第61話:夢想戦・終演
悪魔は敵で、そして人が殺す。
食物連鎖の常識的概念が、それを許すと言っている。
「ねぇ、二人はどうすれば良いと思う?」
毒と火にまみれ瀕死状態の二人に問いかける。
助けもせず非情な行為ではあるが、これは夢の中だ。
大目に見てほし……って、あれ?
「…………」
「…………」
二人の姿がない。
というか……二人の居た場所には。
「……なんだ、これ」
泥のような、土のような、そんな塊が燃え上がりながら腐敗している。
二人は元々、土の妖精だった?
……いや、そんなことはない。
「お前なら、概ね把握しているんじゃないか?」
「……えっ?」
後ろから声がしたときにはもう遅かった。
ドガァァァァァ!!!!
「うげぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………………!!!!!!」
背骨が折れる音がした。
コキッ……という、予想よりも可愛らしい音だ。
「……どうして私は空を飛んでいるのかな?」
二人は既に倒したつもりだったのに、なぜだか背中から強い打撃を受けている。
「変わり木、というやつだ。説明は聞かなくても分かるだろう?」
片方の金髪が私の背中越しに問いかけてくる。
「ふっ……金髪が無様に枯れ木になる効果のことかな? あの顔は無様だったよ」
「黙れ……」
ドゴッ……!!
「ウグゥゥゥゥゥゥ…………!!!!」
今度は顎をもろに蹴られた。
同時に、目の前が白黒のチカチカ表示へと変化して、視界が完全に塞がれてしまう。
「ただのキツイ脳震盪だ。死ねばその苦痛なんて軽いもんさ」
「かっ……勝手に、私を……殺そ……ぐっ……」
ダメだ……思考と呂律が上手に回らないせいで、上手く切り返しが出来ない。
「そろそろ締めよう」
「ああ……雑魚を相手にする暇はない」
「ウグッ……ウゥゥゥゥ……」
何百メートルと飛ばされたのか分からない。
しかし、未だ身体は空高く浮かび上がっている感覚が私にはある。
「うぅぅ……せ、せめて……安全な、い、位置に……」
確か、カバンの中に旅路花が残って……
見えない中で、必死に手探りで素材を探している最中。
「空中回転……」
「空中逆回転……」
「……!?」
それは、私が昼間見たときの、二人の熱気あふれるクソ暑苦しい叫び声。
「サンドカッター!!!!!!」
「ロールスライダー!!!!!!」
「あああああああああああああああ…………!!!!!!!」
昼間見た二人の必殺技が、私の夢の中で再現される。
身体がバラバラに壊れていく感覚がした。
それはそうだ。二人の斬撃がクロスで私の腹を貫通したのだから、身体が二つに分かれてしまうのは当然だ。
上半身と下半身、まるで戦車に踏み潰されたように激痛が走って苦しい。
ハナの時のような暗殺に比べると、余分に体をえぐられ過剰に痛い。
「あっ……あ……」
苦しいという言葉の代わりに、枯れるような嗚咽しか出せない。
私はもう、二人に負けたのだ。
身体の機能が完全に損なわれてしまったのだから、当然といったら当然か。
肺がなければ呼吸も出来ない。
物理的に見て、当然の結果と言えよう。
……
……
世界が崩壊していく。
夢の想像神である私が死んでしまったのだから。
広がる草原はブラックホールに飲まれ、レボアロボア兄弟は弾けて消える。
悔しいなぁ……
消えゆく世界の中で、私はそう感じた。
私も少しは強くなっているつもりだったのに、まさかものの数秒で死に至らしめられる攻撃を喰らってしまうとは。
ハナに勝たなきゃいけないというのに、ハナに数秒で負けたというレボアロボア兄弟に私が数秒で負けてしまう。
食物連鎖の完全なるカースト。
ライオンを相手にしようとするミジンコのような存在。
「嫌だ……嫌だなぁ……」
夢の世界は確実に滅びを迎え、残りの時間を悪夢へと引き落とそうとしてくる。
……でも、そんなのは嫌だ。
悪夢が嫌というわけではない。
負けたままで終わってしまうという敗北感に浸り続けるのが本当に嫌だ。
夢を終わらせたくない。
せめてあいつらに一撃でも痛い攻撃を喰らわせたい。
強くなりたい……
もっと、強く……
…………
…………
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます