コネクトシステム(修正前版)加筆修正版アップ作業中です

星浦 翼

プロローグ

プロローグa


 都市部で、澄んだ空には無数の星が輝いていた。


 どうして星が見えるのかと街なみを見渡してみれば、その都市が完全に機能を停止していることが分かる。街灯や建物から漏れる光は一切ない。電車や車、人々の喧騒どころか、野良犬の鳴き声もない。


 そんな都市の高層ビルの屋上に、そいつはいた。


 触覚の生えた逆三角形の頭に、細長い胴体。伸びる二本の前足は鎌状になっており、まるでボクサーのファイティングポーズのように胸の前で折りたたんでいる。外殻は無機質な深緑色の金属に覆われており、頭をヒョコヒョコと巡らせて周りの様子を窺っていた。

 

 その体長は20メートルほどで、ビルの屋上を四本の後ろ足で抱え込むようにして重心を支えていた。無機質な外殻とその巨体を除けば、そいつは生物のようにも見える。


「あれのことはカマキリって呼ぶから」


 ウサギの操縦席に、クモからの通信が入る。


「了解」


 応答したのはウサギの隣にいるヒメだけだった。ツバサからの応答はないが、意義なしという意味だろう。


 ウサギもツバサに倣って応えるのはやめた。


 通信傍受を仕掛けるような機獣には見えないが、警戒するに越したことはない。


「あれだけ堂々とされると、隠れてるこっちが馬鹿みたいだな」


「試しに狙撃する?」


「いや、昆虫型は粒子装甲型が多いだろ」


 クモの提案を、ヒメは却下した。


「クモのレーザーは弾かれるだろうし、下手に隠れられても面倒。囮をやるのは俺とウサギだし、計画通りに誘い出して片付ける」


「了解。誘導よろしく」


 クモとヒメの通信が終わる。


 ウサギはツバサから送られてくる索敵データを自機のデータと見合わせる。


 熱量や光量、赤外線や電波、音波反応もカマキリの一箇所からしか検出できない。


 カマキリまでの距離は約5キロメートル。


 あの目立つ場所で私たちを待ち伏せしているとは考えづらい。


 野生の機獣は行動パターンも野生生物と似通うから、その行動を理詰めで判断することはできなかった。


 しかし、それにしてもカマキリは無防備すぎる気がした。


 索敵を知らない馬鹿なのか、自らに自信がある馬鹿なのか。


「ウサギ、準備はいいか?」


 ウサギはモニター越しにヒメの操縦する機獣――様々な動物を模したロボット兵器を見る。


 ヒメの乗る機獣は、身長10メートルほどの二足歩行の人型だ。


 小脇には小銃を抱え、背中には折りたたみ式のレーザー兵器や接近戦用の溶断サーベルを積んでいる。


 装備による対応力の高さが人型の強みだろう。


 それに対して、ウサギの操縦する機獣はヒメの人型よりも一回りほど大きく、ウサギに似ている。


 ウサギの機獣の長所は、耳型の巨大レーダーによる索敵と、後ろ足での跳躍。


 要するに、ウサギの仕事は走り回る事だ。


「乗って」


 ウサギは機獣の頭部を下げ、ヒメを背中に跨らせる。


 走っている間に振り落とさないように、ヒメの機獣の脚部とウサギの胸部を連結させた。


 ウサギは走り出し、後ろ足に搭載された第一ジェットエンジンを点火する。


 地面を蹴ると共に、暴力的な加速で跳躍圏内へと侵入した。


 そんなウサギとヒメに気付いたカマキリが背中の羽を大きく広げ、力を誇示するかのように雄叫びを上げる。


 電子音のような雄叫びは軽い通信妨害を起こしたが無視。


 ウサギは加速を殺さぬように第二エンジンを点火し、飛んだ。


 ビルの屋上まで届く大跳躍によって、ウサギ達はカマキリへと急接近する。大気が揺れるほどの急加速にカマキリが驚くが、もう遅い。カマキリの真横を通り過ぎるのと同時に、ヒメが構えていた小銃を発砲した。


 瞬間、カマキリは両腕の鎌で防御する姿勢を取ったが、ヒメの小銃から放たれた弾丸はカマキリに着弾する前に破裂した。弾丸は緑色に光る液体となり、カマキリの体にべっとりと付着する。


 ヒメの初撃は、特製のペイント弾だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます