第10話 自宅のベッド で一晩中

コーヒーをいただいたあと、隠れ家から鍵束を使い自宅に帰った僕はベッドに寝転んでため息をついた。

「彼方の世の事も気になるけど、まずはこっちに来てるって言う影を何とかしないとだよな。」

電車から飛び出した時に見た男女、あれがきっとそうだったんだよね。


ほんの一瞬だったからはっきりと顔は覚えていない。


影に寄生されている人を早く解放してあげないと…

寄生されている人にも本当は暮らしがある筈なんだから…。

影は祖父の住んでいた家を根城に僕を探しているとノマドさんは言っていた。

寄生された人は本来行くべき学校や会社に行くとかいう、通常の生活ができなくなっているはずだ。

心配している人もいるだろう。


あまり時間をかけてはいけない。


時間がかかればかかるだけ、元の生活に戻れなくなる可能性が高くなるだろう。

今なら『ちょっと身内に不幸があって急遽県外に行っていた』とか、それくらいのレベルで誤魔化すことも出来るだろうが…


これが1ヶ月、2ヶ月…と増えれば増えるだけ、元の生活にもどることは難しくなるだろう。


まず、どうやって宿主と影を切り離すか。


次に、切り離した影が次の宿主に寄生せずにすむ方法はないか?


更に影にどう対処するのか?


難しい問題だ。


「コミュニケーションはなんかとれそうだし、ダメ元で影に交渉してみるか?」


でもなんて交渉したらいいのかな、

『宿主から離れて彼方の世に帰ってよ!』

…タダで帰ってくれるわけないよな。


代わりの宿主を探してそっちに乗り換えてもらう?

…乗り換えるのに旨味がなければ乗り換えないよなぁ。

スマホでも通話料金や安くなるとか、速度が早いとかそんなのがなければ乗り換えなんかしないもんな。

何に乗り換えたら影に得があって、僕らの危険もなくなるか…


「僕に乗り移らせたら…??そうしたら僕が宝の地図の所在を知らない事が影にも伝わるんじゃないか??」


…でもその後僕に乗り移った影はどんな行動に出るだろうか?

鍵束を使い、悪さをするかもしれない。

自暴自棄になり、大変な問題を起こすかもしれない。影と言えど元は魔女の一部だったわけだし、魔法が使える可能性だって捨てきれない。


明日学校が終わったら隠れ家に行って、僕に乗り移らせる案をちょっとノマドさんに聞いてもらおう。

そのまま使えないけど、そんな案から何かしらの進展があるかもしれない。


何でもいいから否定しないでとにかく自由に案を出す、『ブレーンストーミング』って考え方が問題解決の方法としてあるんだけど、こういう時に役立つかもしれない。

もう少し色々案を出してみよう。

その案を明日ノマドさんに話をしてみようかな…


そんなこんなで、一晩中影を引き剥がす方法について考えている内に、朝になっちゃったよ。







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