第58話 昔話

  舞台の上は暗く、ゴミの山のようなもの、

 その頂上に、椅子が置いてあり、ゴミの山

 から頭を出した街灯が辺りを照らす。

 

 椅子には黒い全身タイツの人物が座り、

 本を開いている。その人物が、本を読み

 あげる。

 

 むかーしむかし、あるところに、おじいさん

 と、おじいさんが住んでおりました。色々

 と複雑な事情がありました。

 

 おじいさんとおじいさんは、山へ芝刈りに

 行きました。芝刈りに行く途中の竹林で、

 二人のおじいさんは不思議な竹を見つけま

 した。

 

 その竹は、ふしと節の間が、金色に輝いて

 おりました。気になったおじいさんたちは、

 竹を切ってみました。

 

 すると、中から可愛い女の子が出てきました。

 おじいさんたちは、その女の子を連れて

 帰り、大事に育てることにしました。カグヤ

 姫、という名前も付けました。

 

 大きくなるにつれ、カグヤ姫はおじいさん

 たちに無理難題を言ってくるようになり

 ました。

 

 トリュフ、フォアグラ、キャビアを食べたい、

 から始まり、ブランドものの鞄がほしい、

 留学がしたい、メイド喫茶で働きたい、アイ

 ドルになりたい、家がほしい、ホストクラブ

 に通いたい、

 

 それらの願いを何とか二人で頑張って叶えて

 いきましたが、月に行きたい、と言われて

 少し困りました。

 

 二人のおじいさんは、不眠不休で頑張り、

 自らの質量の一部を後方に射出し、その

 反作用で進む装置をこしらえました。

 

 それに3人で乗って、月に到達し、また

 元の惑星へ帰ってきました。しかし、カグヤ

 姫は、そうじゃない、と言います。月に

 行きたいというのは、住みたいということ

 のようです。

 

 二人のおじいさんは頑張りました。静止

 衛星軌道から蜘蛛の糸をより集めた太い縄

 を垂らし、宇宙昇降装置を完成させたのです。

 

 これにより、反作用装置よりもより大量の

 物資を宇宙に運ぶことができるようになり

 ました。カグヤ姫はまだなのか早くしてと

 言っています。

 

 おじいさんたちは急ぎました。

 そこからまずは宇宙空間に都市を建設し、

 たくさんの人に移住してもらって都市機能

 のテストをします。

 

 宇宙空間での工業力を得たら、いよいよ月面

 に都市の建築を開始しました。完成した都市

 に、カグヤ姫を招きます。

 

 しかし、カグヤ姫は、すぐに火星に行きたい

 と言い出しました。ふとなぜ行きたいのかを

 聞くと、そこに天体があるから、と答えま

 した。

 

 ゆく川の流れは絶えずして、人の煩悩もその

 尽きるところを知らずといいます、カグヤ姫

 は、あの竹林をもう一度見ろと言います。

 

 二人のおじいさんが行ってみると、そこに、

 無数の黄金に輝くふしがありました。仕方が

 ないので切ってみると、無数のカグヤ族が

 這い出してきます。

 

 そして、それぞれが無理難題を吹きかけて

 きました。ものごとを実現する力とは

 あくまでも手段で、我らこそは存在の本質で

 ある、とのたまうのでした。

 

 おしまい。

 

 

  街灯のあかりが消え、別の街灯がつく。

 そのゴミの山にも椅子があり、全身タイツの

 人物が別の本を読み上げる。

 

 それは、遠い、とおーい未来のお話です。

 あるところに、おじいさんとおばあさんが

 暮らしていました。

 

 おじいさんとおばあさんが川へ洗濯にいくと、

 上流から、どんぶらこ、どんぶらこと、

 大きな妊婦が流れてきました。

 

 おじいさんとおばあさんは急いで妊婦を

 川から助け上げました。妊婦はやがて、

 元気な男の子を産みました。

 

 人から生まれたので、ヒト太郎と名付け、

 3人で大事に育てました。ヒト太郎は、

 大きくなると言いました。

 

 おじいさん、おばあさん、そしてお母さん、

 僕は、煩悩から解脱して宇宙の真理を

 悟るため、旅に出たい。

 

 おじいさんとおばあさんとお母さんは、

 何か育て方を間違えたのかと心配になり

 ましたが、それでもヒト太郎を応援する

 ことにしました。

 

 それぞれ得意のおはぎを作り、ヒト太郎

 に持たせます。高性能な移動住居も

 与えました。

 

 航行中に最初に接触してきたのは、

 犬という動物から進化したイヌ太郎でした。

 こんなおいしいおはぎを食べられるなら、

 ぜひ仲間になりたいと言います。

 

 イヌ太郎は、巨大な宇宙船に乗っていました。

 移動住居をマウントし、宇宙船で移動して

 いると、今度は鳥から進化したキジ太郎

 と出会いました。

 

 キジ太郎も、おはぎの作り方を習うために

 仲間になります。キジ太郎は、巨大な

 移動都市を持っていました。法律にも

 やたらと詳しいのです。

 

 移動都市を拠点に巨大宇宙船で活動を始めた

 3人は、次に猿から進化したサル太郎と

 出会いました。

 

 サル太郎は、伸縮する棒の使い手で、とても

 強く、ヒト太郎にもその技術を教えました。

 

 次に4人が出会ったのが、阿修羅族から

 進化したアシュラ姫でした。アシュラ姫は、

 ヒト太郎のおじいさんやおばあさんと同じで、

 顔が3つ、腕が六本ありました。

 

 アシュラ姫は、楽器を弾くのが得意で、皆の

 前で演奏してくれたり、楽器の弾き方を

 教えてくれたりしました。アシュラ姫は脳を

 3つ持つので、同時に3個の楽器が弾けるの

 です。

 

 昆虫から進化した仲間もたくさんできました。

 鎌の助、兜丸、蜻蛉姫などは、高い戦闘能力

 を有し、とくに装備なしで宇宙空間で活動も

 できました。

 

 サンマ彦は、非常に料理が得意で、世界の

 あらゆる食材であらゆる料理を作ってくれ

 ました。特に海鮮料理は絶品です。

 

 ナマコ姫は、もうすでにヒトの形をして

 いない知的生命体でしたが、ここには

 とても書けないような技を色々と披露して、

 太郎達を満足させてくれるのでした。

 

 アント兄妹が仲間に加わることで、小さな

 科学デバイスから巨大な工業設備まで、

 なんでも作ることが可能になりました。

 

 クラゲ太は宇宙の始まりや未来について

 詳しく語ってくれました。意識の本質や

 輪廻に関する質問にも答えてくれました。

 

 銀河系中心では、気の合う仲間が簡単に

 見つかります。これも、母がヒトだけの

 共同体から抜け出してくれたおかげです。

 

 ヒト太郎は、全ての煩悩を、実際に叶える

 ことで解決したのでした。

 

 おしまい。

 

 

  また別のゴミの山の街灯がともる。

 むかーし、むかし、あるところに……。

 

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