初夏の朝

「ふぅ・・・熱いなぁ」

 ヒロシは窓を開けた。

 爽やかな夏の風が吹き込んできた。

 今日は休日。

「今日何しようかな」

 ヒロシは冷蔵庫を開けて、麦茶のペットボトルを出した

「美味い、これぞ夏の味」

 独り暮らしという現実から来る寂しさを、麦茶が少しだけ癒してくれた。

 今日は6月16日である。

 夏が始まろうとしている。

「今年も俺一人か・・・」

 夏が始まると同時に増していく寂しさ。

 誰が癒してくれようとするのか・・・

 ふと、女の顔が頭をよぎった。

「アイツ、どうしてるかな」

 ヒロシは電話を手にした。

 少しの時間電話番号を見つめで、発信の表示をタップした。

 トゥルルルルルル・・・・

 発信音が鳴る。

 少し待ってみた。

 出るはずのない、優しい声。

 元彼女の麻由美が、電話に出てくれた

「もしもし?ヒロくん?」

 変わらぬ耳を癒してくれる声。

 ヒロシは気持ちを発言した。

「あ・・・あ・・・熱いね!」

 麻由美は、驚きながらも変わらぬ優しい話し方で話した。

「そうね、熱いわね」

「最近どうだ?」

「変わらないわよ、ヒロくんはどうなの?」

 会話が進んだ。

「俺・・・さみしい!」

 現状を言葉にしてぶつけられた麻由美は、さらに驚きながらも、

「そうなの・・・私も、今独りなの」

 ヒロシは、数年ぶりの電話を受けた麻由美よりも驚いた。

 そして、ガッツポーズをしながら、

「俺・・・今横浜にいるんだ!よかったら!」

 麻由美は被せるように、

「喜んで!」


 二人の夏が始まった。

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朝焼けは灼熱に染まって(隔離場) もなんもなお @circlemonachat

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