第64話、わたくし、『異世界裁判長』になりましたの。【NAISEIの功罪】(その1)
ちょい悪令嬢「──さあ、久方ぶりに、『異世界裁判』のお時間がやってまいりました! もちろん、いつもの
かませ犬「え、これって、続けるつもりだったの?」
ちょい悪令嬢「もちろんです! しかも、前回はあくまでも『穴埋め』企画のようなものだったから、むしろ今回こそが真の『
メイ道「……いや、こんないかにも危なげなコーナーで張り切って、あえて敵を作らなくても」
ちょい悪令嬢「誰かが、言うべきことを言わなければ、Web小説界は、どんどん堕落していくばかりなのです!」
真王子様「
ちょい悪令嬢「色物で、結構! それで読者の皆様がお楽しみくだされば、作り手として本望です!」
ジミー「……それで、今回の『お題』は何なの?」
ちょい悪令嬢「それはもちろん、前回までの本編エピソードである、『反乱貴族編』を総括する意味からも、『NAISEIは本当に異世界の役に立つのか?』を中心的テーマとして、徹底的に討論及び分析を行っていく予定です!」
妹プリンセス「……うわあ、また、ヤバげなネタを」
ちょい悪令嬢「──とは申しましても、『反乱貴族編』はいろいろと語るべきテーマが多くて、どれから話し始めるか、非常に迷いますわ♫」
かませ犬「いろいろ、って?」
ちょい悪令嬢「まずは、大きく二つに分けられますわね。一つは今申しましたように、『反乱貴族』絡みの『NAISEI』についてであり、もう一つは、『反乱貴族』以外の即席『転生者』たちによる、『自分の周りの人たちが次々に、「見知らぬ誰か」になっていく恐怖』ですわね」
メイ道「ああ、お嬢様が私と一緒に、『逃避行』を行っていたパートですね♡」
ちょい悪令嬢「……確かに紛う方なき『逃避行』でしたけど、あなたが言うと、何か意味深ですわね」
真王子様「それにしても、あのシーンのちょい悪令嬢って、何だかいつもとイメージが違ってなかったか?」
ジミー「そうそう、いかにもめそめそしていて、普段よりもずっと子供っぽい感じだったよね」
妹プリンセス「……いや、事実まだ御年10歳であられるのだから、子供っぽくても構わないんですけど」
ちょい悪令嬢「うう、確かに。お恥ずかしい限りです。──それと申しますのも、今し方述べましたように、あのシーンは何よりも、『自分の周りの人たちが次々に、「見知らぬ誰か」になっていく恐怖』を印象づけるのがテーマでしたので、少ない字数の中で、ことさらオーバーに演技することが求められましたから、ああいった感じになったのでございます」
かませ犬「つまりこれぞこの作品自体のメインテーマである、あくまでも異世界人の立場に立って、『異世界転生』というものの『暗部』を強調しているわけだよな」
メイ道「確かに御自身も『ゲンダイニッポン人』であられる読者の皆様にとっては、ほとんど違和感は無いでしょうが、生粋の異世界人のはずだったのが、ある日突然『前世』に目覚めたとか世迷い言を言い出して、まったくの別人に変わり果てたりしたら、驚くと言うよりもむしろ、『不気味』の一言ですよねえ」
真王子様「これって、ほとんどのWeb小説の類いが、『転生者』である主役主観で描かれているから、読者に皆様には今ひとつぴんとこないだろうなあ」
ジミー「ちょっと前のエピソードにおいては、ドラゴンの卵に『ゲンダイニッポン人』が転生してくるってやつをやったけど、母親ドラゴンにとっては堪ったもんじゃないよね。あたかも我が子をエイリアンに乗っ取られてしまうと言うか、これぞ『カッコウの托卵』の異世界転生版と言うかでしょう?」
妹プリンセス「まさしくその『恐怖』を、『ゲンダイニッポン人』であられる読者の皆様に、是非とも味わっていただこうという趣旨で、今回のエピソードを披露したというわけですわよね」
ちょい悪令嬢「そのとーり! 読者並びにWeb作家の皆様におかれましては、何かもう『異世界転生』なんて当たり前のもののように思われているかも知れませんが、あくまでも異世界人の立場に立てば、赦されざる『侵略行為』に他ならないということを、是非とも肝に銘じていただきたいかと存じます!」
かませ犬「……また、各方面に対して、喧嘩を売るような言い方をしてからに」
ちょい悪令嬢「Web小説界の真の発展のためなら、喧嘩上等!」
メイ道「いや、公爵令嬢が、喧嘩上等って……」
真王子様「ところで、これまでのパターンだったら、『転生者』はすべて、『境界線の守護者』や『
ちょい悪令嬢「いいえ、今回の『転生者』の皆さんに関しては、基本的に放置です!」
ジミー「放置って、それでいいわけ⁉」
ちょい悪令嬢「『反乱貴族』の皆様にとっては、生まれた時から『転生者』であるのがデフォルトですので、今更集合的無意識とのアクセス経路を遮断したりすると、余計な混乱を呼ぶだけでしょうし」
妹プリンセス「だったら、それ以外の即席『転生者』──すなわち、本来宮廷等において要職にありながら、今回のクーデターを好機と捉えて、『反乱貴族』に協力し現体制に反旗を翻した、宰相や近衛騎士団長なんかは、どうなのです?」
ちょい悪令嬢「おそらく、彼らのそんな『弱い心』が『なろうの女神』につけ込まれることになって、『ゲンダイニッポン人の記憶と知識』をインストールされて、それこそが『後押し』をすることによって、クーデターに加担することになったのでしょうが、基本的にはホワンロン王国民として──つまりは、異世界人として行動しているのであり、クーデターが失敗した今となっては、あくまでも軽挙妄動のブースター的役割のみを担っていた、『転生状態』が自然と解除されているはずですので、こちらからはあえて何らかの
かませ犬「ええと、今名前だけ出て来たけど、今回『なろうの女神』って、完全に姿を見せなかったよね? 結局彼女って、具体的に何を行っていて、何を目的にしていたわけなのさ?」
ちょい悪令嬢「え? ちゃんと本編中に記されていたではないですか? 今回は小手先的な悪巧みではなく、十数年も前から密かに『転生者』の種を蒔いていて、しかもそれらは基本的にすべて、『他人様の作品の主人公』たちであるからして、我々にまったく気づかれることなく、今回のクーデターに及ぶことができたって次第ですよ」
メイ道「そこのところの『時系列』が、よくわからないんですよねえ」
ちょい悪令嬢「時系列、って?」
真王子様「つまり『なろうの女神』が本当に十数年前から、地方貴族や下級役人の新生児として、『転生者』を仕込んでいたかどうかだよ。何か話を聞いていると、我々相手に悪巧みがうまく行かないから、時間遡行でもやって、
ちょい悪令嬢「ああ、それも可能ですよ?」
ジミー「うそっ、できるの⁉」
ちょい悪令嬢「前にも座談会等で、散々述べたではないですか? 世界というものは外側から見れば、『一瞬のみの時点』でしかなく、異世界等の別の世界に転移する場合、いかなる時点へでも転移できるって。特にあらゆる世界のあらゆる『女神』という概念の集合体である『なろうの女神』は、一つの世界に囚われることなぞない、いわゆる『多元的存在』ですので、常にどの世界のどの時点にでもアクセスできるのです」
妹プリンセス「……え、それって、それこそ座談会等で完全に否定された、『過去の改変』になるんじゃないのですの?」
ちょい悪令嬢「いいえ、かなりグレーゾーンですが、一応『違う』と言えます。『「反乱貴族」たちは、確かに十数年前から「転生者」であったのだ』と言われても、我々には否定する判断材料は何一つないのですからね。すなわち、その事実を知る者が誰一人いないのなら、過去改変なぞなかったとも言えるのです。──と言うか、むしろ先程の話を逆から言えば、すべての世界の外側に存在している多元的な『なろうの女神』にとっては、一つの世界の十数年間なんて、文字通り『瞬く間』に過ぎず、彼女は本当に人知れず十数年前に『転生者』を仕込んでいて、過去の改変なぞけして行う必要なぞないのだ──とも言い得るのです」
かませ犬「……何か詭弁のような気もするけど、だったら、『反乱貴族』たちが全員、『他の作品』から『なろうの女神』が持ち込んできた、『他人様の作品の主人公』であるってのはどうだ? こんな『メタ』そのものなことを、どうして実現できるわけなんだよ?」
ちょい悪令嬢「ああもう、これについては何度も何度も述べているではないですか⁉ そもそも『異世界転生』なんて小説に書いてあることをそのまま鵜呑みにしたら、『メタ』すらも含む非現実極まる超常現象でしかありませんが、量子論や集合的無意識論に則れば、あくまでも現実的現象に過ぎないのですよ! 一言で言えば、『生粋の異世界人が、集合的無意識を介して、「ゲンダイニッポン人の記憶と知識」をインストールされて、自分のことを「異世界転生者」だと思い込んでるだけ』なんですよ! もちろん今回の『反乱貴族』の皆さんも、ただ単に集合的無意識を介して、『他の作品の主人公の記憶と知識』をインストールされているだけなのであって、それが昨日の出来事であろうと、『なろうの女神』によって『十数年前から転生者であった記憶』を刷り込まれてしまえば、自分のことを十数年前から『転生者』であると思い込むようになり、その十数年間の記憶や知識の集積によって、ずば抜けた『NAISEI』すらも、超短期間で一気に達成できるようになるのです」
メイ道「……ああ、そうか、過去なんて記憶の積み重ねに過ぎないんだから、集合的無意識を介した偽物の記憶によって、世界そのものではなく、あくまでも一個人にとっての
ちょい悪令嬢「そうそう、そういうこと。──もちろん、十数年間の記憶を、一気にでっち上げてしまうなんて、あくまでも極論ですけどね、けしてやってできないことでもないんです」
真王子様「……ああ、これって本編で述べていた、『作者』の力というものは、『自作の記述の書き換えによる、世界そのものの改変』と言うと、いかにもメタ的な非現実的能力になるが、あくまでも『強力な正夢体質ゆえに、他者を強制的に集合的無意識にアクセスさせて、精神的な改変を行うこと』という本質のみを強調すれば、十分現実的なものになることと、同じようなものだよな」
ちょい悪令嬢「ええ、ええ、まったくおっしゃる通りでございます♡」
ジミー「……何とまあ、集合的無意識のすごさを、改めて思い知らされたよ。まさか今回の数々の超常現象すらも、すべて現実的に説明可能にできるなんて」
ちょい悪令嬢「簡単に申しますと、『作者』や『なろうの女神』はもちろん、皆さんのような『境界線の守護者』も私のような『
妹プリンセス「……ええとそれで、『反乱貴族』たちが結局のところは、生粋の異世界人に過ぎないということが明言されたわけですが、今回の結論としては、『NAISEI』というものは、本当に異世界のためになるものなのでしょうか?」
ちょい悪令嬢「あーと、それに関しては、今回行った説明だけでは、『判決』を下すのには不十分と思われますので、次回以降に持ち越したいと思います。──と言うわけですので、読者の皆様におかれましても、どうぞ次回を楽しみにお待ちくださいませ♡」
かませ犬「──結局このコーナー、まだ続いていくのかよ⁉」
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