憤慨・和解
「なんだあのでっけぇ月は⁉」
ガルムを撃破し館へと到着したグレンは、館の一帯をドーム状に覆った疑似的な夜空に目を奪われていた。
(エルザの魔法・・・ではなさそうだな。中でいったい何が起きてるんだ)
所々崩れている館の中を突き進み、浮かんでいる月の真下の部屋へと辿り着く。
その部屋には、檻の前で二人並んで立っているイルザと、そのイルザを連れ去ったスミレ。疲弊した表情を見せつつ魔法を発動しているエルザ。そして、紫電を纏った天馬と共に月へと貫かれようとしている男がいた。
(まさかもう決着がついたのか? しかしなぜスミレが何ともないようにイルザの横に? この短時間で何があった?)
物陰から様子を伺っていたグレンは、部屋の中で起きている状況を整理できずにいた。それ以上に自分が役に立てなかったことにかげりを覚えていた。
(・・・ほんと情けねぇぜ)
悔やみつつも再び部屋の様子を伺う。
男が月と共に打ち砕かれた後、血まみれのエルザはその場に倒れこんだ。
「エルザ!」
「エルザ!!」
グレンとイルザは同時にエルザの元へ駆け寄った。
「なんだよこれ・・・! 酷い怪我じゃねぇか!」
「私たちを助けるために頑張ってくれたのよ。すぐ治癒魔法かけるからグレンはエルザを支えて」
グレンはしっかりとエルザの肩を支え、イルザは治癒魔法で傷を塞ぐ。
「・・・ありがと、姉さん。・・・グレン、あなたの真似をして罠にかけてやったわ」
「馬鹿野郎、そんな無茶な罠のかけ方は罠じゃねえよ!」
「・・・手厳しいのね、また帰ったら罠のこと教えてね」
弱々しい声で話していたエルザは瞳を閉じた。
「エルザ!」
「大丈夫よ、気を失っただけだわ」
冷静にグレンを鎮めるイルザ。
グレンは檻の前で立っているスミレを睨み、イルザへ状況の説明を求めた。
「私の紋章は主様によって隠して貰っていたのです」
マントを枕代わりにエルザを横にし、グレンに事の顛末を説明し終わったイルザは、スミレに
初めて出会った時にスミレを着替えさせたが、体のどこにもそれらしき紋章は見当たらなかった。
スミレはブランによって紋章を見えないように隠されており、正体を隠してイルザ達に接触したという。その証拠に自身の左腕を見せ、カムフラージュを解いて百合の花の紋章を浮かばせる。
「待てよ、紋章が残っているってことは、ブランっていう野郎は・・・」
同じ人間であるグレンは紋章が残っている意味を理解していた。
「はいです。主様は生きています・・・です」
イルザとグレンは驚愕した。
確かにエルザの魔法によって月と共に打ち砕かれたはずなのに、まだ生きている。
「そんな・・・確かにエルザが倒したはずよ?」
「いえ、エルザさんが召喚した天馬に貫かれる直前、“
ブランとの
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