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「私は負けたの。勝負に負けた。ただそれだけだよ、鈴。だって、私、もし律くんが告白を受けてくれたら、きっと律くんと付き合ったよ。鈴が律くんのこと好きなの知ってるのに、だよ。私はそういう女なんだよ、きっとね」

 鈴は黙っている。

「……ずっと、律くんのこと好きだったんでしょ?」桜は言う。

「うん」鈴は答える。

「私と同じように初めてあったときから、あの石階段のところで、いや、鈴の場合は鳥居のところでだよね。あそこで律くんを見て、……一目惚れして、恋に落ちた。そうだよね?」

「うん」

「それは百年の恋だよね?」

「うん」

「もしかしたら、千年の恋かもしれないよね?」

「……うん」

 そう言って桜が笑うと、鈴の目から涙が溢れた。

「じゃあ、やっぱりよかったじゃん。あ、でも私のことも少しは感謝してよね。千年の恋がかなったのはさ、きっと小森神社の巫女である私の加護があったからなんだからね。鈴は神社にお願いごと、してないんだからさ」

 鈴は黙っている。

「おめでとう、鈴」桜は言う。

「……本当にいいの?」鈴は言う。

「いいよ。いいに決まっているじゃん。これってさ、もう誰が見てもハッピーエンドだよ」

 桜は泣いている鈴の体をぎゅっと抱きしめる。

 二人の友情は永遠だ。

 千年の恋にだって、きっと負けやしない。


 泣いている鈴の頭の横から、白いカーテンの隙間から見える、かすかに滲んだ青色の空を見ながら、……鈴の鼓動を感じながら、小森桜はそんなことを、頭の中で考えていた。


 鈴音 終わり


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