9.

 ――追憶は終わり、再びあの地獄のような現実へと帰ってくる。



 浜辺に広がるガラクタは数多くあれど、赤子の数は郡を抜いている。絶えず吐き出され、そしてものも言わずにそこにある。何のために、誰のためにあるのかも分からないまま。



 もしも人形であったなら、まだ良かった。だがそれらは手足を動かし、目や口を動かしている。

 人間なのか、レプリカントなのかは分からない。だがどちらにせよ、事実を私は許容出来ない。


「気持ち悪い……」


 初期化イニシャライズを行われた後、世界に何が起きたのか。

 何故私はここにいるのか。

 ここはどこなのか。

 自動販売機に何の意味があるのか。

 これは夢なのか、現実なのか。

 何も分からない。

 未知――未知なる脅威を、人は恐れる。旦那様の言葉がフラッシュバックする。



 これは、本当に「未来」なのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る