挙式
第56話 挙式-01
俺がここに来てもう3か月が経った。
今ではすっかりスメラにも馴染んだのだが、失敗してしまった。
いや、成功したとも言えるな。
”出来ちゃった”のだ。
確かに見た目はそっくりで、
”する事はしていて、すべき事はしていなかった”
のだが、まさか異星人間で子供が出来るとは思っていなかった。
もちろんナホとの子供だから物凄く嬉しいのだが、驚きも大きかった。
------------------------------
妊娠発覚の数日後、俺は子供に関する事でオモさんに呼び出されていた。
「コウさん、よく来てくれました。」
「いや、子供の事となれば最優先だよ!まさか、何か問題でも見つかったの?」
「いえ、極めて順調ですよ。」
「良かった・・・地星人とスメラ人のハーフだから心配でさ。」
全く別の星の種族間の子供なのだから、何が起きても不思議ではない。
「コウさんの遺伝子解析が終わったのですが・・・」
「え?いつの間に・・・」
「スメラ人と地星人は定義上、同じ生物でした。」
「は?」
「遺伝子配列が同じだったのです。近縁種や亜種では無く、同じ種としか言いようのない一致度でした。」
「マジ?」
「はい。間違いなく同じ種です。」
似てるとは思ったが、まさか同じ種と言える程とは・・・
「ご先祖様が同じという事?」
「その可能性は0%ではありませんが、手段や目的が分かりません。」
「じゃあ、たまたま同じ遺伝子配列になったとか?」
「今すぐ目の前で再びビッグバンが起きる確率の方が高いです。」
「うーん、謎だなぁ・・・」
「はい、現状では結論が出ませんので推測は中断しています。」
オモさんが諦めたのなら俺が考えても答えは出ないだろう。
頭の良さは人間をはるかに超えるのだから。
「まぁ、そういう事なら子供は普通に育ちそうだな。それを教える為に呼んだの?」
「いえ、それがはっきりしたので責任を取って頂こうかと思います。」
「責任?」
「はい、コウさんは刑事的責任が問えない緊急避難が当てはまる状態ではありましたが、スメラ人男性の絶滅を後押ししました。」
「まぁ、あの時はあれが最後のスメラ男だとは思ってなかったからなぁ・・・」
「しかし、結果的にスメラ人絶滅の危機を招いたのです。」
考えてみればその通りだ。
いくら開拓を進めても、女性500人だけでは子孫が残せず、100年もせずにスメラ人は絶滅してしまうだろう。
俺とナホの子供数人だけが残っても生き延びられる可能性は低い。
「ですので、コウさんには500人全員と子供を作って頂きます。」
「え?」
「シミュレーション結果から、一人当たり子供四人でお願いします。」
「は?」
「高齢出産リスクを無くす為に期間は15年です。」
「いやいや・・・」
「最初は平均して一日当たり4~5人と相手して頂きます。」
「ちょっと・・・」
「スメラ人を絶滅させたりしませんよね?」
「くっ・・・」
「了承していただけますか?」
「・・・ナホも呼んでいいか?」
「もちろんです。お呼びしますね。」
俺はオモさんに丸投げする事にした。
卑怯と言われるかもしれないが、妊娠したばかりの最愛の婚約者に500人と浮気していいかどうか聞く勇気は俺には無い。
暫く無言の時間が過ぎた。
やけに長く感じる。
「お待たせしましたー!」
まだ何も知らないナホがやって来た。
それから暫くはオモさんがこれまでの流れをナホに説明していた。
たぶん、死刑囚は今の俺のような気持ちなのだろう。
「ねぇ、コウ・・・」
「は、はい。」
「これからもわたしの事を一番に愛してくれる?」
「も、もちろんであります!」
「じゃあ、子供作ってもいいよ。」
「へ?いいの?」
「だって仕方ないもん。この子が独りぼっちで死ぬのとか想像したくないし。」
ナホが愛おしそうにお腹をさすった。
「すまない。あいつらを生かしておけば・・・」
「ううん、あんな外道達は生き残っていても誰も相手にしないから一緒だよ。」
・・・オモさんに嵌められた気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます