第72話 合流
俺と中西は遊園地目がけて走っていたが、途中から警察アンドロイドによって道が封鎖されていた。警戒並みの厳戒態勢が敷かれているようだった。
「くそっ! これじゃぁ中に入れねぇ」
俺が唸っていると、再び遊園地内で大きな爆発が起こった。熱風がこっちまで吹いてくるとんでもないものだった。ガソリンのような臭いが辺りに充満していて、かなり危険な状況になっていた。
「森部、一旦あのデパートに行ってみるか!」
中西は近くにあったアンドロイド・ディベロップメント社の子会社が運営しているモールを指差した。不自然な事に、近くのモールは通常営業していた。
「あのデパートの屋上からだったら遊園地の様子が見えるかもしれない」
「なるほど! その手があったか」
俺の中西は走ってきた勢いそのままでモールへと入っていく事にした。
中は思ったよりも暗く、人は誰一人として居なかった。最も、隣で爆発事故があっている中でお客さんなんて居ないだろう。
「変だな。従業員が誰もいない。それなのに通常営業中ってどういう事だ?」
普通はアンドロイドの従業員がいてもおかしくはない。生身の人間を危険と判断し避難させてもアンドロイドが居るはずだ。
「確かにおかしいな。ここの運営会社はどこだ?」
中西が俺に訊いた。このモールは三苫前原市の中では最大のモールだ。運営元はそれに超有名企業。勿論知っている。
「モール・スターってとこだ。親会社はアンドロイド・ディベロップメント社」
「なるほど……。親会社が超大手のアンドロイド製造会社なのに一台もアンドロイドが稼働していないってどういう事だ」
謎は余計に深まった。そしてお客さんが一人も居ないためか、俺たちが立ち止まると辺りは静寂に包まれた。
その時、遠くから足音が聞こえてきた。足音からして、二人ぐらいか。
「誰か近づいてくるぞ。──一応隠れるぞ」
中西は何かを感じたのか、俺の腕を引っ張り近くのテナントにあったマネキンの影に隠れた。段々と声がして、はっきりと聞き取れるまでになった。どうやら男女のようだ。
「これからどうするんですか。美沙子さん!」
「一旦、このモールを出ます!」
何と、走ってきていたのは美沙子さんと直人だったのだ。嬉しさと怒りと様々な感情が交錯する中、俺は前へと飛び出した。
「直人! 生きてたのか!」
目の前に突然飛び出してきた俺に驚きながらも直人はほっとした表情を浮かべながら俺の方を見て微笑んだ。
「何とかな……。正直、死ぬかと思ったよ」
「どんだけ心配したと思ってんだ! 探しに来てたんだよ」
「連絡出来なくて、申し訳ない……。美沙子さんに助けてもらって」
隣にいる美沙子さんを俺はじっと見つめた。美沙子さんはアンドロイドかもしれない。だが、リセットが行われている最中であるにも関わらず、美沙子さんは至って普通だった。
隣の中西もかなり怪訝な顔をしていた。
「どうしたんだ。そんな顔して」
直人は不安そうに言った。ここで、真実を伝えるべきなのか。心の中で色々な感情が渦巻いていた。中西は自分が言うべきではない、お前が言えと、目で伝えてきていた。
「実はな。直人、お前に話しておいた方がいい事があって。──悪く思わないで欲しいんだ」
「何だよ。森部……。森部らしく無いじゃないか、そんな畏まって」
「すまない……。あのな──」
その時だった。突然、遠くから人間ではないようなスピードで足音が迫ってきていた。
「見つけた! ブランクID!」
それは血の気が通ってない、真っ白な顔をした女だった。
「さっきの爆破の犯人か?」
俺は直人に訊いたが、直人は首を横に振った。
「違う……。あいつじゃない」
気が動転しているのか、直人は目を開いたまま動かなくなっていた。美沙子さんは俺たちに向けて叫んだ。
「逃げます! 危険です!」
一体何が起こっているのか、検討もつかなかったが、俺たちはひたすらに逃げる事になった。
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