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「……明里。大人になったよね」椛が言った。
「うん。大人になった」真由子が同意する。
「理由はなんだろうね? 私はずばり恋だと思うんだけどさ」早月が言う。
「ねえ? 結衣。なにか明里から聞いてないの?」
「別になにも聞いてない。それにそんなこと私、全然興味ない」
早月の言葉に結衣はそう答える。
「ただいま」
生徒会室のドアが開いて明里が帰ってくる。
「? なに? みんななんの話をしていたの?」
自分の顔をじっと見つめる四人に対して、日向明里はにっこりとした笑顔でそう言った。
十二月も終わりが近くなった冬休みのある日。
「行ってきます」
日向明里はそういって実家を出るといつものように愛川公園に向かった。
明里は黒いコートに黒いストッキングを履いて、首回りには落ち着いた枯葉色の厚手のマフラーを巻いていた。
靴は葡萄色のパンプスだった。
「こんにちは」
近所の人たちにそんな挨拶をしながら明里は愛川公園までの道を散歩して、愛川公園にたどり着くと、迷わず歩き慣れた道の上を歩いて、明里は赤い色をした古風な造りの天橋のところまでやってきた。
明里はその橋の上に一人の男子高校生の姿を見つける
彼はいつも通りのぼんやりとした顔とぼさぼさの頭をして、いつもと同じ代わり映えのしない高校の制服を着ていて、その上には冬らしく焦げ茶色のダッフルコートをきていた。
彼はいつものようにそこから空を見ていた。
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