第38話


「さて。ここからが本番だ。カイリの聖歌のことだな」


 シュリアの双剣でコテンパンにされ、フランツの大剣、エディの銃剣、リオーネの弓でぼろぼろになった後。

 カイリは、フランツ達に連れられて音楽室へ来ていた。正直、一休みしたい。


「……世の中には、色んな武器があるんだな」

「くうっ! ボク、新人と五分以上斬り結んじゃいましたよ。何で! 銃弾とか避けるんすか! 超意外っす!」

「いや、見えたから……」

「私とはいつまでも勝負がつきませんでしたし。私も武器はそこまで得意ではないですけど、カイリ様、そこそこ剣が物になっていますよね」


 感心した様にリオーネに褒められ、カイリとしてはむずがゆい。耳の裏をいてしまった。――隣でエディが物凄い形相で睨んできたが、無視をするしかない。


「そうだな。銃弾はインク弾に変えていたとはいえ、避けるとは俺も思っていなかった。レインの言う通り、目が良いな」

「……ありがとうございます」


 だが、結局最後の最後で当たってしまった。当然、服はカラフルなインク塗れになり、洗濯行きである。

 しかし、エディの武器は本当に面白い。銃に剣が付いているとは、カイリの知らない武器はまだまだありそうだ。


「んで? 取り敢えず、カイリの聖歌をまともに食らってみれば良いのか?」


 レインが好奇心を隠せずに聞いてくる。エディもわくわくとした顔になったし、そんなに聖歌の力が気になるのだろうか。


「そうだな。まずは食らってもらった方が早い。……カイリ。あの、ルナリアで野盗共を眠らせた歌は歌えるか?」

「はい、もちろん。『ゆりかごの歌』、ですよね」

「ああ。じゃあ、早速頼む。あれが一番害が少ない」


 フランツに頼まれて、カイリは喉を整える。

 村ではよく歌っていたが、出会って間もない人達ばかりの前で歌うのはやはり緊張した。声が震えない様にと、背筋を伸ばす。

 深呼吸を、一回。

 そして、カイリは目を閉じた。



【――ゆりかごの歌を】



 ほどける様に落ちて行く室内の中で、彼らを取り巻く空気が変わる。

 だが、カイリは歌に集中する。ひたすらに、安らかに、眠る様に、強張った糸を一つ一つ解いていく。



【カナリヤが歌うよ】



 子守唄に祈りを乗せて、カイリは揺りかごの中でゆったり眠る様な気持ちになっていく。



【ねんねこ、ねんねこ

 ねんねこよ】



 そうして、四番まで歌い上げ――。











「……すかーっ。リオーネさあん、……むぎゅっ」

「……この馬鹿。起きなさい。本当に寝てるんじゃありませんわよっ」


 床に大の字になって爆睡するエディに、シュリアが容赦なく蹴りを食らわせる。

 うごっ、とうめいてはいたが、それでも起きる気配が無い。相当深く落ちた様だ。


「……あー、だが、ほんっとにねみー……。団長、寝ても良いか?」

「駄目に決まっているだろう。……カイリ、平気か?」

「はい。……ソファがあって助かりました」


 歌い終えた後は、カイリもひどい疲労感に襲われ、立っているのが辛くなった。聖歌語や聖歌は、本当に体力を削るらしい。今のカイリに連発は無理だった。

 カイリの隣では、リオーネも船をいでいる。まぶたが今にも落ちそうだ。


「……途中から、本気で抵抗しました……。でも、それでももう眠くて仕方がないです」

「……この状態で、よくまあ野盗を相手に出来たな、二人共」

「まあ、全力で抵抗したからな。最初から」

「ええ。……正直、寝たかったですわ」


 そんなに激しく抵抗したのか。

 今更ながらに、あの時カイリが立てた計画は無謀だったことを悟る。二人には大いに迷惑をかけてしまった様だ。


「……すみません。俺が、範囲を指定出来れば良かったのに」

「いや、充分だ。というより、これだけ強い聖歌を歌う奴は、あまりいない。俺達は運が良い」

「……早く範囲指定を出来る様になって下さいませ。……ですが」

「うむ。それでも今回はあの時よりはまだ少し弱いか。威力の安定も課題だな」

「……はい。分かりました」


 頭をふらふらさせながら、フランツとシュリアがソファに雪崩れ込む。眠ってはいないが、かなり辛い様だ。


「でも、カイリ様の歌は、特別上手っていうわけではないんですけど……」


 口に手を当てて、リオーネが考え込む。

 カイリの歌は、村にいた時から出来にムラがあるとは言われていた。だから、その評価は正しいと思う。

 だが。


「何だか、聞いていて気持ちが優しくなるというか、……懐かしくなりますね」

「……、そう?」

「はい。聞いていてのんびりすると言いますか……不思議ですね。私の聖歌とは、全く違う感じです」


 微笑まれて、カイリの耳が熱くなる。村の者以外にもそう言われるとは思わなかった。

 だが、フランツも優しいとあの時言ってくれた。童謡唱歌の特性だろうか。この歌は、歌詞が優しかったり落ち着いていたり切なかったり、万人に聞かれる歌だ。日本に古くから根付いていた歌でもある。

 もしかしたら、世界を越えても愛される性格なのかもしれない。そう思うと、少し誇らしくなった。


「聖歌語や聖歌は、イメージが大事なんです。それは、もう聞いていますか?」

「あ、うん。強く念じれば念じるほど、具現化されるものだって」

「あら。具現化……フランツ様ですね。かなり大雑把な説明です」

「え?」


 苦笑気味に言葉をにごされ、カイリはきょとんと目を瞬かせる。

 フランツの方を振り向くと、彼は「違うのか」と首を傾げていた。何故、仲間内で話が噛み合わないのだろうか。不思議でならない。


「確かに、具現化、というのは間違ってはいませんけれど。何でもかんでも出来るわけではないんです」

「はあ」

「それは、後から説明をするとして。けれど、イメージの強さは大前提です。多分今、カイリ様はイメージするか祈りをこめて歌ったと思いますけど、範囲指定も同じなんです」


 つまり、適用する範囲を思い浮かべて強く念じる。

 単純そうに思えるが、歌の効果をイメージしつつ、適用する範囲まで強く思い浮かべるとなると難しい。


「これはもう、練習あるのみですね。歌についてはきっちりイメージ出来る様ですので、そのまま範囲のイメージも出来る様になりましょう。エディさんが実験台になってくれますよ」

「……、今、寝てるけど」

「大丈夫です。二つ返事で頷いてくれると思います」


 したたかだ。

 リオーネは、彼の自分への好意を分かっていて利用している。かなりあざといと、カイリは遠い目になった。女性には要注意である。


「ただ、範囲指定という概念がいねんがあるのは、基本的には聖歌だけです」

「聖歌だけ? えっと、聖歌語は」

「例外は置いておきますが。聖歌語は、使い手が目に見える範囲で、しかもきちんと自身が認識していなければ効果がありません。更に複数相手だと、結構な素養が必要になりますしね。当然、見えていない背後には効果がありません」

「……どうしてなんだ?」

「詳しくは、何とも。けれど、恐らく強いイメージを相手に叩き込む必要があるからと言われています。効果時間も短いです。聖歌語は、短い単語や文章だけで効果を発揮する分、デメリットも多いということですね。対して聖歌は、範囲指定をしなければ、その聖歌を聞いた者全員に効果があるんです。ただし、効果が現れるまでに少しだけ時間がかかるので、最初に潰される可能性も高いです」

「へえ……」


 何だか、だんだん難しくなってきた。

 取り敢えず、聖歌語は使い手が相手を認識している必要があるが、聖歌は指定をしなければその必要は無い、ということだけ頭に叩き込む。


「あと、体力についてですが……これも積み重ねるしかありませんね。あとは、体力の配分です」

「配分?」

「はい。例えば、十キロメートル走る時、常に全力で走ったりはしないでしょう? それと同じで、歌を歌う時も何曲歌うかとか、考えながら配分するんです」


 マラソンに例えられると、納得は出来る。歌だって、喉の調子を考えれば常に全力で歌い続ければ死ぬ。

 しかし、体力の配分を考えつつ効力を落とさない様にする。なかなか難題に思えた。


「大丈夫です。走るのと同じで、要は慣れです。一曲で勝負をつけたい時は、一曲に全力を注ぐとか、そういう使い方が出来る様になります。体力もつけていけば良いですし、一緒に頑張りましょう」

「……、うん。よろしく」

「はい♪」


 楽しそうに請け負われ、カイリは胸を撫で下ろす。

 昨夜の様子だと、もしかしたら彼女はカイリにあまり良い印象を抱いていないのではと思ったが、それでも自分と普通に接してくれる。それがありがたかった。

 信頼関係はこれから少しずつ築いていけば良い。ぐっと拳を握って、カイリは気合を入れた。


「よし。しばらくは練習だな!」

「そうですね。聖歌は同じ曲でも、違うイメージを浮かべれば別の効果も発揮出来ます。聖歌語は言葉通りのイメージしか表せませんが、聖歌は歌詞とは全く異なるイメージも表現出来るんです。色々考えてみるのも楽しいですよ」

「へえ、そうなのか。……そういえば、リオーネはどんな歌を歌うんだ?」

「私ですか? 百人一首です」


 ひゃくにんいっしゅ。


 何だかとんでもない言葉を聞いた気がした。

 首を傾げてもう一度視線で問うてみるが、彼女の答えは変わらなかった。


「百人一首です」

「……百人一首って、……あの、五七五七七の?」

「はい♪ 和歌です」


 和歌。


 いや、歌は創作でも何でも構わないと言っていたから、種類は問わないのだろう。

 だが、どうやってもすぐに一曲が終わってしまう。どんな風に歌い上げるのだろうかと考えていると。



「一つの和歌を適当に訳して、適当に妄想で物語を創り上げ、適当な旋律に乗せて適当に歌っています」



 適当多すぎだな。



 しかも、妄想とまで言い切った。

 つまり、和歌の内容の正否は問わず、自分の好きな様に想像して歌を創り上げるということか。

 改めて聖歌の自由さに、カイリは聖歌を神聖視している教会へ益々謎が募っていく。理解不能だ。



「あ、忘れていました。カイリ様、先程話していた聖歌の効果なのですけど」



 ぱん、と両手を合わせてリオーネが補足をしてくる。

 そういえば、『具現化』について解釈の齟齬そごがあった。大事なことだと、慌ててカイリは耳を傾ける。


「聖歌も聖歌語も基本、歌い手や使い手のイメージを具現化するものですが、絶対に出来ないことがあります」

「出来ないこと?」

「はい。それは、……人を殺す、ということです」

「っ」


 一気に物騒な内容が押し寄せた。

 カイリが短く息を呑んだのを見て、リオーネが困った様に眉尻を下げる。


「すみません。刺激が強すぎましたね」

「あ、いや。えっと、……聖歌でその、……」

「はい。命を奪う想像をどれだけ強くしたところで、実際に相手の命を奪うことは出来ません」


 カイリの言いにくい部分を察して、リオーネが引き継いでくれる。

 己の情けなさに頭を抱えたかったが、続きがありそうなので根性を入れて耳を傾けた。


「聖歌や聖歌語は、相手に重さを感じさせたり、身動きを取れなくさせたりと言った、その人自身の五感機能等への働きかけは出来ますが、人の体を壊す、ということは出来ません」

「……っ、……壊すっていうのは」

「臓器を潰したり、神経をおかしくしたり、血管を切ったり。そういうことですね」


 益々嫌な話になった。

 だが、今の内容はそういった物騒なことは出来ないという話だ。思い直して、カイリは疑問を口にした。


「体を重くしたりは出来るのに、人の器官には直接影響はないってことか?」

「はい。重く感じても、雷が直撃した様な衝撃を受けても、それはあくまで受けた感じがする、重くなった気がする、ということです」

「気がする、だけか」

「はい。詳しい仕組みは分かりませんが、聖歌や聖歌語は、聴覚を通して脳波を乱したり、脳に錯覚させたりして、歌い手の想像を強くダイレクトに伝えている様な感じなんです。だから、耳が聞こえない人には効果がありません」

「へえ……」


 脳に錯覚させる。


 確かに、視覚も触覚も脳が処理する様な形になっている。はずだ。

 それを乱して、あたかも本当に己の身に起こった様に思わせているということか。つくづく『聖歌』の存在が謎である。

 だが、歌を聞かせて効果を与えるということが分かっただけでも収穫だ。耳が聞こえない人に効果が無いというのも、注意点として脳内メモに明記しておく。


「だから、どれだけ肩が潰された様な感じになったり、穴が開いた様な感覚を受けても、実際はそうなっていません。聖歌の効果が切れれば、感覚も元通りになります」

「……、そう、なんだ」

「あと、可能だけれど、あまり現実的でないのが自然現象です」


 自然現象。


 話が大きくなってきた。

 急な坂道を駆け上がる様な変化に、カイリは付いていけるかどうか不安になる。


「化学的な現象とは違いますよ。自然現象とはこの場合、雨を降らせたり、雪を降らせたり……つまり、気候のことを指します」

「……嵐を呼んだり、雷を落としたり? 炎を出したりするのとは、また別ってことか?」

「そうです。そして、この現象は聖歌に限ります。聖歌語では無理です」

「聖歌が、特別ってこと?」

「はい。聖歌の摩訶不思議です。人に対するのとは働きかけ方が違うとも言われています」


 摩訶不思議とまで言われると、カイリも突っ込みがしにくい。

 つまり、この世界では聖歌はまだまだ謎の領域にあるということだ。


 ――村で起きた現象は、どうなのだろうか。


 魂も音に反応する、聞けると仮定して、それだけで実体化出来るとは考えにくい。それとも、音の導きによって魂も頑張って体を具現化するとかそういう話なのだろうか。

 研究が進めば、新たなる発見があるのかもしれない。カイリ自身も謎は解きたいし、気にかけておくことにする。


「聖歌が空気を伝って、そこかしこに満ちた元素に働きかけ、局地的に現象を巻き起こすという感じだと一説には言われています。この場合は、人の脳への働きかけは不要です」

「元素に働きかける……。化学現象の方は?」

「聖歌語限定の現象ですね。実は、聖歌で化学現象はほぼ不可能と言われています」

「え? 不可能?」

「はい、そうです。そして、炎を出したりなどの化学現象も、基本は自然現象と同じ仕組みと考えられています。姿を隠すために、光の屈折を変えたりするのもそうだと言われています」

「ああ……」


 父や、カイリを追いかけてきた第一位の騎士が使った聖歌語のことだ。

 ただ、姿を隠すために屈折角度を変えまくるのはかなり難しそうなのだが、この辺りも「謎です」の一言で返されそうだ。疑問は脇に置いておく。


「ただし、炎などを人に当てたり、人から出すことは出来ません。先程の、人に対しては錯覚させる以外は出来ないというのと一緒ですね」

「そうなんだ……良かった」

「あと、化学現象もかなりのイメージ力と、使い手自身の相性が必要です。例えば、フランツ様は炎は出せますが、水の生成など、他の不可思議現象は全く駄目です」

「なるほど……」

「リオーネ……何故、団長である俺の弱点を言ってしまうのだ」

「例示は必要ですから♪」


 事もなげに言ってのけるリオーネに、フランツが渋面になる。やはり、団長としての面目は欲しいのだろう。

 そういえば、確かに村を消化する時、フランツもシュリアも『消す』という単語を使っていて、水を出したりはしていなかった。そういうことだったのかと、に落ちる。


「ただし、聖歌で起こる自然現象については、化学現象以上の想像力が必要なのと……聖歌と歌い手が密接な関係にあることが要だと言われています」

「密接? えーと……よく分からないんだけど」

「はい。私も分かりません」



 分からないのかよ。



 表情だけで突っ込むと、リオーネは良い笑顔を返してきた。解説する気が絶無の様だ。

 だが、分からないものを分からないと明言してくれるのは、カイリ自身もありがたい。追々、可能ならばカイリも模索してみようと心に決めた。


「可能性としては、その聖歌がいかに自分に合っているか、かもしれません」

「相性ってことか?」

「はい。だから、歌が思い付かない人への救済用に教会が作った聖歌だと、自然現象はまず起こらないと思います。自分が作った歌の方が可能性は大きいかと」


 つまり、自分に一番合っている歌なら、自然現象という現実的でない現象も起こせるということか。

 推測ではあるが、取っ掛かりにはなるだろう。


「まあ、自然現象を起こせるのは、都市にいる騎士団の中でも両手で数える程度だ。だが、カイリも出来るかもしれんな」

「えーと、……今度試してみます」

「そうしてくれ。『故郷ふるさと』の力は駄目だが、自然現象までなら振るっても構わない。あと、もちろんケント殿は出来るぞ」

「え。出来るんですか」

「ああ。ケント殿は、騎士団の中でも聖歌の威力はトップクラスのはずだ。ただ、武術も最強候補の一人だから、あまり聖歌に頼る場面が無い」

「は、……」


 ケントは武術も最強で、聖歌も最強。


 流石は第一位の団長を十八歳の時から務め上げるだけはある。前世でも優秀だったが、この世界でも同じ道を辿っているらしい。

 最初から大きく差を付けられていて悔しくはあるが、カイリは自分に出来ることを探していきたい。


 自分は自分。ケントはケント。


 素直にそう思える自分に驚きはしたが、これも村の人達の、特に両親のおかげかもしれないと感謝した。


「でもよ、聖歌に頼る場面が無いっていうけど、あいつ戦場にいても滅多に使わないんだよなー」

「そう聞いていますね。だから、能力の底上げとかはもっぱら他の聖歌騎士に任せているとか」

「実は歌えないんじゃありませんの」

「いや、そんなことは無いぞ。彼の歌を聞いたことがある人間は、『この世の地獄を見た』といつくばっていたからな」


 どんな聖歌なんだ。


 だんだんと凄まじい方向へ転がって行く談義に、カイリは一人戦慄した。特に、この世の地獄を見る聖歌とは一体、と無意識に目が泳いだ。



「まあ、とにかく。これで、方針が決まったな」



 ぱん、とフランツが手を叩く。

 眠気を払う様な強い音に、エディ以外の全員の目が大きくなった。


「カイリ。お前はしばらく、剣術と聖歌の訓練に専念してもらう。掃除……はほぼエディだが、手伝える時に手伝ってやってくれ。食事当番は交代制だから、リオーネの次の日にしようか」

「はい。……って、あ」


 了承してから、カイリははたと我に返る。

 料理。

 それは、カイリにとって鬼門だった。


「……。あの、フランツさん」

「何だ?」

「俺、……料理、何故かいつも爆発するんです。だから、作れないんですけど……」


 恐る恐る進言すれば、全員が一瞬沈黙した後。


「よしっ。そういえばカーティスが手紙に書いていたな。カイリは料理を爆発させる天才だと」


 自慢になっていない。

 どんなことを手紙に書いたのだと泣きたくなったが、カイリの煩悶はんもんには構わずにフランツは話を進めていった。


「ならば、手伝える時に食事の手伝いをしてやってくれ。手伝いはプロ並みだと書いてあったぞ」

「……はい」


 母から色々技を伝授されたから、手伝いだけは可能だ。

 しかし、本当に手紙はどこまで書かれていたのだろうか。

 父の暴走っぷりの酷さを知っているだけに、カイリはフランツの知識の深さを別の意味で恐れるのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます