第81話:逃亡戦線05
「ごちゃごちゃ言ってねえで、さっさとかかってこいよ」
「なら、さっさと降りてきなよ。私たち、地面を這いずり回ることしか出来ないんだからさ」
「ふん、ならお望み通り降りてきてやる。どうせ素材もないテメエらだ。しょうもない抗いで最期になるんだろうな」
「ポケットに入っていた七味唐辛子を目玉にぶち込むことなら出来ますよ?」
「ふん、遅いな。テメエの弾丸はクソみてえに正確だが、覚醒した俺には全てを避ける自信がある」
パシュッ……
シュッ……
「……ほらな。奇襲も簡単に避けられる」
「……ちっ」
首を最小限に動かしてルーミルの放つ弾丸を避けるハナ。
はったりだと思っていたけど、本当にポケットの中に七味唐辛子を仕込んでいたとは。
妙に女子力が高いのかどうか分からない評価って感じがする。
「仕返しに右目を潰しておこうか?」
「結構。あなたの爪はバイキンだらけで感染症が怖いですから」
「……っち」
ひゅ……!!!!
ハナはルーミルの言葉に耳を貸すことなく見えない速度で私達のもとへと接近してくる。
ブィィィィン……!!!! と、ハナが通ったルートから遅れて轟音が鳴り響く光景を見るに、もはや花火の訪れのごとく素早さが人外の悪魔的能力を超えているのだろう。
「ルーミル。私と一緒に逃げるよっ! 捕まって!」
「馬鹿かっ……もう遅い!」
ハナは私達の目の前で急停止すると同時に、両手の爪を大きく広げて私達のもとへと振りかざしてくる。
「あぁ、いいタイミング。私達、ちょうど逃げたかったんだよね」
「だからテメエらはどこにも逃げられねえって言ってんだろ!!!!!」
「そりゃあ分かってる。でも逃げるんだ」
ハナが私に標的を向け、顔が目の前一メートルのところまで接近する。
半分が漆黒に染まり上がった、でもちょっと前まで毎日見ていたハナの顔。
また私を殺そうと近づいてくる。
また理由もわからずに。
また痛い思いをさせようとしてくる。
……久々の再開だっていうのに、なんか寂しい思いしか残らないって不思議。
ぐす……
「ひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!!」
でも、今はハナと和解をすることを目的としているわけではない。
自分の弱い感情に負けて行動を起こせないなんて馬鹿げている。
「空圧の実……四十六粒全てを使って最大火力で超循環……」
「無~~~~~~~~理だってなっぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「また会おうね、ハナ。今は私達、メルボルンへと戻っちゃうけど」
「やってみろよ! ハッタリかましても一切躊躇しないでゼロ距離から切り刻む!!!!!」
シュッ……
ハナが私の心臓の付近へと爪を近づけた瞬間……
「……そう、空圧の実でサヨナラをするのは、ハナよ」
「……っなにっ!!!?」
だって、空圧の実で遠くに行くのは、ハナの方なんだから。
しゅぶぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「うぉぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ぶぅぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
……
……
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