第31話時空間の中で

 きゅううっと頭を絞めつける感覚がした。

 赤子が、螺旋を描きながら母の産道を通って、産まれ出でてくるように。

 ツバサとロージリールの体は、原因不明の圧迫感に襲われていた。

 ――これが、時空を超えるということ。

 初めて精霊のほこらを開いた時とは、別の感覚がした。

 気が遠くなりそうな苦しみの中で、チビのリューの泣き声がした。

(ああ、かわいそうに。この子は生まれたばかりなのに)

 辛抱できないのも、仕方がない。

 そう思って差し伸べた手に、一瞬だけちっちゃなぬくもりが伝わり、またすぐ離れていった……。

 チビのリューは、ツバサと一緒に時空を超えることができなかった。

 それがわかったのは、ツバサ自身がロージリールとはぐれたことに気がついた時だった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る