第300話、【連載300回記念】わたくし、悪令(アクレイ)ーン・クロスオーバーですの!(中編)
「──あらあら、お嬢さんたちったら、慌てふためいちゃって、可愛らしいこと♡」
一度殲滅されたかと思われた『エイ型
大陸屈指の大国ヨシュモンド王国筆頭公爵家令嬢にして、王太子である僕ことヒットシー=マツモンド=ヨシュモンドの婚約者、オードリー=ケイスキー。
「……くふふ、ファンタジーの住人でありながら、科学の力に頼り切りとなっている、大陸人のもろさが露呈したというところかのう?」
続いて、ジェット機のパイロットのことを揶揄しているようでいて、ちゃっかりと同じ大陸人である僕ら──特に自分の最大の『
極東島国の強大なる軍事大国、ヤマトン王国の現女王、タマモ=クミホ=メツボシ。
「──まったく、情けない。同じく『戦うために作られた人形』としては、ただただあきれ果てるだけですよ」
そのように、本人にはまったく悪気は無いものの、結果的に最も辛辣なことをつぶやいたのは、僕の真後ろで影のように控えている、十代後半の妙に大人びた少女であった。
濃紺のワンピースドレスと純白のエプロンドレスとヘッドドレスという、いわゆるメイド衣装に包み込まれたすらりと引き締まった長身に、短い灰色の髪に縁取られた文字通り魂の無い人形のごとく整っているものの、表情に乏しい小顔の中で鈍く輝いている
僕の勇者時代のパーティの一員にして、今は故あって王宮にて専属メイドを務めてくれている、マリオン=チャン。
このように、見目麗しくたおやかなれど、そこはかとなく凄みのある、年上の美女や美少女から、矢継ぎ早に高飛車かつ不躾極まる物言いをされれば、大国ヨシュモンド王国の世継ぎの王子とはいえ、
「……オードリー、女王、マリオンちゃん、無駄口はいい。それよりも、すぐに
「「「──
そう答えるや否や、何の躊躇もなく、宙へとその身を躍らせる、三人娘。
しかしそのままあえなく落下することなぞ無く、オードリーは巨大なダークグリーンの三つ首の猛獣と化し、タマモ女王は銀毛九尾の大狐と化し、マリオンは背中に金属的な翼を生やして、それぞれ我が物顔に、大空を駆け巡り始めたのだ。
──それも、そのはずであった。
何とオードリーは、魔導大陸最強かつ最凶の魔王にして地獄の番犬ケルベロスの化身でもあり、タマモ女王は、ヤマトン王国の守護者にして神獣たる九尾の狐の末裔であり、マリオンに至っては、世界宗教聖レーン転生教団謹製の
鋭い牙や爪や
更にその上現在僕が『騎乗』しているドラゴンをも加えて、ファンタジーワールド指折りの『凶悪モンスター』たちが突然登場して、しかも自分たちのターゲットであったエイ
……とはいえ、現時点においては『正義の魔法少女』として、
そんな益体もないことを思い巡らせているうちにも、ケルベロスたちが敵性体をほとんど平らげてしまっていたものの、あたかもそれを待ち構えていたかのように、またもや海中から無数のエイ型
「……ったく、キリが無いな。──師匠!」
僕が
『──我が君、今回は現代日本における【将棋ラノベ編】では無いのだから、我のことを「師匠」呼ばわりするのは、遠慮願いたのじゃが?』
それに対していかにも忌々しげに、思いの外
「あいにくだけど、ここにこうしている『僕』は、かの尊き『なろうの女神』様から、集合的無意識との完全フリーのアクセス権を与えられていて、【
『……いつもながらに、つれないお人じゃのう。まあ、良い。デフォルトの世界ではとっくに退治されたはずの我が、こうして我が君と一緒におられるのも、この「実験用
そんな
『──おお、愛しの王子様、お久しゅうございます♡』
そして現れたのは、紛う方なく、長大な竜の蛇身であった。
──そう、今僕が足場にしている『師匠』が、現代日本で言えば洋風の『ドラゴン』である、翼を有する大トカゲのようなものなら、あちらのほうは、純和風の『竜神様』といった
ただし、その上半身のみは、僕らとほとんど同じ大きさの、人間の女性のものであったが。
上半身だけとはいえ寸鉄もおびず惜しげもなく晒された、初雪のごとく純白の素肌と、烏の濡れ羽色の長い髪の毛に縁取られた、彫りの深い
七つの海の守護神にして、
──またの名を、
『……乙姫そなた、いくらここが我ら魔の者にとって、『都合のいい世界』とはいえ、少々はしゃぎ過ぎじゃぞ?』
『おやおやこれは、陸の魔物の総元締めの、「
『──いいから、自分の下半身を、よく見てみい!』
『は?…………って、ああっ、これは、失礼!』
なぜだか、文字通り『我が身を振り返って』、いきなり慌てふためき始める乙姫様。
それも、当然であろう。
何と彼女の蛇身の鱗がどんどんと剥がれ落ちていくや否や、瞬く間にエイ型
『まあまあ、この「実験用
『そなた、今まで気づいていなかったのか⁉ ──ええい、どうでもいいから、早く何とかせい!』
『──それでは、ごめん遊ばせ』
そのように言い放ち、両腕を勢いよく天へと突き上げた途端、上空のすべてのエイ型
「……『
思わぬ『新事実』の発覚に、茫然自失となる僕であったが、
──どうやらそれは、『彼女たち』のほうも、御同様みたいであった。
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