第37話 大戦-07
あの異形の者から幾条もの光が迸った瞬間、わたしは理解した。
”あれは魔法だ”と。
決して気が狂った訳では無い。
ごく自然に、当たり前の事として、魔法というものがはっきり理解できたのだ。
逆に、なぜ今まで使えなかったのかが不思議なほどだった。
そもそも魔法とは、脳内で形成した明確なイメージを脳内の特定の部分と共鳴させる事によって、現実の世界でイメージに沿った物理現象を起こす能力だ。
わたしはこの共鳴させる脳の領域を魔法野と名付けた。
また、魔法にはステータスというものがあり、イメージすれば何でもできるという訳では無い。
このステータスはゲームなどと違い、経験を積んでも最大値が増えるような事は無い。
更に、物理現象を起こすにはエネルギーが必要だ。
このエネルギー、ファンタジー的な表現をするなら魔力は、虚界から供給されるダークエネルギーだ。
これらの事は実験を積み重ねて確認した事では無く、魔法を理解した瞬間に直感的に分かった事だ。
研究者としては失格かもしれないが、明確にそうだと分かってしまったのだから仕方がない。
もちろん、どんなに能力があっても、使いこなす為には訓練が必要なはずだ。
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まずイメージに関する重要な事だが、単なる妄想では発動できず、物理法則に従っている必要がある。
そしてイメージが正確であればあるほど効率が上がる。
例として物体を動かす魔法を挙げてみる。
・ビュンと動くといった程度のイメージでは効率が低すぎて碌に動かない。
・古典力学に沿ってイメージをすればほぼイメージした通りに動く。
・ただし、光速に近付いて行くと相対性理論でイメージしなければ効率が落ちる。
といった具合だ。
戦争で使うならせいぜいマッハ100程度の低速なので、古典力学で十分だろう。
ちなみに、物理法則に反するような事は出来ないし、仮に、未だに発見されていない物理法則では可能な事象であったとしても、正確なイメージが出来ない以上は効率が低すぎて実質的に発動できないのだ。
そして、人類が未だに到達できていない宇宙の究極の真理に基づいてイメージできれば、おそらく効率は100%になるのだろう。
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次にステータスだが、これには主となる1つとそれに従属する3つで構成される。
魔法レベル
これは魔法使いとしての強さを表すものだ。
原理は分からないが、量子化された、平易な言葉で言うなら飛び飛びの値となる。
従属する3つのステータスは全てこの魔法レベルによって決まる。
魔力
いわゆる威力に近いが若干違う。
魔力とは魔法に注ぐエネルギー量だ。
実際の威力は魔力に効率を掛けた値になる。
魔量
いわゆるMPだ。
魔力を使えば減るが、自然回復する。
魔充
こちらはMP回復速度と考えて差し支えない。
魔量へのダークエネルギーの供給速度だ。
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魔力の元となるダークエネルギーだが、これは知っている者も多いだろう。
宇宙が加速的に膨張している事実から導き出されたエネルギーだ。
もっとも、ダークエネルギーそのものを観測できた訳では無く、膨張している事実から”存在しなければ説明がつかないエネルギー”として導き出されたものだ。
このエネルギーの不思議なところは、”薄まらない”事だ。
通常のエネルギーであれば、空間が膨張すればそのエネルギー密度は低下するので、宇宙の膨張は減速する筈だ。
しかし、宇宙が加速的に膨張し続けている事実から、ダークエネルギーは空間が膨張した分だけ補充されている事になる。
長年、謎に包まれていたエネルギーだったが、魔法使いとして覚醒した瞬間にその正体が理解できた。
これは虚界から供給されているエネルギーなのだ。
虚界とは、一言で言うなら、我々の世界である実界とは直交する別の世界だ。
単純化の為に一次元で考えると多少は分かり易くなるかもしれない。
我々の住む実界は、1,2,3など我々の認識できる世界だ。
一方の虚界は、i,2i,3iという我々が認識できない世界だ。
そして、実界は虚界の一点と直交しているのだ。
魔法使いになっても虚界のどの座標と交わっているのかまでは分からないが、仮に座標iと交わっているとして話を進めよう。
我々が1だと思っている座標は実は1+iであり、2だと思っている座標は2+iなのだ。
当然、宇宙が膨張して新たに生まれた空間も自動的に虚界と交わっている。
そして虚界からは、その一点から実界のダークエネルギー密度が常に一定になるように絶え間なくエネルギーが供給されているので、加速的に宇宙が膨張しているのだ。
魔法使いの持つ魔量というのは、例えるなら虚界と実界の狭間である遷移界に存在するエネルギーボンベのようなものだ。
そして魔充は虚界というエネルギー供給源とボンベを繋ぐパイプであり、魔力はボンベと魔法という実界の物理現象を繋ぐパイプだ。
魔法レベルによってボンベの大きさやパイプの太さが決まっている訳だ。
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