第117話 教えてよ
俺達はイダンセを出発し東の海がある方へと向かった。
距離は馬車で一日程、ただ吸血鬼は太陽の光が苦手である為、古城への潜入は日中に行うのが望ましく、夜間の探索は死を意味するそうだ。夜間は古城周辺飛び、人間の女性を見つけては連れ去っていくので古城から離れ死角になる場所に野営を立てて朝から潜入するのが良いと出発する前の冒険者ギルドから直接もらった情報である。
情報通りに俺達は荷馬車で古城を目指し、目的地手前の森の中で野営をする計画となった。馬車内の空気が非常に重く女性陣全員が俺と話さない。
例の二人はともかくとして、ソマリや、やたら絡んでくるコハルも俺と目線を合わせてはくれない。それに反比例してか女性陣がロイスにばかりやたら話しかける姿が目に映ってしまう。
彼女等は普段と変わらない接し方をしているのかもしれないが、ここまで対比した対応をされると気が滅入っていく。
更にロイスも、俺を気にしてかチラチラと見てくるのが何とも言えなかった。
夕方、更に第一目的である野営地へ到着し、各々が分散しまた俺一人が待ちぼうけとなってしまう。
今度はもうシャルに話しかけることはしないし、誰かに話しかける空気でも無い。
孤立感が更に深まっていた。
「……イット君」
夕日を見つめていると、草陰から小さな呼び声が聞こえてくる。振り向くと、草陰に隠れている野営地を守るため祠を作っているはずのソマリだった。
彼女はこちらへ「こっちこっち」と手招きをし呼んでいる。
恥ずかしながら本当に俺を呼んでいるのかと後ろを確認してしまったが、名前も呼んでいたし俺が呼ばれたのだと確信し、辺りの様子を窺いながら彼女のいる茂みへ向かった。
「何だよソマリ。俺と話して大丈夫なのか?」
「あー……何か今、例のシャルちゃん強姦疑惑のせいでそんな雰囲気になってるよね。でも、ウチとコハルちゃんはイット君がそんなことをしないってわかってるから安心していいよ!」
そう思ってくれるのは有り難い話だが、やはりそういう空気を女子達が持っているのだなと面倒くさく感じた。
ソマリは続ける。
「とりあえず、ありがとうねイット君!」
「何だ藪から棒に」
「シャルちゃんがウチのこと
何のことだか一瞬考えると思い出した。
シャルに襲われた時に俺とソマリが
「そう言えば、アイツにそんなことを尋問されたな。ソマリは大丈夫だったのか?」
「うん、大丈夫だったよ! 最初はシャルちゃん伝いにロイス君から疑われたけど、イット君とは好みの女の子の話をしたことだけ話したらすぐ納得してくれた!」
ああ……俺と同じ感じで言い逃れたのか。 それは良かった。
「イット君が誤魔化してくれたから疑いが晴れて良かったよ! ありがとうね!」
「いいや、これはお互い様だからな」
「そうだ! ウチもロイス君に言っておいたよ。シャルちゃんが嘘泣きしているように見えたからそれも踏まえてねって!」
そうか……お互い協力関係の中だが庇ってくれたのは素直にうれしい。
ありがとうを返そうとした時、ソマリはふんぞり返りながら鼻高らかに話す。
「一番納得してくれたのはイット君は巨乳が大好きだから、スレンダーなシャルちゃんを襲うことは絶対ありえないって言ったんだ。そしたら、ロイス君も気づいたみたいで本当にすぐ納得してくれたんだ!」
「おおおおおい! お前何言ってんだ!! 本当にそれを言ったのか!? それで本当にロイスが納得したのか!?」
「フフーン、ウチは嘘言わないよ。今回の件はウチのファインプレイが光ったね!」
胸を張り誇らしげなソマリ。
こうして女子達に嫌われているのも、もしかしたら俺が巨乳好きだとかソマリが言いふらしたからじゃないだろうな。
それだったら、コハルに気持ち悪がられて嫌われるのも納得出来るぞ。彼女の空気に流されぬように話題を変える。
「それで、こんな草陰に呼び込んで何のようだ?」
「え? あー……ちょっとめんどくさいことになっちゃってさ、それを伝える為にね」
「めんどくさいこと?
そう聞くと彼女は首を横に振った。
「違うんだよ。最近コハルちゃんがウチと距離を置いてくるというか……」
「距離を置く?」
ソマリとコハルは仲が良かった気がするのだが……
というか、ソマリもコハルの異変に気づいているのか。
「実は俺に対しても、コハルのヤツおかしくてな」
「どんな風に?」
「よくわからないけど機嫌が悪くて……何か、ソマリと仲良くしてれば良いだろとか言っていたんだ」
「……」
「もしかしたら、俺とソマリが
「ウチ、理由わかったかも」
割り込み気味で、納得する笑顔のソマリ。
何がだ? と、聞こうとした瞬間だった。
「何話してるのイット……」
突然、真後ろから声をかけられ、振り向くと噂をすればコハルだった。
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