第99話

「さて、そろそろ、私は誰でしょう? ゲーム。初めていいかな?」


近藤さんは皆んなにマイクを向ける。


「いいとも!」


「すみません。ひと昔の受け答えで」


「さあ、始めます」


「この箱にあるカードを一枚選んで、頭の所につけます。その人は見てはいけませんよ。自分の頭にどんな人物が描かれているのかを、質問をしながら当てるというゲームです」


「やりたい人」


「はい! はい! はい!」


菅くんが手を上げて猛烈にアピール。


どこからともなく、手拍子に菅コール。


「す〜が! す〜が!」


菅くんが前に出る。


「では、カードを一枚選んで下さい。見ちゃダメですよ」


菅くんが一枚カードを取り出し、近藤さんに手渡す。


「さて、どうしましょう、帽子をかぶって頭につけますか……」


「いや。セロハンテープでいいです」


「直接貼ってください」


皆んなから大爆笑を誘う。


近藤さんが、言われた通りに左右をテープで貼る。


この姿だけでも、皆んな抱腹絶倒。


「では始めます」


「菅くんは、皆んなに質問を10個まですることができます」


「見ている人が、はい、そうです、あるいは、いいえ、違います、というように答えられる質問をしなくてはいけません」


「なお、苦しい時だけ、私がヒントを1つだけ出します」


菅くんの頭には、誰かさんの似顔絵。


「さて、開始です」



「私は男ですね?」


菅くんが皆に問う。


「はい、そうです!」


皆で声を合わせて答える。


「私はテレビに出ることがありますね?」


「はい、そうです!」


「私は芸能人ですね?」


「いいえ、違います!」


菅くんは少し考える。


「私はアナウンサーですね」


「いいえ、違います!」


すいません。近藤さん、ヒントを下さい。


「はい、分かりました。私が菅くんの代わりに皆んなに質問します」


「私は政治家ですね?」


「はい、そうです!」


菅くんはニヤリとする。ほぼ人物が絞られたようだ。


「私は日本の首相ですね」


「いいえ、違います!」


予想と違い、少し菅くんが困惑するが、


「私は吉田茂の孫ですね」


「はい、そうです!」


ニヤリ。もう、菅くんは余裕の顔。


「私は麻生太郎ですね」


「はい、そうです!」


皆んなが割れんばかりの拍手で菅くんを盛り上げる。


菅くんは、唇を少し横にし、への字に曲げる。ついでに似顔絵を張っていたテープが片方剥がれる。


皆んな抱腹絶倒。大拍手。



「さて、日光が近づいてきました。ここからはマイクをツアーガイドさんに手渡します」



「はい、今日は皆さん、皆さんの楽しいお話、ゲーム最高でした!」


「わいか〜!」


誰かがツアーガイドさんの可愛い容姿を業界用語で叫ぶ。有村架純似で、確かに可愛い。


「このあと昼食をとり、日光東照宮、二荒山神社、華厳の滝とご案内していきます」


「まずは日光のいわれと歴史から……」


ガイドさんの一般的なガイドが始まる。


僕は二日目。少しうたた寝をする。


「佐藤くん、佐藤くん」


菅くんが僕の肩をたたく。


「はいっ!」


「少しお眠りのようでしたね」


ガイドさんの優しい声。


「日光植物園内は、佐藤くんにガイドをお願いしてあります!」


うお〜っ! と皆んなからの期待の声と拍手。


僕は挨拶に立ち、無言で胸のTシャツを指差す。皆んな大笑い。


計画通り。


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