採用試験③
――王国で最も偉い人
「次の方どうぞ」
「失礼する」
呼ばれたので部屋に入る。
「あぁ……はぁ、不合格でよろしいですね?」
「何故じゃ!?」
「いや、何故と言われましても……どちらかといえばこちらのセリフなのですが……。そもそも、アナタの様な方がくる場所ではありませんよココは」
「貴様! 受験者を差別するつもりか!!」
「差別ではなく区別です」
これはまさしく理不尽というほかあるまい。
こちらは正規の手続きを踏んで受験しているというのに、まともに見ることなく追い返すとは理不尽以外の何物でもない。
「はいはい、国王陛下のお戯れは重々承知しておりますが、本日のところはお帰り下さい」
「ワシも我慢の限界じゃ。セルシアと共に仕事がしたいのじゃ! ジャンク・ブティコ王城国王執務室店で働いて欲しい。というより秘書になって欲しい。いや、仕事なんかしなくていいからそばに居てほしい!!」
「はいはい、国王陛下のお戯れは重々承知しておりますが、本日のところはお帰り下さい」
「いや、だから追い返すのであればセルシアを王城に」
「はいはい、国王陛下のお戯れは重々承知してるので! 本日のところはお帰り下さい!!」
「何だその口の利き方はッ! ワシがその気になれば……」
「国王陛下」
冷たい眼をした愛娘が感情のこもらぬ声でワシを呼ぶ。
そこまで冷たくされたらさすがのワシも泣くぞ。
「陛下はこの国の為に政務に励んでください。この様な場所でおしゃべりに興じる暇はないはずです」
「い、いや、戯れじゃよ。先程からその男が申しているじゃろう」
「戯れで城を空けないでもらいたいですね」
「むぅ、この男と一緒に店をやるようになってからというもの、日に日にワシへの態度がひどくなっておる気がするのじゃ」
「陛下。講師の採用が正式決定いたしましたらホ王国に参ります。もちろん店長も」
「本当か。ならば急ぎ試験を終わらせよ」
「そのために陛下は今すぐに城へお帰り下さい」
「うむ、仕方ないのう。ではこれで失礼するとしよう」
「気を付けてお帰り下さい」
…………
……
…
ふぅ。
結構メンタルを削られたが、良かった良かった。またすぐにセルシアに逢えそうだ。
早速、近いうちにくる報告会の料理の手配に歓迎の舞なんかもいいかもしれんな……
そんなことを思いながら、ワシは執務室のドアを開けた。
ドン、ドン、ドン、と積み上がった山、山、山。
しばらくは政務に励むとするかのう……
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