称する以外のない、希代の天才漫画家、づまひでお大先生が、このたびお亡くなりなったのでございます」


ちょい悪令嬢「もしかしたら、若い読者の方には、ご存じない方もおられるかも知れませんが、吾妻先生こそは、『うる○やつら』のたかはし先生等と同様に、我が国の『オタクムーブメント』の元祖的存在と呼び得て、特に『不条理SF』や『シニカルギャグ』や『ロリコン』や『微エロコメディ』や『失踪』という、漫画だけに限らず、サブカル全体の根幹をなす主要分野において、多大なる影響を及ぼされた方で、彼がいなかったら、現在のオタク文化は、まったく異なった様相を呈していたのではないかという意見も、少なくないのです」


メリーさん太「今からは信じられないかと思うけど、元々『コ○ケ』を始めとする同人誌は、『女性向け』がほとんどすべてを占めていたところ、先生こそが『男性向けエロ同人誌』の先鞭をつけることで、二次創作の方向性を大きく変えたという、大功績もけして忘れてはならないの」


ちょい悪令嬢「……本当にねえ、すべてのオタクの皆さんは、先生のお墓には、けして足を向けて眠れないわよね」




メリーさん太「──そしてもちろん、『ヒキオタニートと言えば、881374』、『881374と言えば、ヒキオタニート』でお馴染みの、オタクの極みである、本作の作者自身も、先生には多大なる影響を受けてきたの!」




ちょい悪令嬢「そうそう、『不条理』に『SF』に『ロリコン』に『微エロ』は、確実に吾妻先生の影響が大きいわよね。それも、具体的なストーリーとかキャラクターとか作風と言ったものではないけど、『下地ベース』とか『根源ルーツ』とか『遺伝子DNA』とか言ったものにこそ、脈々と『吾妻テイスト』なるものが受け継がれていると思うの」


メリーさん太「かの革命的超アニメ大作である、『エヴ○』の公式解説書を見るに、初代TV版においても、まさしく『下敷き』的に、結構影響を受けているようよね」


ちょい悪令嬢「……まあ、これについても、『具体的にどこが』っていうわけでは無く、解説書の編集責任者の言うところでは、『(エヴァ信者でありながら)「アジマフ」先生の作品を未読の者は、悔い改めろ!』といった、ある意味『布教活動』みたいな感じだったけどね」


メリーさん太「『エヴ○』の公式解説書の中で、別作品の布教活動ってw しかも、ミ○トとシ○ジのキャラ設定が、吾妻先生の『やけくそ天使』のとシンヤの影響を受けているかも知れないというのは、あまりの暴論www」


ちょい悪令嬢「確かに、大発展期だった『90年代オタクムーブメント』に対する、『吾妻作品』の影響力は、無視できないものがあったでしょうね」




メリーさん太「──それでは、ここからは先生の個々の作品を取り上げて、それが本作の作者や、ひいては『オタク文化』全体に、どういった影響を与えてきたかを、見ていきましょう」




ちょい悪令嬢「うおっ、メリーさんたら、なんか『司会者』みたい⁉」


メリーさん太「だって、司会者だし!」


ちょい悪令嬢「まあ、冗談はさておき、やはり先生の最初の代表作と言えば、『ふたりと5人』だよね!」


メリーさん太「──うん、もうこの一作だけで、吾妻先生のすべてを表しているよね」


ちょい悪令嬢「……え、そこまでだっけ? この作品は、最初の(しかも珍しく)ヒット作だけあって、先生の作品にしては、割と穏当な作品だと思ったけど」




メリーさん太「初期のメジャー少年週刊誌での人気作品だから、濃厚なアジマフファンの間でも低評価だし、先生ご自身も『編集から無理やり書かされた、まったくやる気の無い作品』とおっしゃっているので、取り立てて見るべきものは無いと(つい最近までの本作の作者も含めて)誤解している人も多いと思うけど、皆さん、ようく考えてみてください、アジマフ先生は、ベテランオタク(?)の誰もが認める、正真正銘本物の『天才』なのですよ? たとえ『いやいや書かされた、やる気の無い作品』であろうと、天才ならではの『片鱗』が、まったく見受けられないなんて、あり得ると思えます?」




ちょい悪令嬢「──ああっ、確かに!」


メリーさん太「例えば、本作の作者なんて、自分のことを天才と思ってもらおうと、必死に取り繕ってばかりだけど、本物の天才が、そんなことをする必要があると思います? いいですか、天才は存在するだけで、天才なのです。それはみや駿はやお大監督だって一緒でしょう? 別に監督でも演出でも作画監督でも無かった、単なる一原画マンだった下積み時代においても、彼が手がけたシーンにおいては、誰もが認める『天才性』を発揮した事例なんて、枚挙のいとまがないでしょう?」


ちょい悪令嬢「ああ、うん、特に『とう○動画』時代がそうだよね。『ガ○バーの宇宙旅行記』に始まって、『太陽の王子 ホ○スの大冒険』に『長靴を○いた猫』に『どうぶつ○島』に『空飛ぶ幽○船』等々における、彼の手書きのアニメーションシーンの凄まじさは、このCG全盛時代においても、いまだに語り草だよね」




メリーさん太「それはもちろん、『オタク漫画界の鬼才』であられる、アジマフ先生も同様なの。本作の作者自身ほとんどすっかり忘れていたんだけど、ほんのこの間各種資料を見返して、びっくり仰天。『ふたりと5人』の基本設定からして、現在のWeb小説の人気モチーフの宝庫じゃありませんか!」




ちょい悪令嬢「Web小説の人気モチーフって、『ふたりと5人』に?」


メリーさん太「『ふたりと5人』と言うタイトル通り、ヒロインが五人出てくるんだけど、これがあたかも『五つ子』みたいなそっくりそのままの美少女揃いでありながら、具体的な家族構成で言えば、祖母に両親に兄と妹(本物のヒロイン)なの」


ちょい悪令嬢「……うん、それって、誰でも知っていることだよね?」


メリーさん太「──と、いった感じに、旧来の『吾妻マニア』の方々は、すっかり麻痺しておりますが、これって普通に『男の』に『女装美人』に『ロリBBA』に『(最近流行りの)母親ヒロイン』だよね」


ちょい悪令嬢「ああっ、物の見事に、最近のトレンドばかりじゃん⁉」


メリーさん太「しかも極めつけは、主人公のDC男子中学生の部屋に同居している、キャラ名がズバリの『馬』であって、普通に主人公とコミュニケーションがとれるとか、大昔の少年週刊誌においては、あまりに不条理すぎるんじゃないの?」


ちょい悪令嬢「……主人公とコミュニケーションが取れる馬って、どこかで聞いた覚えが」


メリーさん太「主人公が巨大な九尾の狐に襲われた日には、空を飛んで助けたりしてねw」


ちょい悪令嬢「『ユーち○ん』かよ⁉ 現在話題騒然の、トレンド中のトレンドじゃん⁉」




メリーさん太「かように、長い作家歴において、まだまだ本格的に『エンジンがかかっていなかった』と評される、最初期時代においても、現在でも通用する奇想天外なネタばかりをちりばめているところこそが、天才の天才たるゆえんなのよ」




ちょい悪令嬢「……もはや、反論の一つも無いわ」


メリーさん太「そして『ふたりと5人』の連載終了後は、いよいよ『天才不条理SF作家』としての、片鱗を見せ始めるの」


ちょい悪令嬢「えっ、そうだっけ? もうちょっと後になってからと、思ったけど……」


メリーさん太「そんなこと無いの、ある意味先生の代表作とも言える、本格的青年向けエロ&ギャグ漫画『やけくそてん使』はもちろん、いまだ続行中だった少年週刊誌での連載作品『チョッキン』等に至るまで、随所に『不条理』かつ『SF』的なネタが見受けられるの」


ちょい悪令嬢「……あー、言われてみれば。特に『やけくそ天使』は作風的に『何でもアリ』だったから、極当然のようにして、しれっと『SFネタ』を投入したりしていたっけ」


メリーさん太「そうそう、まさにその『何でもアリ』精神こそが、のちのオタク向け漫画やアニメ、そして現在のラノベやWeb小説に、脈々と受け継がれているの」


ちょい悪令嬢「うん、『やけくそ天使』の破天荒さは、つつたか御大のSF作品同様に、現在における第一線の『ライトノベル作品』として、十分通用するでしょうね」




メリーさん太「──とはいえ、やはり『鬼才吾妻ひでお』の最大のターニングポイントと言えば、突然の『じょうにっ』の発表及び、漫画に限らずSF作品全般を対象にしている、『せいうん賞』の受賞に他ならないでしょう!」




ちょい悪令嬢「うん、そうだね。それによってSFファンを始めとして、まだ黎明期にあったオタクムーブメントにおいて、一気に知名度が高まったものね」


メリーさん太「しかも返す刀で、プロの作家でありながら、同人誌や自販機本という反則技を駆使することで、『ロリコン漫画』の先鞭をつけて、アニメ界のパヤオ(仮名)大監督とともに、我が国の『ロリコン黄金時代』を築いていくことになるの!」


ちょい悪令嬢「……うう、今になっては論評しがたいものがあるけど、特に『表現の自由』とか持ち出すまでも無く、当時は完全に合法だったのであり、先生の功績は、もはや正確に評価できないまでに、無限大だったわよね」


メリーさん太「これらの精力的かつ先鋭的な活動によって、すっかりマイナー界の帝王と化した先生だけど、その余勢を駆って、何とメジャー界においても、それなりの功績を残したの」


ちょい悪令嬢「ああ、『オリンポスのポロン』や『ななこSOS』がアニメ化したのも、その頃だったっけ」




メリーさん太「『オリンポスのポロン』は完全に一般向けの、健全なロリコンもの(w)だったけど、『ななこSOS』はある意味、『美少女ヒロインによる学園異能バトル』ものの御先祖様みたいなもので、現在のラノベやWeb小説に与えた影響は、多大なるものがあると言えるでしょう」




ちょい悪令嬢「……まあ、各作品を個別に語り続けると、キリが無いから、この辺にしておくけど、このように代表作のを挙げるだけでも、先生の影響力の大きさというものを、如実に実感できるわよねえ」


メリーさん太「もはや、ラノベやWeb小説のお家芸ともなっている、キャラやストーリーそのものを途中で放り捨てる、文字通りの『捨て身ネタ』を、最初に行い業界に浸透させたのも、吾妻先生だしね」


ちょい悪令嬢「何せ、作品そのものはもちろん、果てはご自分の人生までも、放り捨てたくらいだし」


メリーさん太「……それをまた、『しっそうにっ』として作品にするんだから、骨の髄まで漫画家であられたんでしょうねえ」


ちょい悪令嬢「本当に、惜しい人を亡くしました、これでまた『昭和は終わった』といった感じですわね。……せめて今回の座談会をご覧になった若い読者の方が、吾妻先生の御著作に興味を持たれれば、歓喜の極みなのですけどね」




メリーさん太「とにかくここは心から、先生のご冥福をお祈りすることで、今回の座談会を終えることにいたしましょう」




ちょい悪令嬢「──吾妻先生、本当に数々の素晴らしい御作品、どうもありがとうございました。どうか安らかにお眠りください」

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