第50話 社会変動
「今、社会は激動の時代を迎えようとしています。アンドロイドが人間世界へ進攻してきています。これをプラスと捉えて良いのでしょうか。──私はそうは思わないのです。アンドロイド・ディベロップメント株式会社を始め、今や日本の富裕層はアンドロイドを開発する関係者しかいない状況です」
「いやいや、それとこれとを繋げるのは些か単純すぎやしませんか。アンドロイド産業が大きな産業として栄え始めた頃には既に日本の産業体制自体が『死んでいた』ではありませんか。ブラック労働問題や、若者の強い働き方改革の影響でその当時の大きな会社は次々と倒産していったんです。その後、若者たちが立ち上げた新たな産業がアンドロイド産業であり、日本の舵取りを当時の若者たちが良い方向へと向けたと私は考えているのです」
アンドロイド専門家と反対派運動のトップが激論を交わすという、奇妙な特番が街のサイネージやお店のテレビでピックアップされ、流されていた。俺の会社も名前を挙げられ、反対派から激しい批判を受けていた。しかしながら、世の中はまだ平和だ。何故なら、こうやって昼食を買いに行っても周りから殴られたり、反対派から気づかれることがないからだ。
「時代は常に進歩を目指しています。人間の形をしたロボットの構想は古くから存在しています。SFのような世界だと昔の人たちは言うかもしれないでしょう。しかしながら、この世界の基盤はもはや、アンドロイドによって保たれていると言わざるを得ない事にお気づきになっていますか? 即ちそれは、反対運動がいかに無意味なものかを表しているんですよ」
全くその通りである。反対運動を行っている輩だって、アンドロイドが二十四時間体制で管理してくれているインフラを使っている。人が管理するには到底作業量が多いものを全てアンドロイドが担っているのだ。それにも関わらず、アンドロイドを社会から排除する運動をするなど、そんな愚かな事は無い。そう思いながら、無人コンビニを出た。
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