第44話、わたくし、こんなに趣味に走った作品を見たのは初めてですの。
『──こちら、ブレーメン地区管制基地。貴機の進行方向に、接近しつつある機影あり!』
「
『──識別信号、
「何ですって? 相手もジェットなの⁉」
『──機影分析完了! 敵機、仮称「ザラマンダー」と判明!』
「チッ、よりによって、最新鋭機じゃない!」
『──来ます、両機交差まで、あと1秒!』
「──くっ!」
私の真っ赤なジェット全翼機Ho229のすぐ真横を、20mm機関砲を掃射しながらすり抜けていく機影は、確かに背中にジェットエンジンを一基のみ背負った、異形の小型機であった。
咄嗟に回避行動をとり被弾は免れたものの、全翼機ならではの安定性の悪さにより、機体が大きく揺らいで、わずか一瞬とはいえ制御不能となる。
その隙を見逃さず、機体の小ささを生かして急旋回し、再びこちらへと高速接近してくる
もはやこれまでかと、思った、
──まさに、その時。
『なあに、やっているのよ、大隊長殿! 機械的不備は、魔導力で補えばいいでしょうが⁉』
無線から聞こえてきたのは、もはや散々聞き飽きたがなり声。
「ダンケ!
いかにも的確すぎるアドバイスを受け、私は空戦の真っ最中だというのに、おもむろに目を閉じ全神経を集中させる。
──
──私なら、できる!
──だって私は、ルフトヴァ…………じゃなかった、ホワンロン空軍の、エース中のエース、エクスペルテンの『
そして次の瞬間、私の意識は、大空と一体化した。
魔導力によって増幅された『全能感』が、不可能を可能にする。
私はたった一瞬の間で、敵機の軌道を完全に読み取り、自機に回避行動をとらせながら、大口径30mm機関砲を、敵機の進行方向へと叩き込む。
『──全機撃墜完了! 大隊長殿、おめでとうございます! これにて
──なぜなら、その時私の目の前に広がっていたのは、敵味方の戦闘機が飛び交う大空でも、所属部隊の滑走路でもなく、コクピットだけが部屋の中央に置かれている、亜音速ジェット空戦訓練用の、
そして、この部屋専属の
「……ああ、中将さん、さっきは助かったよ」
「いやあ、部下としては、上官の手助けができて、本望でありますよ、大隊長殿」
「……何で中将のあなたが、少佐に過ぎない私の部下なんだろうね?」
「あたしゃ、空軍元帥のゲリちゃんから、か〜な〜り、にらまれていますからね。──ま、生涯一中隊長というのも、肩肘張らずに済んで、助かりますんで」
「それで、わざわざ私の訓練が終わるまで待っていたってことは、何か用事があるんでしょう?」
「さすがは、『正統派ヒロイン』アイカ=エロイーズ男爵令嬢殿、話が早い! 実は今日はうちの隊のパーティが催されますので、大隊長殿には、是非とも参加していただきたいのでございますよ、はい♡」
「……あなたの隊というと、第44中隊の? 今日は何かの記念日なわけ?」
「──
……また思いっきり、『メタ』路線かよ⁉
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
ガランド「──と言うわけで、これより第1回第44中隊、親睦会を開催いたしまーす!」
隊員たち「「「いえーい!」」」
アイカ「……ちょっ、何で中隊の親睦会を、宿舎の大浴場で行うのよ⁉」
ガランド「え? うちは基本的に、『裸の付き合い』第一主義ですので」
隊員たち「「「しかり!」」」
アイカ「
ガランド「それが、時代の流れというものですよ♡」
アイカ「ヤな時代になったものだ……」
シュタインホフ「あれ? でも、最近のWeb小説における『悪役令嬢』モノでは、大隊長のような『正統派ヒロイン』は、大概『百合要員』ではありませんでしたっけ?」
ベーア「そうそう、悪役令嬢を
バルクホルン「いきなり悪役令嬢に告白して、ダメ出しされたり」
クルピンスキー「かと思ったら逆に、
ヘルゲト「なぜか執拗に下着を狙われたり、おまけに惑星軌道を微妙にずらされたり」
ガランド「──ていうか、そもそも本作の第一話で、大隊長ってば、『悪役令嬢』のアルテミス=ツクヨミ=セレルーナちゃんに、迫られてなかったっけ?」
隊員たち「「「そうそう、確か、そうだったよね〜♡」」」
アイカ「──いきなりすっかり忘れていた、『黒歴史』をほじくり返された⁉」
リュツォウ「黒歴史てw」
ホハーゲン「まあ、実はあの段階では、アルちゃんの『ロリ設定』も固まっていなくて、方向性がいろいろとブレていましたからね」
ノイマン「つまり事と次第によっては、大隊長とアルちゃんとの『ゆりゆり路線』もあったわけですな?」
アイカ「──うおっ、あっぶねー。今日ほどこの作品の作者の性格が、いい加減で飽きっぽいことに、感謝したことはないよ!」
カイザー「でもこの作品って、『ガールズラブ』であることをセールスポイントの一つにしているんだから、もっと『百合要員』の大隊長に頑張ってもらわないと、『タグ詐欺』になってしまうんじゃ?」
アイカ「だから私は、『百合要員』じゃないって、言っているでしょう⁉」
ミルクのお時間♡「──ちょっと、
アイカ&ガランド「「あ、あなたは⁉」」
隊員たち「「「ホワンロン空軍次官の、エアハルト=ミルク
ミルクのお時間♡「……ったく、さっきから黙って聞いてれば、ピーチクパーチクさえずりやがって。こっちは落ち着いて、湯に浸かっていられないじゃないか」
アイカ「す、すみません!」
ガランド「まさか姐さんが、入っておられるとは、思わなかったもので」
ベーア「……しっかし、相変わらず、『でっかい』ですなあ」
バルクホルン「ああ、さすがに『ミルク』だけあるぜ……」
ミルクのお時間♡「うふふふふ。こう見えても、こちとら『サキュバス』だからねえ。もちろんミルクも絞るし、『サキュバスですの〜と』もしたためるってもんさ」
全員「「「何だかわかりませんが、すげえです、
アイカ&ガランド「「あ、あなたは⁉」」
隊員たち「「「ホワンロン王国の誇る、『夢魔の悪役令嬢』にして──」
ミルクのお時間♡「……何だい、『
アイカ「ちなみに、自称『ナイトメア』さんも、全裸であらせられます」
ガランド「一体どこで私たちの話を聞いていたのか、何で入浴の準備が万端整っているのか、非常に謎が謎を呼びますが、ここは空気を読んでスルーいたしましょう」
ミルクのお時間♡「あら、『サキュバス』全体にとっての風評被害って、一体何のことだい?」
ミルクのお時間♡「……ああ、そういうこと」
アイカ「え、何で『ナイトメア』さんもサキュバスなのに、あの部分が『アルちゃん並み』なんです?」
ガランド「……あなたも結構辛辣なことを、平気で言えますなあ」
ミルクのお時間♡「え? あたしゃ十三歳の時はすでに、今とあんまり変わらなかったよ?」
ミルクのお時間♡「……サキュバスで悪役令嬢であるあんただって、十分化物のくせに」
ミルクのお時間♡「ふふっ、『ミルヒ』を英語読みするだけで、萌えキャラ爆誕なんだから、すごいよねえ♡」
ガランド「……あ、いや、一応連載44回記念として、うちの中隊メインでお送りしているんですが?」
アイカ「──ちょっ」
ガランド「誰もがわかっていながら、あえて言及しなかったことを!」
ミルクのお時間♡「みんな、早くそいつの口を塞ぐんだよ! 場合によっては、風呂に沈めたって構わないからね!」
全員「「「──合点でえ!!!」」」
ガランド「──と言うわけで、第1回第44中隊親睦会をお送りいたしました!」
隊員たち「「「次回は、第88話でお会いいたしましょう!!!」」」
アイカ「……え、何で、第88話?」
ミルクのお時間♡「おや、知らないのかい? JV44の前身が、やはり実在のアドルフ=ガランドが中隊長をやっていた、JV88だからだよ」
アイカ「──結局、最後の最後まで、『ミリオタ』ネタかよ⁉」
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