嬉しい誤算②
「今、冒険者の間で人気のアイテムがあると聞いてやってきたのはコチラ!!」
朝の情報番組。『モーニング・ドラゴン』の人気コーナー。
今人気のアイテム、これから人気の出るであろうアイテムを紹介するだけのコーナーなのだが、これまでにはない速さで情報を得ることができると、冒険者を始め、市民、貴族階級など関係なく人気を集めていた。
現代で言うところのテレビ番組だが、放送に関して、テレビ(魔道具)を流通させた《ジャンク・ブティコ》は当然のことながら一枚も二枚も噛んでいる。
何を隠そう、異世界第一号の放送局は、我らが《ジャンク・ブティコ》が立ち上げたものだ。
それに追随するように幾つかの放送局が開局した。
完全に《ジャンク・ブティコ》とは別の商会が参入してきたのだ。
本来であれば市場は独占できた。だが、それでは意味がない。
競争相手なき市場は衰退していくだけだ。
競争相手が居なければサービスの向上は見込めず、いずれは飽きられてしまい、その市場そのものが価値のないものとなってしまう。
一から新たな市場を開拓、普及、定着させるのは並大抵の事ではできない。
そもそも、《ジャンク・ブティコ》には経営のノウハウを持つ人間がいない。
異世界の住人達は大名商売を繰り広げ、経済という概念が希薄で、経済という概念を持った人間はずぶの素人――もといただの学生なのである。
要はテレビ――魔法(放)送とでも呼べばいいのか?――の発展を異世界住民に丸投げしただけである。
もちろん、参入時に技術料的なものはしっかりと頂いたが、すでにもとではとれていることだろう。
まさかここまでテレビが早く根づくとは思っていなかった。
今では『モーニング・ドラゴン』以外にも『ズームイン夜明け』、『朝、ズパァッ!!?』などの番組が本家顔負けの濃い内容をお届けしている。
ヘリコプターでの空撮の代わりにドラゴンでの空撮など、現代では撮影できない臨場感のある画が撮れる。
正直なところ、夜一は日本に居た頃は朝の情報番組などほとんど見ていなかった。だが、異世界の情報番組は欠かさず視聴していた。
ファンタジーな内容に心躍った日々は唐突に終わりを告げた。
朝の情報番組(異世界版)で特集されていたのはペットボトルだった。
しかも中身の商品ではなくペットボトルそのもの。つまりはゴミである。
インタビューを受ける冒険者は「ゴミ」について熱く語っていた。
確かに夜一も飲み終わったペットボトルを再利用した経験の一つや二つある。
しかし、空のペットボトルに目を輝かせたことはない。
(異世界特有の価値観ってヤツか?)
何が爆発的ヒット商品となるか分からない。それは異世界も現代も同じだろう。
だが、ゴミが、まさかのゴミが売れるとは。確かに便利ではあるが……。
まあ、そのおかげでペットボトルの商品の売り上げが異常な伸び率を記録し、莫大な利益を得ることができているのだが……
……それは言いとして。
――『モーニング・ドラゴン』のヤツら許可なく《
――って冒険者のヤツらも好き勝手持っていきやがって、冒険者ギルドにも抗議してやる!!
怒る声とは裏腹に、夜一の口角はわずかだが、確かに上がっていた。
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