第25話真の力

「やい、イグニス! エネルギー砲ってなんだ! ちっともわからん!」

 カケルが、文句を言った。

「防御があれだけできて、どうして攻撃技が出ないのか……少し見てみましょう。目をつぶって――」

 カケルは嫌がって、眼前に差し出されたイグニスの手から逃れた。

 イグニスは、やれやれと頭をふって、

「……教える順番を間違えたのでしょうか」

「このままじゃ、竜王を倒せない。父上をお助けできない!」

 ルシフィンダを失い、傷心の彼(フェイルウォン)。

 二人の赤ん坊を前に、悲壮な決意をみせるその父の顔を思い出す。

「しかたがない。この剣の真の力を見せます。驚かないでくださいよ――」

 イグニスは演舞のように、剣を一心不乱に振り、大地にその切っ先を突き立てた。

「アースクエイク」

 呪文と共に、大地がひき裂かれ、砕けた。

 さらに、その剣を天にかざすと、そこに亀裂が走った。

「なんだと? 天空が裂けるとは!」

「本来、の……使い方です。あなたにもできます。これで……竜王を」

 しばらくその威力に茫然としていたカケルだったが、やがて両の拳を握って破顔した。

「これで竜王を倒せるんだな!」

「しかし、そう何度も使えるわけではないのです。くれぐれも、気をつけて」

 カケルはうなずく。

「まかせとけ!」

 もう幾度目かになるカケルのセリフだった。

 イグニスは、膝をついた。

 神力の使い過ぎだった。

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