第30話 対峙
人垣を避けながら疾走する一つの影。
冥は現在、武蔵学園を突然に襲った魔法を見て、憎悪を剥き出しに、身体強化を施した体である場所に向かって走っていた。
あの上級魔法、
そして、篠原遊星という名前も本名ではないということは調べていて分かった。ただの偽名であり、本当の名前は世間に知られていないと。
犯罪組織【
その中で闇の上級魔法、第六位階の
闇の特性を応用して、生物の生命力を吸収し、その死体で異形の生き物を創り上げる禁忌指定されている魔法。
大胆な事件を数多く起こしているが、今までは捕まってこなかった。だが、そんな
有名な犯罪組織の人間が捕らえられたとあって、当時はかなりのニュースになったのを冥はぼんやりとだが、覚えていた。ただ、それのせいで自分の家族が殺されたのも忘れない。
けれど納得できたというわけでもなかった。
理不尽をひたすらに怨んだ。運命というものをひたすらに嘆いた。どうして私なんだ!と声高に天に向かって何度も叫んだ。
詳しく調べていた組織だからこそ、冥は先ほど
確かに
だが、冥の脳はそれを絶対にないと断じる。
走りながら、思い出すのは今朝のニュース。昨日午後に襲撃された志摩拘置所で凶悪犯罪組織に所属する人物が脱走したという事件。
そのニュースを見た時は、他人事のように思っていた。しかし、先ほど起きた武蔵学園への襲撃。そこに使われた魔法。自分の家族が殺された経緯。
あの刑事は何と言っていたか。そう、捕まった仲間の居場所を探るためにあの男は警察官に成りすましていたのではないか?
今朝のニュースは何と言っていたか。そう、凶悪犯罪組織に所属する人物が脱走したと言っていたのではないか?
まるでパズルのピースが綺麗に嵌るように冥の頭の中で状況がかちっと合わさってしまった。
すると、すべてがどうでもよくなるほど体が熱を発し、心の底から暗い感情が噴き出す。頭の中でぴったりとくっ付くこの偶然にしてはできすぎな事態に冥は考えるよりも先に身体が、心が、動き出していたのだ。
走る冥が向かう先は、
さらに、通常
襲われていた場所は闘技場の付近。そこから二キロ圏内で
闘技所から二キロ付近で人気のない拓けた場所はかなり限られている。冥の頭の中で該当する場所は一つしか思い浮かばなかった。
走って数分。
冥が辿り着いた場所は武蔵学園から少し離れた場所にある木がたくさん生い茂った森林区域。
辿り着いた瞬間、冥は自身の勘が当たっていたことを知る。眼前に見える森の奥から自身と同じ属性の魔法を使った痕跡を感知できたからだ。
まだ少し離れているが、この先に自身の仇、もしくはそれを知っている者がいるかもしれないと思うと冥は体が震えだすのを抑えられなかった。怯えからではない。歓喜からだ。
そのまま冥は何のためらいもなく、森に足を踏み入れるのだった。
♦
そこは森林区域の中にある小さな拓けた広場。
冥の推測通り、
第六位階『
「ふふ……君達を見るのも本当に久しぶりだね。ああ、癒されるなぁ~。あんなこわいとこに長いこといたから、本当に君達と再会できて僕は嬉しいよ!」
「あ゛あ゛……」
「そうかそうか!君達も僕に再会できて嬉しいんだね!そう言ってくれると幸せだよ!」
「あ゛あ゛……」
その光景を見ている者がいれば、あまりの不気味さにすぐさま逃げること請け合いだ。傍から見れば、ゾンビのような腐臭を放つ生物に笑顔を見せて話しているのだから、狂気を感じずにはいられないだろう。
「……あれ?」
だが、
「……なんで?」
繋がりが途切れたということは攻撃を受けて消されたのだろう。ただ、
今、自身が武蔵学園に召喚している
「どうして、何も起きずに繋がりが切れたんだろう……?」
今自身とのリンクが切れた人形達はなぜか爆発しなかった。
疑問に思って
だから、自分で考えようと、深く思考に入る……それより先に――
「!?」
――突如強烈な殺気を纏って、自分に襲い掛かってきた黒い影からの攻撃を躱すため、
ドゴンッ!
強烈な斬撃の一撃は空を切るようにして、地面に衝突すると、そんなド派手な音を響かせて、地を砕く。
「……いきなり襲い掛かってくるなんて、ほんとこわいなぁ。君は一体誰なんだ?」
着地して目線を上げた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます