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「返事をする相手、間違ってる」鈴は言った。
「いや、間違ってないよ」律は言う。
鈴は律の言ってる意味がよくわからなかった。
律は手紙を制服のポケットの中から取り出した。それは鈴が私た桜のラブレターのようだった。
「この手紙に書いてあったよ。お前に告白しろって」
「……え?」
鈴は驚く。
「ほら」
それから、律が差し出した桜の手紙を受け取って、それを鈴はその場で読んだ。その手紙には、……桜から律に向けて、鈴があなたのことをずっと好きでいるから、あなたのほうから律に告白をしてほしい。私のことは気にしないでほしい。あなたに告白をしてふられたことは、もう私にとっては過去のことであって、すごくいい経験になったからそれでいい。だから、正面から鈴のことを愛してほしい。鈴の気持ちに答えてあげてほしい。
……そんな意味の文章が便箋に三枚分、見慣れた桜の綺麗な文字でびっしりと書いてあった。
「……これって、どういうことなの?」
鈴は言う。
鈴の手紙を持つ手はかすかに震えている。
鈴はもう、なんだかすごく泣きそうだった。
でも、泣いちゃいけない。そう思った。ここで泣いたら、桜にすごく失礼だと思ったのだ。桜に顔向けできないと思った。
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