第7話カケルの覚悟
カケルは、城で一番高い塔に登り、へたっていた見張りの兵士を押しのけて、遠眼鏡を通して城下を見る。と、地割れが起こっているではないか。
陽のさす丘から、もう一つの太陽が見えかけていた。
「なんだ? 天変地異か?」
いよいよおかしい、とレンズを合わせてみれば、太陽とは違うやわらかな光線を見ることができた。
それは、人のような腕と肩と足とを持ち、それらの背後に金色の翼を広げたような光のヴェールをまとい、その正体は見抜けなかった。
「くそ! なぜ今なんだ」
それは、カケルとツバサのしでかした事実をいさめに来たかのようだった。
しかし、それは新興宗教で説かれる最後の審判の天使像にも当てはまり、のちのち語り継がれた。
彼らが、土着の信仰を捨て教会に与する、手助けとなってしまったのである。
カケルは、素早くとってかえし、父王フェイルウォンに報告した。
「なんと。竜王か」
「父上、あれが?」
「そうであろう。違うと思いたいが」
「ならば、一度は父上が退けたのでしょう。ここはまた父上のお力で」
いや、とフェイルウォンはカケルを制した。
「あれは物語だ」
「そんな!」
やむかたなし、と目を閉ざすフェイルウォンに、カケルは蒼ざめ、ぶるぶると肩を震わせた。
「あんなものが、この地上にあらわれるなんて」
ぎゅうっと眉根をよせ、蒼くなった唇を噛み、カケルは呼吸を整えた。
「ならば、こたびは俺が参ります」
決死の瞳でカケルは言った。
父王フェイルウォンは、わずか身じろぎし、上下する胸を落ち着けた。
今のカケルに、竜王が倒せるやいなや。
その腕で、足で。
わからないまま、フェイルウォンは息をついた。
「ならば、そなたに神界で鍛えられた聖剣を授けよう」
せめてもの親心、とばかり持ってこさせた一振りの剣はきらきらとした艶めかしい刀身に、ふるえがくるような霊気をまとっていた。
「これが、竜を倒すといわれた……」
「おまえのものだ。おまえが名づけるがいい」
そう言われて、カケルが手にすれば、なぜだかしっくりとなじむ。
カケルは勇気づけられ、心で吠えるような雄叫びをあげた。
カケルは、戦士の目をしてすっくと立ちあがり、父王フェイルウォンに告げた。
「俺は、あなたに勝利だけ誓います」
父王フェイルウォンは、確かにうなずき、特別にあつらえさせた鞘を持ってこさせた。
「ありがとうございます」
カケルが、神妙に受け取ってベルトに通すと、どこから見ても立派な騎士姿だった。
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