有馬灯真篇
第3訓 一人の季節
ある休日、灯真と将気、雪菜と朧は弁当を持って桜の花が散る前に山の麓にある公園に来ていた。
「それにしても久しぶりだな……。何年ぶりだ? ここに来たのは」
「あれからもう五年以上前になるんじゃないのか? あの頃は俺達も小学生だったよな。久しぶりに登ってみると、足が疲れて筋肉痛になりそうだ」
「ははは……。普段から運動してないからそうなるんだよ。灯真も運動部に入ればいいのに……」
膝に手をついている灯真に対して、余裕そうな顔をしている将気は普段サッカー部で鍛え上げた体力と筋力が灯真との差である。
灯真の後ろで立っている雪菜と朧は平気そうな顔で微笑んでいた。
息切れしている灯真は二人を見ると、
「なんでお前らは疲れていないんだよ。この坂道意外と角度があったはずだぞ」
「私たちは妖ですから、登っただけで疲れることはないんです」
「そうだな。私は灯真よりも軟弱な体で出来ておらん。隣の友人は、少しはマシな体をしておるな。だが、もう少し足腰を鍛えればバランス的にいいと思うな」
朧は将気の肉体を見て、頷きながら呟いた。
「そうなんだよな。足腰を鍛えなおしているんだよな。だから、この頃シュートの時にキーパーに止められることがあるんだよな」
将気は少し落ち込む。
「と、言いたいところなんだが灯真、この綺麗なお姉さんは誰? ここ最近、一緒にいるようだけど……」
「ああ、まだ、説明がまだだったな……。こいつは朧。妖だ。害はたぶんないから普通に接してやってくれ」
「俺は浦原将気、こいつの親友だ」
「私は朧だ。貴様、私の灯真に何かしたら分かっているだろうな?」
と、朧は将気を見る。
「朧、そういう言い方やめろ。せっかくの花見は台無しだろ?」
灯真はやっと重い体を上げて、空を見上げると青空が広がっていた。
なぜ、この四月の終わりごろに花見をすることになったのか。少し前の事になる。
あれは、五日前の冷たい雨が降っている時だった。
学校の廊下は湿気によって滑りやすくなっている。
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