第129話、わたくし、『アニマ』とは夢魔のようなものだから、エロゆり展開もいけると思いますの♡

「──そりゃそうでしょう、基本的にあなたたちパイロットは、搭乗戦闘機の化身である『アニマ』たちにとっては、『食い物』のようなものなんだから」




 ………………………………は?




 あの穢らわしき歪んだ欲望にまみれた夢を見た翌日、何と『夢の専門家エキスパート』である夢魔サキュバスにして、空軍次官のエアハルト=ミルク元帥に相談したところ、あまりにもあっけなく、とても聞き捨てならない答えを返されたのであった。




「……今さらっと、とんでもないことを言われたような気がするのですが、何ですか、私たちが、『アニマの食い物』って⁉」

 当然、猛然と食ってかかっていく私こと、ホワンロン空軍最新鋭ジェット戦闘機隊大隊長の、アイカ=エロイーズ男爵令嬢であったが、このファンタジーワールドきってのお色気モンスターサキュバスであり、人並みならぬ巨乳がトレードマークの『ミルクの次官♡』こと、ミルク元帥のほうはといえば、何ら動じることなく、滔々と話を続ける。

「え、私、至極当然なことを言ったつもりだけど?」

「──どこかですか⁉」

「……やれやれ、忘れてもらっちゃ困るわよ、あなたたちが乗っている軍の飛行機は皆、ただの戦闘機なんかではなく、科学と魔術とのハイブリッド技術の結晶である、量子魔導クォンタムマジックジェット機なのよ? 普通のジェット機用の燃料さえあれば、いいってものじゃないでしょ?」

「……あ」

「例えば、全翼機であるあなたのHo229は、飛行中の上下左右のバランスを司る『尾翼』というものが一切無いから、本来ならまっすぐ飛べないところを、『ゲンダイニッポン』においては『フライ・バイ・ワイヤ』と呼ばれるコンピュータシステムによって、機体の姿勢制御を自動的にやっているのだけど、この剣と魔法のファンタジーワールドにおいては、そこまで高度なコンピュータを再現するのはとても無理だから、おのおののパイロットの魔導力によって代用するという、量子魔導クォンタムマジック制御システムが搭載されているのは、まさしくHo229を操縦中において、姿勢制御等のための魔導力を供給している、あなた自身、ようくご存じよね?」

「──‼」




「だからこそ、まさにそのHo229の化身とも言える、『アニマ』の『エイちゃん』が、あなたの魔導力を欲して、夢の中でエロエロゆりゆりに迫ってきて、あなたから『精気スピリット』をいただこうとしても、当然の仕儀に過ぎないってわけなのよ♡」




「──エロエロゆりゆり、言うな⁉」

※本作はあくまでも、全年齢向け作品ですので、お間違えなく♡

「……ええと、一応のところ、おっしゃっていることは理解できなくも無いんですけど、その『精気スピリット』ってのは、何なのです?」

「人間にとっての『エネルギー』というか『生命力』といったものなんだけど、ぶっちゃけて言うと、私たち夢魔サキュバスにとっての『食餌エサ』のことなのであり、特に殿方の夢の中に現れてエロいサービスをしてやることで、その代償としていただくものであり、いわゆる『夢精』の隠語のようなものでもあるわけよ」

「む、夢精って……」

「うふふ、もちろん、そのものズバリというわけではないわよ? 何と言ってもあくまでも、夢の中の話ですからね。やはり人間の『生命力』的なものというのが、一番ふさわしくて、──特にあなたたち、魔法使いさんにとっては、まさしく『魔導力』が当たるわけなのよ」

「……ああ、そういうことですか」

 なるほど、話がちゃんと、繋がったじゃないか。

 そのように、ミルク元帥御自らの、懇切丁寧なるご説明に、一応のところ納得していたところ、

 ──続いての台詞が、非常にまずかった。




「何せ、むしろ夢の中だからこそ、好都合って面もあるしね、例えば、『女同士』でもイケるとかね♡ ──どう、昨夜は十分お楽しみいただけたかしら? うふっ、遠慮なんかしては、損というものよ? 何せすべては、夢の中の話なのですからね。相手も姿形こそ幼女だけど、そもそも人間じゃないんだし。法律とか倫理観なんて、完全にうっちゃって、『おねロリ』だろうが『ロリおね』だろうが、やりたい放題ってわけよ♡♡♡」




 ──ちょっとおおおおおおおおっ⁉

「言い方! 確かにとてもしらふでは言葉にできないようなことを、いろいろ体験したけれど、それこそ夢の中ゆえに、自分の意思では逆らえなかったから、あくまでも『仕方なく』だから!」

「あら、そんな、もったいない。もっと、みたいに、楽しめば良かったのに」

「へ? みんなって……」

「ほら、中庭のほうをご覧なさいよ」

「──なっ⁉」

 促されるままに、今いる空軍次官執務室の窓から中庭のほうを見やれば、ガランド中将を始めとして、我がジェット戦闘機部隊が誇る精鋭揃いの第44中隊の面々が、愛機のMe262の『アニマ』である、銀髪銀目のあたかも妖精そのままの、神秘的ながらもどこか無機質な美女たちを引き連れて、散策したり語らったり芝生の上で膝枕をしてもらったりと、とにかくゆりゆりにイチャイチャしていたのであった。

「……いくら脳筋GL嗜好主義者とはいえ、明らかに人間じゃない存在を相手に、あそこまでのんきに愉しむことができるとは」

「おやおや、あれでも文字通り『趣味と実益を兼ねた』、立派な職務の一環なのよ?」

「はあ?」

 あれでちゃんとお仕事をこなしていると認められるとしたら、入隊希望の女性同性愛主義者の皆様が、大陸中から殺到してくるぞ?




「まあ、あなたにとっては、言わずもがなか。こうして上官である私のところに相談に来るのにも、そうして『エイちゃん』を引っ付けているくらいですものね♡」




「──っ。い、いや、これは、この子が、勝手に……ッ」

 そうなのである。

 現在私の腰元には、愛機Ho229の化身の『アニマ』であるという、何だか『ゲンダイニッポン』の都市伝説で有名な、『トイレの花○さん』あたりを彷彿とさせる、年の頃五、六歳くらいの幼く小柄な、いかにもクールビューティとでも呼びたくなるような何の感情も窺わせない、おかっぱ頭の神秘的美幼女が、あたかもコアラか何かのように、ピッタリと抱きついていたのだ。

 ……あんな夢を見た後だというのに、なぜだか当の『アニマ』である愛称『エイちゃん』ときたら、朝からずっと私にひっついて離れようとはせず、こうしてミルク元帥の執務室までついてきていたのであった。


「ふふっ、別に恥ずかしがることはないわ。パイロットと『アニマ』が仲睦まじくなるのは、むしろ推奨されることだから。あなたも次の模擬空戦訓練の際には、痛いほど実感することでしょう。ただし、何事にも節度というものがあるのを、忘れては駄目よ? あまり『アニマ』に入れ込みすぎると、周囲の人間関係において、余計な波風を立てることになるかもよ? ──例えば、『彼女』との関係とかにね♡」


「え? それって、どういう……」


「……あなた、まだ気がついていなかったの? 危機管理を疑われるわよ? 大隊長としても、──そして、『勇者』としてもね」


 勇者、って…………。


 気がつけば、執務室の入り口の手前には、一人の幼い少女が立ちつくしていた。


 漆黒のネオゴシックのワンピースドレスに包み込まれた、年の頃六、七歳ほどの、いまだ性的に未分化な小柄で華奢な肢体。


 そして初雪のごとき、純白の長い髪の毛に縁取られた端整な小顔の中で、なぜか切なげに潤みながら、私とその腰回りに抱きついている『アニマ』の少女のほうを睨みつけている、あたかも鮮血みたいな深紅の瞳。


「……クララ、ちゃん」


 そうそれは、『勇者』である私のことを「お姉様♡」と慕う、『魔王』の少女の、あまりに唐突なるご登場であったのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る