234

「私、昨日の放課後に恋をしました」

 春の季節のある日、生徒会の始まりとともに、明里は生徒会メンバーのみんなにそんなありのままの事実を報告した。

 明里を除く四人は、ひどく驚いた表情をした。

 明里の幼馴染の平結衣はもともとぱっちりと開いている大きな目をさらに大きく丸くして数秒の間固まってから、「明里。あんた大丈夫? 疲れてるんじゃない?」と本気で明里のことを心配してくれた。

 その隣にいる深田早月は、いつもお節介で恋でもしなよと明里に言っているくせに、今日は危なく椅子から落ちそうになっていたし、その反対側に座っている小島真由子は珍しく本から顔を上げて、明里の顔を疑いの眼差しで見ていたし、山里椛はなんだかあんまり見たことのない変な顔をして、明里のことを見ていた。

 そんな四人に向かって明里は昨日の出来事を一から説明した。

 その説明を聞いた四人はなんだかとても楽しそうな顔をして、いつもよりも真面目な姿勢で生徒会室の椅子に座って明里の次の言葉を待った。

 今日は誰も、いつものように生徒会室から途中でいなくなったりはしなかった。

「では、個人的な報告は終わりましたので、改めて今日の生徒会を始めます」

 明里は言った。

「本日の議題は……」

「明里の恋についてだよね」平結衣がそう言った。

「まずは、そいつの学校を突き止めないとね。明里。もう少し詳しく制服の特徴を説明して」携帯電話を片手に持ちながら早月が言う。

 真由子は本を閉じて、みんなの言葉に耳を傾けている。

「私、他校の知り合い結構いるよ」椛が言う。

 明里は他人事だと思って、楽しそうにしているみんなの様子を見て少しだけうつむいた。相談に乗ってくれることは嬉しいのだけど、明里はやっぱり真面目な生徒会がしたかった。相談には生徒会が終わったあとに乗って欲しかった。

 でも、みんなすごく楽しそうに笑っていた。

 だから、まあ今日くらいは、いいかな? と明里は思った。


 第二十五期

 

 学院 生徒会メンバー


 日向明里   生徒会長

 平結衣    副生徒会長    

 山里椛    書記

 小島真由子  会計

 深田早月   庶務   


 卵 らん 終わり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る