第18話 勇羅side
麗二と途中で別れて自宅へと帰宅した勇羅。リビングや周辺を歩き回り今の時間、家に誰も居ない事を確認すると、早速自分の部屋へと向かいパソコンを起動する。やはり例の学園掲示板が気になってしまって仕方がないのだ。
トップサイトから検索ワード『東皇寺学園 サンクチュアリ』と打ち込み検索すると、すぐにホームページのリンクが上がって来た。実際にホームページの中身を閲覧した雪彦は、未成年には見せられないモザイク全開のグロ画像と言っていたし、東皇寺生徒である響もサイトの全貌については、何だか言いづらそうにしている。
「……」
未知への好奇心と、その後何が起こるかへの不安から勇羅の喉が鳴る。トップページを数秒間眺めた後、意を決して東皇寺学園・聖域(サンクチュアリ)のホームページ入り口のリンクをクリックする。
「何だろう。見た所は普通のホームページ、だよね…?」
開いたホームページのメニューには、【掲示板】【画廊】【聖域】などの項目が表示されていて、勇羅はガラケーの携帯にありがちなホームページだと感じた。外に出る時はスマートフォンを使っているので、ガラケーサイトでのブラウザ表示はあまり見慣れない。まず【掲示板】をクリックし掲示板を覗いて見る事にする。一体どんな事が書き込まれてあるのか実に興味があった。
「……っ」
―…。
(6)×××× 15:33:29 ID:n1Vp
△△△△
××垂らしたバカ女○ね!○●のバカ女はさっさと○ねよ!!バカ女バカ女バカ女バカ女バカ女バカ女!!
ぶたぶたぶたぶたぶったぶったぁ~ん♪ブスがぁブスブスブスブスブスブぅ~~~ス!!
(23)×××× 15:57:15 ID:916a
▼▼▼▼
あーあwww×××の×××女の●●ちゃんはもうおちまいでちゅかぁ~~?
うぷぷぷぷぷwwwwww大草原大爆発でちゅでちゅ~~~~んwwwwwwぐぷぷぷぷぷぷwwww
(44)×××× 16:16:00 ID:uc4T
△▲△▽
■□■□の奴また例のブツキメて停学だってwww
今度こそ退学じゃねwあ~あいい子ちゃんぶってぶりぶり糞うぜぇ媚び媚びぶりっ子ちゃんさようならwww
(79)×××× 15:33:49 ID:M1VZ
▽△▽△
あの■■の眼鏡ブスあいつ噂の異能力使いなんじゃね?
うわっ恐え~恐え~wwwwなぁ~んちゃってぇ~wwwうっそぴょおぉ~~んwwwwww
テメーみてーなブス恐くなんかね~よブスブスブ~~~スwwwwww眼鏡なブスブスブスっぺちゃん☆
―…。
「う、嘘だ……。何だよこれ…こいつら狂ってる」
『聖域』の掲示板は当(まさ)に狂気だった。学園内の生徒同士による、実名名指しでの誹謗中傷の数々。異能力者への異常とも取れる差別や迫害発言。それらの書き込みは全て削除される事なく堂々と掲載されていて、もはや治安のちの文字すら見られない。これは人を人とも思わない、歪んだ人間だけが立ち入る事が許されるそんな狂った世界だった。
「……っ」
掲示板でこんな酷い有り様なら画像はどんな有り様なんだ…。勇羅は戦々恐々と【画像】のページをクリックする。
―…。
「ひ………うわあああああぁぁぁぁっ!!!」
甲高い絶叫と同時に思わず椅子からずり落ちそうになるのを、何とか両脚で踏んばって辛うじて堪える。雪彦が言っていた通りこれは見なければ良かった。だが後悔しても既に遅い。クリックした先の凄惨な画像の数々に勇羅は唖然とする。これを見て気分を悪くしなかったのが奇跡だ。
勇羅の目の前に映った画像には顔面血塗れの男子生徒。何らかの症状によって理不尽にまで肌が蒼白くなり、頬が骸骨の様に痩せこけた生徒。そしてあられもない姿の女子生徒など、見ているだけで吐き気が込み上げて来る画像ばかりだった。
今も呆然する勇羅を尻目に、突然ベッドに放置していた携帯からメールの着信音が鳴る。
「なっ。な、に……? 雪彦先輩?」
すぐに携帯を取り着信画面を確認すると、勇羅宛の端末に送られたメールは雪彦でも他の友人でもなく、全く知らない他人のアドレスだった。一瞬迷惑メールなのかと警戒したが、そのメールは通常の受信ボックスに入っていた為、開かない訳にはいかない。アドレス不明のメールを開いてみると、それは勇羅の予想を遥かに裏切る内容だった。
『To:聖域へようこそ
文:はじめまして…だね。宝條学園の一年生探偵部副部長篠崎勇羅君。君達の事は政府の委員会を通じて全て知っているよ。君の友達…うん、皇雪彦先輩に実咲万里先輩。彼らは少しやり過ぎてしまったね。彼らには聖域に刃向かったとして相応の罰を受けてもらう。
それから真宮瑠奈ちゃんに真宮琳ちゃん。あぁ、瑠奈ちゃんと琳ちゃん可愛いよね。この娘達を幸せにできるんだ、って彼らも凄くはしゃいでるよ。それから警察に通報しても無駄だよ? 全ての事柄は僕達の聖域の思うままに動くのだから…ね。
by.聖域の支配者』
「何で………俺達の名前知ってんだよ」
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