第3章-悪魔殺しの超循環士リヌリラ-
第22話:決意を終えた酔いの朝
【Tips008】ルーミルとハナの関係
ルーミルがハナと対立するようになったのは五年前。
人をなぶり殺そうとする状況に出くわしたルーミルは憎しみを持ってハナに戦いを挑んだ。
ハナが致命傷になって逃走する場合もあれば、ルーミルがやられる場合もある。
数ヶ月に一度の頻度で戦いは始まり、二人が戦うと、その周りには大きな爪痕が残る。
どちらもあと一歩で倒れつという直前に何度も出くわしつつも、人側、悪魔側、互いに強力な戦力を失わぬようにと、倒れたらすぐに救助、逃亡をすることで、身柄を確保されないように細心の注意を払っている。
結果、五年という年月が流れに流れ、二人の間には深い溝が生まれていった。
強い殺意と憎しみによって。
……
……
翌朝。
昨日の疲労や動揺が嘘のようにすっきりと無くなっていて、体は想像以上に調子がいい。
「あら、リヌリラおはよう。随分と早起きなのね」
「台所で料理しているルーミルに言われる言葉じゃないと思うけど」
時刻は午前六時を指している。
部類で言うなら、早いに該当する。
「何を作っているの?」
「スムージーとパンケーキ。昨日は高カロリーなものばかり食べてしまいましたから、今日は朝からヘルシー志向でいこうかと」
「私、野菜はそこまで好きじゃなんだけどなー」
「女性たるもの、健康で美しくあるべきなんです。フルーツも混ぜてあるから、美味しく出来ていますよ」
ミキサーに入れられたグリーンスムージーを見て、私は一瞬ギョッとする。
ハナにも一度作ってみようかと言われたことがあるが、全力で断ったことがあるのは懐かしい思い出だ。
「リヌリラ。あなた、昨日はお風呂も歯磨きもしていないでしょう? 食事の前に体をきれいにしたほうがいいですよ」
「えー、どうせすぐに汚れるんだから、気にしなくてもいいのに」
「汚れたら何度でも洗う。女性なんだから、きれいを求めようとする心は忘れないでね」
「……はーい」
どうやら私の言い訳はあまり聞いてもらえぬようだ。
確かに昨日私が夜に目覚めたときもルーミルの髪はサラサラで、訓練のときに付いた汚れも全くと言っていいほどきれいに無くなっていた。
きれいに努力が必要なので面倒だけど、ルーミルのようになれるなら、ちょっとは真似してもいいかも。
私は浴室へと向かい、体を洗うことを決意する。
ちなみに私の入浴シーンなんぞに興味を持つ人はいないだろうから、このシーンは割愛とさせていただく。
どうしても気になる人は、ルーミルに交渉してみてはいかがだろうか。
「ひっく……」
ーカットー
八分後――
「ふぃ~、すっきりすっきり」
「リヌリラ、ちょっとお風呂早くないですか? 十分も経っていないじゃないですか」
「一応体はしっかり洗ったよ」
「踵の部分や脇の下、それにうなじとか、汚れを見逃してしまう部分はたくさんあります。そんなんじゃ、お風呂に入ったことにはならないれすよ」
「そうかなぁ……一応頑張ってゴシゴシしたつもりだけど」
「湯船に浸からないと、体に染み込んだ深い垢を落とすことは出来ません。そういうのを怠ると、体臭が臭いと言われるようになるんですよ」
「じゃあ、そんなに言うならルーミルが洗ってよ。私の汚れをゴシゴシーって」
冗談でいったつもりだったが。
「え、良いんですか? リヌリラを好きにしていいんですか? 少々荒い手段になりますが大丈夫ですか?」
「……へっ? ちょ、なに、その強烈設定前提な確認方法。私そこまで言ってないし……」
ぐいっと体を寄せてくるルーミルから逃れるように一歩下がるが、すぐに壁ドンで抑えられる。
「さらに、雑に洗った髪の毛をきれいにセットアップして、トリートメントとかしちゃってもいい感じですか?」
「あれ、私髪の毛の話をしてたっけ?」
「さらにさらに、お洋服も可愛いものを選びましょうか。戦場でも破れにくい専用の洋服をたくさん持っているんですよ」
「あれ、私お風呂の外の話をしてたっけ?」
ルーミルは私の方をがっしりと掴みながら。
「はぁ…はぁ……さあて、お姉ちゃんと一緒に色んな所をゴシゴシして、その後可愛いお洋服着ましょうね~」
「ちょ……お姉ちゃんって何!? 色んなところゴシゴシってなんか怖い。ねえ、ちょっと助けて、軽くでいいから、ねえ、ねえ……ね……」
ーカットー
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