第4話 募る思い
私はそっと彼女が書いた絵を覗きこんだ。
そこには確かに私が書かれていた。
こんな顔だった。こんな制服着てた。髪型も雰囲気も私だった。
涙がこぼれた。少しずつ忘れていた事が思い出されて来たのだった。
17歳の私は好きだった男の子から、この場所に呼び出された。
彼は陸上部にいて、私は美術室からこっそりと練習を見ていた。
あの日、彼からの電話で…
「今日、8月31日の15時に美術室で会えないかな?」
突然連絡をもらい、夏休みが終わる少し寂しくて憂鬱な1日が一変し、嬉しくてまるで体に羽根が生えたように、軽やかな足取りで家を出た。
夏の照り付ける日差しを浴びて暑いはずなのに、心はそんなに暑さに負けないくらい爽やかな風が流れウキウキとしていた。
不意に前触れもなく、立っていられないぐらいの激しい地震が起き、思わず地面に座り込んでしまうと、後ろに佇む建設中のマンションが倒壊し、下敷きになってしまった。
私は……
咄嗟に、目の前に立っている彼女の顔を見つめた。彼女もなんともいえない表情で私を見つめていた。
「知って……いたの?」
微かに絞り出すように私は彼女に聞いてみた。彼女は寂しそうな顔をしながら
「うん…」と、短く先程の私と同じように、少しうつむきながら頷いた。
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