第13話 高校生

 高校生たちがマフラーをし、ダッフルコートを着て帰路に就いている。俺も数年前までは同じ生活をしていたなあと考えながら、四人組の間をすり抜けるようにしてすれ違う。

 テストの事、部活の事、可愛い女の子の事、そんな他愛ない会話で盛り上がり、駅前のマクドナルドで何時間も話し込んだりした。

 まあ、その辺りは今も時々似たような事をするけれど、それでもあの時ほどの輝きはないように思う。どうして高校生というのはああも輝いているのだろうか。

 そんな事を考えている時点でかなりおっさん臭いな、なんて思っていたら前からどこかで見たような顔の女子高生が歩いてきた。どこかで会ったのだったっけ?

 ただ、俺に女子高生の知り合いがいるなんて記憶はなかった。ハテ。


「今日はどこ行く訳?」


 すれ違いざまにそう言葉を投げ掛けられて、俺は目を見開いて後ろを振り返った。その、声は。


「と、とおる……?」

「男じゃなくて悪かったね」


 切れ長の目に睨まれる。紺色のスカートからすらりと伸びた脚が、眩しい。

 ローファーがコツコツと地面を叩いた。


「で、どこ行くの」

「なんで?」

「嫌な気配がする」

「げぇ」


 俺はつい二十分程前に掛かってきた電話で告げられた目的地を口にした。そこは隣街の外れにある廃病院で、この辺りではそこそこ有名な肝試しスポットだった。

 ただ、肝試しスポットというだけあって、雰囲気はめちゃめちゃ怖かったけど何事もなく肝試しを終えられた、という声が多く、心霊スポットとしてはあまり盛り上がっていない場所でもあった。

 地元の小学生までもがそこで肝試しをするというのだから、大したモノはいないのだろうと高を括っていたのだが。


「ふうん。あそこならそこまでじゃないとは思うんだけどな……なんでそんな嫌な感じなんだろ」

「ビ、ビビらせんなよ……」

「ビビりならそんなとこ行くなよ」

「……ごもっとも」


 じゃあ、と俺が別れの言葉を口にする前に、透が自分も一緒に行くと言いだした。俺は顔をしかめ、女子高生を連れ歩く趣味はない、と言うと、それじゃあ着替えて追いかけるから自分が着くまで病院には入るな、と。そう言うや否や透は駆け出していた。


「俺の話を聞いてくれる奴がいない」


 俺はがっくりと肩を落とし、廃病院前で待つ智充さとるに透の事を告げた。智充には透が女子高生である事は言わずにおいたのだが、遅れて到着した透に可愛い女の子だね、なんて笑うものだから、俺の目が節穴なのだと自覚した。

 透は自転車を門の前に停め、背負ったリュックからヘッドライトを取り出して首から下げた。


「やる気まんまんじゃん」

「アンタが呑気なだけ」

「はい」


そうして俺たち三人は、廃病院へと足を踏み入れたのだった。

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