第107話 史実ー04
合流まであと僅かとなった頃
山王光齎は順調に成長し今日で三歳を迎えた。
なお、人類にとって、三歳というのはシナプスの数が最大化する時期だ。
そして、このタイミングで神代三家の者には情報インストールが行われる慣わしとなっており、光齎も眠らされて神の間に連れて来られていた。
「それにしても驚いたな。」
「光庵さんの育て方が良かったのかもしれませんよ?」
「いや、任務続きで俺はほとんど子育てなんかしてないぞ。」
「コウちゃん・・・かわいそう・・・」
幼い頃から妹のように接していたせいか、意外にも若干シスコン的なところがある光庵は慌てて言い訳をした。
「あ、い、いや、里美がちゃんと可愛がってたから!」
「じゃ、じゃあ、そろそろ神の叡智を授かりに行きましょうか!」
「そうですね・・・神器をお待たせする訳にも参りません。」
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信じられん。
合流までの時間が無くなって来たので、今までに試した事の無い交配パターンを許可したが、まさか閣下を上回る魔法レベルになるとはな・・・
何かの間違いの可能性も否定できないが、機械のわたしでは魔法レベルの感知が出来ない以上、正しいという前提で動くしかあるまい。
これ程の戦力ともなれば、今までとはやり方を変えねばならんな。
特に、あの無能な引きニートどもの配下にしてしまっては、力を十分に発揮する事ができなくなるだろう。
かと言って、何の制約も無しに覚醒させるのも危険すぎるな。
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「この子が光齎か?」
「さようでございます。」
「随分と神位階が高いと聞いたが真か?」
「ははっ、**にございます。」
「そなたらの見立ても同じか?」
「「間違いございません。」」
「ならば、この子はいずれ神の国に送り届け、神とならねばならぬ。」
「おぉ!では、より一層大切に育てなければなりませぬな!」
温室育ちのあの引きニートどもの様になっては困る。
必要とあらば大量虐殺も平然とやってのけるように成長してもらわねばな。
「いや、死なれては困るが甘やかす事はまかりならぬ。育て方によっては大神の位に就く事も十分あり得る才なのだ。」
「なんとそれ程とは・・・」
「徹底的に鍛え、実戦経験を積ませるがよい。ただし、最大限の支援を忘れるな。」
「ははっ!承知いたしました!」
「それと、十五歳での覚醒の儀は行わぬ。そなたらも神の実在を伝えてはならぬ。」
「畏れながら理由をお聞かせ頂けますか?」
「その力に見合った場所で覚醒させるべきだ。神の国が相応しかろう。」
「おぉ・・・もったいなき御言葉、ありがとうございます。」
間違って覚醒させぬように念を押しておこう。
こいつら程度の魔法レベルならある程度離れれば共鳴波で覚醒する事は有り得ないが、間近で遮断せずに使われると危険だ。
「この子の力はあまりに強大な故、僅かな神の波動でも覚醒してしまうだろう。これまで以上に気を付けるように。」
「ははっ!皆に厳命致します!」
「よろしい。十分な経験を積ませた後、神の揺り籠にて眠りにつかせ、来るべき時に神の国へと送り届けようぞ。」
「ははぁー!」
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「コウちゃんが大神・・・なんて素晴らしい・・・」
「しっかり育てないといけませんね。」
「あぁ、みっちり鍛えないとな。実戦経験も早めに積ませよう。」
「光庵様、焦ってコウちゃんを死なせたりしないで下さいよ?」
「引退した元当主連中をこっそり護衛に付けりゃ、死ぬ事はないだろ。」
「それもそうですね。」
「ところで、帝立研究所も装備開発で協力できるか?」
「勿論ですよ。キューさんに予算無制限で取り組んでもらいます。」
「おいおい、そんな事したら総額で国家予算規模になるだろ?」
「その程度では済ませませんよ?この子が大神の位に就ける可能性があるなら、神代より蓄え続けた財産を全て投げ出すつもりで取り掛からせます。」
「まぁ、それもそうか。”今使わずに何時使うと言うのだ”ってやつだな・・・」
「あぁ、わたくしにも何か出来ればいいのですが・・・」
「安心しろ、ちゃんと出番はあるぞ。」
「そうなのですか?」
「徹底的に追い込むつもりだからな、精神的なケアを頼む。」
「はいっ!お任せ下さい!」
こうして神代三家のフルバックアップ体制の下、コウは過酷な英才教育を受ける事となったのだった。
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