新たなる目的
第25話 宿主との面会
宿主二人はノマドさんがログハウスのアジトに収容した。
二人の意識は今はまだ戻らないそうだ。
栄養状態はそんなに悪くはないようだが、健康状態としてはあまり良いとは言えないとノマドさんは言う。
睡眠があまり取れていなかったのか、目の下は隈が色濃く出ていた。何より『全身のあちこちに掻きむしったような傷があり、苦痛の痕がみえた』と治療にあたった精霊達が話していた。
少なくとも僕が見ただけでも、両手の指はヤスリでもかけたようにボロボロで、流れ出た血が黒く塊になっていて痛々しかった。
「治療に関してだけど、こちらの世界と僕の世界、
僕はノマドさんに聞いてみた。
「痛みを取る治療であるなら、どちらも出来ることは同じようなものです。ただし、彼らは元々現世の民。あちらでの治療の方が混乱はないでしょう。」
静かにノマドさんが説明してくれる。
「ただ、問題が一つ。意識が無いため、彼らの身元がわからないのです。身分を証明出来るものも所持していないようです。せめて保険証や免許証でも持っていれば…」
「うーん、流石に身元がわからない人たちを医療機関に連れていくのは難しいか。それにこの怪我は絶対事件性を疑われるよね…」
僕は目の前に横たわる二人の人物を見ながら考えを巡らす。
「多分この人達は影に取り憑かれていた時の記憶を持っている可能性が高いと思うんだ。体の治療も大切だけど、少なくとも心のケアは必要だよね。そんな中で現世の医療機関にお願いしたら、事件性を疑われて警察に通報されて色々聞かれるよね。でも本当の事を話してもきっと誰も信じてくれないはずよ…。そうなったらどうなるかな?場合によっては悲しい結果に繋がる可能性だって否定できないよね。僕は絶対それだけは避けなきゃいけないと思うんだ」
「ちなみに、この人達の最近の記憶を消すことはできる?」
「暗示をかけて記憶を操作をすることは私にも可能でございます。記憶の操作は例の魔女がもっとも得意とするものでございました故に、私にも修得しております」
ノマドさんは記憶を操作できるみたいだ。
「意識が戻って様子を見て、それからどうするか決めようか。場合によっては最近の記憶を消してもいいと思うけど、それは僕ら第三者が勝手に決めて良いものじゃないと思うんだ」
「それから体の傷だけど…なんとか残らない様に出来ないかな?少なくとも女性には酷だよね…」
「ごもっともにございます。しかし私は治療系の魔法を存じ上げません。魔女は人に危害を加えることはあっても治療を施すことはありませんでしたから…」
…そうだよね、ノマドさんのことだもん、もし治療系の魔法を知っていたら祖父を治療していたはずだよね。
「輝様、とりあえずこちらの事は私共に任せ、一度現世にお戻りになられては?何かあれば精霊を使いに出しますので…」
「わかったよ。二人の意識が戻ったら教えてね。母にバレないうちに一度家に戻るよ」
僕は常時接続の扉を使って自室に戻るつもりだった。
重力の方向に気を付けながら、頭から扉に入る。
───すると、目の前に母の顔があったんだ!
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