第22話再び過去の精霊界

 下草の上を歩きながら、ツバサは前を行くフェイルウォンの背中を見つめる。

 すぐそのあとを、ルシフィンダがひらひらと蝶の羽で飛んで過ぎた。

「!」

 ツバサは気がついた。

「母上、衣の中が……!」

 必死で追いかけ、彼女のスカートを抑えるツバサ。

「えー? ここは精霊界よ? そんなもの気にかける人なんていないわ。それに、どうして私が母上なのよ」

 ツバサが、応えられないでいると、エイルナリアはふと、ツバサの顔に見入る。

「まさか……」

 頭から、疑念を振り捨てるエイルナリア。

 四人は、しばらくパーティを組み、一緒に竜王のもとまで同道することにした。

 希望の光は、ロージリールの祝福の笛。

 これが、竜王に通用すれば、ツバサたちのもといた世界へは進出してこないはず。

 この精霊界で、守り人の番をしていてくれるはず。

 ところが……。

 竜王の住まう断崖絶壁にのぼるには、ふもとから迷宮を通らねばならない。

「迷宮とは、中に迷い込んだものを閉じ込めてしまう、危険な場所なのでは?」

 ツバサが脅えると、すぐさまロージリールが笛を吹く。

「ん、こっちだ」

「まさか」

「俺様に限ってまさかはないんだ」

 自信満々に先頭を切って歩くロージリール。

 ついて行きながら、ひそひそとルシフィンダに話しかけるツバサ。

「たのもしいですわ」

「ローズだからね」

 重ねてルシフィンダが胸を張った、と同時に――。

「きゃあ、いやっ」

 ルシフィンダが、悲鳴をあげてフェイルウォンの腕にしがみつく。

 迷宮の縦穴から、毒蛇が牙を剥いて襲いかかってきたのだ。

 ここらはすでに、迷宮に入りこんで長い。

 だが、中に潜んでいたらしいモンスターなどは、星辰のエイルナリアのもつ光のオーラに臆しているし、ロージリールが階層を昇るごとに祝福の笛を鳴らすので、それでも少ない方なのだ。

 岩の階段、壁、だが路面はきれいにならされている。

 竜王は、すぐそこ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る