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「そこに書いてあることは、本当のことだよ。俺は確かに桜から告白されたし、その告白を断った。俺が好きなのは鈴だから。そう言って桜の告白を断ったんだ」
律は言う。
「それって、いつ頃の話?」
「中学の、二年生のころの話。鈴と桜に初めて会った日から、そんなに時間は経っていないすぐのころだったと思う。五月の終わりか、六月の初めごろくらい。強い雨が降った日。俺が友達の桜への返事を聞きに行ったときに、連絡先を交換して、それから一ヶ月くらいあとの日曜日だったと思う」
鈴は思う。
そうか、桜はきちんと律に自分の口から告白をしていたのか。
それも出会ってすぐのころに。中学生のころにもう律に恋の告白をしていた。そして、律の返事を聞いて、たぶん、私のことが好きだっていう律の言葉を聞いて、桜は自分の思いを私に全部隠そうとした。
桜は気がついていたんだ。
私の思いに。
律が好きだっていう私の思いに気がついていた。
親友だから。
私が桜の思いに気がついていたように、ちゃんと桜も私の思いに気がついていた。……そういうことなんだよね、桜。
鈴は夜の小森神社のある方向の空を見つめた。
「……ごめん。五分だけ待って」鈴は言う。
「わかった」
律は言う。
鈴はそれから律に背中を向けて、自分の気持ちを整理した。
そして五分の時間が経過した。
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